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#03 春の星座紹介 ー「蟹モ出ズバ踏マレマイ」

皆様は蟹はお好きでしょうか?私は大好きです。そんな蟹は空にもいることをご存知の方も多いでしょう。
今回はかに座について解説していきます。
誕生星座として有名なかに座ですが、星空ではそうとも言えず…。


かに座の神話解説


 ギリシャ神話の中には幾人かの英雄が存在します。メデューサ殺しのペルセウス。英雄船の頭、イアソン。流浪の音楽家、オルフェウス。…たくさんの人物がいますが、その中でも最も知名度を誇り、冒険を修め、崇拝されたのが、ヘラクレスです。
 彼の英雄譚はギリシア神話において非常に有名であり、本筋であり、面白い(そしてとても長い)のですが、かに座はそんな彼の物語にゆかりをもっています。

ヘラクレスと12の課題

 ある時、ヘラクレスは自分のことを快く思わない女神ヘラに洗脳され、妻と息子を殺してしまったことがきっかけとなり、従兄弟であるエウリュステウスから10つの難題を言い渡され、それらを完璧に成し遂げることを命令されます。

強敵ヒュドラ!

 一つめの課題見事に成し遂げたヘラクレスですが、二つめの課題にして早くも超難題にぶち当たります。それがヒュドラの討伐です。
 ヒュドラは多くの頭をもった水蛇で、浴びたものを絶対に絶命させる毒のほか、驚くべき再生能力をもっており、その力は彼の頭を切ったとしてもすぐさま回復してしまうほどです。
    さすがのヘラクレスもたじたじになってしまい、棍棒であたまを叩き潰しても再生され、毒を喰らわないように神経をつかいました。
 しかし、ヘラクレスは序盤こそ苦戦しましたが、女神アテネの協力もあり、ある攻略法を編み出しました。彼は、剣をたいまつで炙ることでヒュドラに傷を回復されないようにしたのです。

蟹モ出ズバ…

 ヒュドラはある沼に住んでいたのですが、実は彼には友達がいました。それが大蟹のカルキノスです。カルキノスはヒュドラとヘラクレスの闘いを陰から見ていたものの、次第にヒュドラの形勢が不利になっているのを見て、友人を助けるべく、なんと飛び出したのです。しかし、相手が悪すぎました。ヘラクレスは足を爪で挟まれたことに驚きはしたものの、一撃で踏みつけてカルキノスを殺してしまいました。その後ヒュドラも倒され、英雄は次の課題を解決しにいくのでした。
 この一部始終を見ていた女神ヘラはカルキノスの友情に心を打たれ、彼とその友達ヒュドラを夜空に上げ、星座にしました。これが、かに座とうみへび座と言われています。

君たちは蟹座を見たことがあるか?

 神話ではチョイ役とはいえ、メジャーな星座なのだからさぞ夜空では目立つに違いないと思ったあなた、残念無念…。

星空でのかに座

 かに座は主に7個の星から構成されており、その形は台形に右上を除く3つの角から棒が飛び出た形をしています。四角形は甲羅、飛び出た棒は爪や足だと思えばイメージが湧くでしょうか。
 はっきり言ってしまえば、かに座はメジャーな星座の中では本当に見つけづらいし、見ることが少ない星座です。これには理由は二つあります。
 まず、一つは全体的に星が暗すぎること。星の明るさを表す見かけの等級は一番明るい星で3.520なのですが。これはオリオン座でいうと、人によっては星座を表す星座線から省いてしまうλ星と同等の明るさ。他の星も4等星に近いもしくは4等星以下の明るさしか持たないので、明るい場所で見ようとするのは至極困難になってしまいます。
 二つ目の理由はライバル達が多すぎること。かに座は春の星座ですが、その中でも最初の方に見える星座であって、少し東には冬の代表である双子座やこいぬ座が一等星をもって煌々と光輝き、西を向けばすぐそこに一等星レグルスをもつ獅子座、春の夫婦星であるスピカとアークトゥルスなど左右を一等星に囲まれており、見てるこっちが哀れ…それどころか見向きもされないことが多々あります。

赤丸のついているのがλ星である
オリオン座では文字通り三下といっていいだろう
有象無象の星に霞むかに座


赤丸がかに座、黄色の丸が一等星達である
©国立天文台

実際にかに座を見よう

 散々かに座をディスってきた訳ですが、その分観測できた時の嬉しさはひとしおです。それでは、かに座を実際に見つけてみましょう。上にある天図の画像をみるとわかりやすいですよ。
 まずは獅子座とふたご座を見つけましょう。獅子座はよく逆はてなマークなんて呼ばれる形が有名です。

丸で囲まれているのが一等星レグルス

 次にふたご座を見つけます。ふたご座といえばカストルとポルックス!
獅子座から少し、西に目をやると一等星カストルとそれに近い明るさをもつポルックスが二つ仲良くならんでいます

左からポルックスとカストル
下にはオリオン座

 二つの星座が見つかったでしょうか。そうしたら獅子座ならレグルス、ふたご座ならポルックスの二つの星をつないでいきましょう。その中心にかに座が存在します。
 暗いところでないと、見えないことが多いですが、もし見つけたなら友達に自慢しちゃいましょう。

プレセペ星団

 あやうく触れるのを忘れるところでしたが、かに座には注目するべきポイントがあります。それは、かに座の四角形のちょうど真ん中にあるプレセペ星団です。星団というのは星の赤ちゃんが集まっている場所なのですが、かに座の中央にはプレセペ星団という星団があり、肉眼ではぼんやりとしか見えませんが双眼鏡を使うとおおくの星が密集しているのがわかります。

中央にぼんやりと星が集まっているのが分かる

 ”プレセペ”とはラテン語で飼馬桶という意味があり、古代ギリシアでは人間の霊魂が天上と地上を行き来する場所だと考えられていました。
 また、あまりにぼんやりしているのでこのプレセペ星団が見えなくなると嵐の前兆ともされていました。

終わりに

 今回はかに座についてお話しました。大変恥ずかしいことに私はかに座の写真を何故か撮影しておらず、記事を書くにあたって大量のウェブサイトをいったりきたりする羽目になり…そんなこんなで苦労した記事ですので読んだ方が少しでも夜空に興味をもってくれたなら幸いです。
 今回の記事を書いていて、星座に関するある問題を感じましたので、次回はそのことについて寄稿しようかなぁと思っております。
 ではまた。
「星降る夜に、会いましょう。」 

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