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四神京詞華集~shishinkyo・anthologie~

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2024年3月の記事一覧

四神京詞華集/シンプルストーリー (12)

四神京詞華集/シンプルストーリー (12)

【Search】

○尊星宮(夜)
さて毎度クッドいト書きから入るが当然話数稼ぎと思って貰って構わない。
皆様も忙しくてこんな戯言に付き合ってられないだろうし、私もそれなりに忙しいのでウインウインだな。
こちら北極星の下、枯野に鎮座する尊星宮。
古めかしいがいにしえの趣には遠く及ばない、おそらく四神京遷都と同時期に建立されたのであろう小さな社殿。
拝殿と本殿を幣殿で繋ぐ、まあどこの市町村にもあるた

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四神京詞華集/シンプルストーリー (11)

四神京詞華集/シンプルストーリー (11)

【夢物語】

ナミダ「遣天竺使……」
菜菜乎「そう」
ナミダ「……」
菜菜乎「……なによ」
ナミダ「す、凄いじゃないですか~っ!」
菜菜乎「そ、そう?」
ナミダ「遣天竺使の話は公達や姫君達の言の葉にも上る程の噂、宮中の伝説になっていたんです。まさか本当だったなんて」
菜菜乎「ふ、ふ~ん。そ~なんだ~」

仏マニアのナミダが見せる羨望の眼差しを受け菜菜乎は完全勝利を確信し、陶酔した。
そうなると心の

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四神京詞華集/シンプルストーリー (10)

四神京詞華集/シンプルストーリー (10)

【選ばれた女】

○白面酒房・控えの間(夕)
鏡を前に化粧花鈿を施している宴の花の乙女達。
ナミダは依然、お面を被ったまま先輩にお茶を出している。

織乎「それ、蒸れない?」
ナミダ「ムレムレっす」
織乎「外せば?」
ナミダ「いやいや結構きついっすよ、中身。泣きだしちゃう人もいるんじゃないかな~? デュフフフ……」
織乎「夜の華を侮らないでよね」

乙女達、ふと神妙になる。

織乎「呪いこそ受けち

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四神京詞華集/シンプルストーリー (9)

四神京詞華集/シンプルストーリー (9)

【悪黄門有鹿】

○白面酒房(夜)
ナミダ「粗茶でございます」

後世の、茶運び人形を彷彿とさせるアクションで入退場するお面禍人女など一顧だにせず、悪黄門はじっと菜菜乎を見据える。
悪黄門とは『強い中納言』という意味である。
目力もかなり、つおい。
菜菜乎は自分が値踏みされる立場にあることは充分承知の上で、だが悪黄門こと中納言蘇我有鹿卿を観察していた。
田舎女の分際で何目線なのだと問われれば、これ

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四神京詞華集/シンプルストーリー(8)

四神京詞華集/シンプルストーリー(8)

【オミズノハナミチ(後編)】

さて、遅れをとっているのは宴の花の乙女たちだ。
しかしそこはそれプロフェッショナルとして内心はどうあれ笑顔を崩さず、それでいて女として確実にチクチクと攻めに出はじめる。
白面酒房は宴の園。
宴の園はもちろん、女の戦場である。
「自分、先陣(ブッコミ)いきます!」
とばかりに口火を切ったのは菜菜乎だった。

菜菜乎「でもナミダちゃんってさあ。本当に禍人なの?」
ナミダ

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四神京詞華集/シンプルストーリー(7)

四神京詞華集/シンプルストーリー(7)

【オミズノハナミチ(前編)】

○白面酒房
宴の花たる乙女×2
ヘルプ×1
お面×1
第三テーブル、現在のメンバー配置である。
貧民窟の酒場とて馬鹿にしたものではない。
むしろ貧民は立ち入ることなどできない。
ここは都の官僚が思い切り羽を伸ばし羽目を外す場所。
こう見えて社員教育も緘口令もバッチリな超一流スナックである。
故にどんな器量よしだろうと痣持ち禍人のお面装着は必須である。
引かれるから。

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