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太陽を夢みる

太陽の匂いって、何故あんなに記憶に残るのでしょう。

昨日は干した毛布にくるまり、寝たのです。
あの、嗅ぐだけで心が暖かくなる匂い。
草や土のと同じ、何故か自然だと分かる匂い。

毛布の柔らかい感触と匂いに包まれて、寝たのが良かったのでしょうか。
夢で、太陽の匂いがする人物に会いました。

夢の中なのに目を覚ました私の隣に、その人はいました。

子供くらいの大きさで、顔は中性的。
声だけ大人であったと覚えているのですが、性別は判別出来ませんでした。

そんな不思議な子が、小さな体をぎゅっと丸めて寝ているのです。
見つめていると、その人が目を覚ましました。そして、私の訝しげな視線に気づき、こちらを向いて一言

「あなたがあまりにも辛そうだったから」

と言ったのです。
その表情は笑顔でしたが、心から私のことを心配してくれていることが伺えました。

その顔と言葉に、その人は昔から知っている人であるように思えて来ました。
そして確かに、目を覚ます前に見ていた夢は辛くて寂しいと感じる夢であったことを思い出しました。

いつから、なぜ、どうやって私の寝姿を見ていたのか。
そんな疑問は、その人の優しい言葉の前では微塵も出てきませんでした。

私はただ、その人の目を見て、察してくれたことや共感してくれることに嬉しくなったのです。
ずっと誰かに言ってほしい言葉だったから。

感情ばかり溢れ、言葉が出て来なくなったため、「ありがとう」と一言伝えるので精一杯でした。

その後、どうやって夢が終わったのか覚えてはいません。
ただ、その人は私の言葉を聞いて貰えるよう表情を変えず、ただじっと同じように見つめ返してきたと記憶しております。

一体、誰だったのかは全く分かりません。

ただ、私のことを当たり前のように心配してくれて、私もそれを自然と受け入れた。

これはもしかしたら、毛布がもたらした太陽の化身?なのかもしれません。

本当に目が覚めた時、あの人の髪から香った太陽の匂いだけがずっと頭から離れませんでした。
そしてその匂いを思い出す度、心が優しい気持ちになりました。

もしかしたら、また布団を干した夜に会えるかも知れません。

その時は心配した顔ではなく、嬉しい顔を見られるといいな。


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