実体験⑧理学療法士との出会い

「今日から担当します。よろしくお願いします」

爽やかな青年がベッドの脇に立って挨拶した。

理学療法士らしい。

ICUで目が覚めて間もないのに、まだ口から人工呼吸器を入れているのに歩くリハビリをするそうだ。

初日は、ベッドに寝たまま、足を軽くマッサージしてくれた。
幸い麻痺もなく足も自由に動く。
ただ、人工呼吸器を口からくわえたまま、沢山の点滴をつけたまま、歩く練習??

翌日は私1人に4人がかりで歩く練習が始まった。
理学療法士2人、簡易人工呼吸器を管理する臨床検査士、点滴を管理する看護師。

ベッドから起き上がる。
血圧測定。
異常なし。
ベッドから車椅子に移乗。
血圧測定。
異常なし。

車椅子に乗った私に4人が付き添い、ICUを一周した。
他の患者さんを見る余裕なく、ひたすら真っ直ぐ前を見て、人工呼吸器が少しでもずれないように口にしっかりくわえていた。

数人の看護師さんが私を見て、「あ、〇〇さん」と、起き上がっている私にびっくりした様子。

1人の看護師さんが、とても素敵な笑顔でゆっくり近づいてきた。
「大丈夫ですよ。安心してください。1人じゃありませんよ」
そう言って、私の頭を優しく撫でてくれた。

ベッドが空いているスペースに車椅子を止めて、みんなで窓から外を見た。

何日ぶりだろう、、、
空を見たのは、、、、

彼らも空を眺めたのは久しぶりのようだった。

あの日の空は忘れない、、、

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