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君と私のダークネス

君が私の幼少期の写真が見たいと言ってきたから久しぶりに納戸を漁った。

家のリビングで撮られた1歳くらい頃の写真。
あたりは真っ暗で、私を捉えた向こう側の窓に
カメラのフラッシュが反射していた。

母の顔がよぎる。ネグレクトされていた母の事。

私は明かりが付いていない家で育てられたんだ。

夫の帰りを待つ女。
娘とふたりきりで、真っ黒な空間に
自分の幼少期を沈めて。


君にその写真は見せなかったけど、
きっと君なら分かってくれた。

並んで歩いたテストの帰り道。
君は目を見ずにこんなことを言った。

オレ再婚家庭だから
腹違いの兄がいるから
親父無職だから
人も嫌い
うるさいし匂いがするし

オレLED嫌いなんだよね
白くて明るいから


初めて会った。
嫌いなものが同じ人。


教室の蛍光灯、
対向車のヘッドライト、
カメラのフラッシュ、
リビングの照明。

全部嫌い。

眩しい と感じることを
母はおかしいと笑ってたけど
お前のせいじゃんか。

私は小さい頃に光を見たことがないから
君の真っ黒な目の奥が
好きなのかな
好きなんだろうな
大好きだよ。

今日も太陽の光だけで
夜遅い母の帰りを待っていたら
帰宅早々

なんで部屋の明かり付けないの
ママ暗い部屋嫌なんだけど
まるでウチの親みたい

なんて言ってやがるから

また明日も君と話がしたいよ。


そのために今日こそ
太陽が沈んだら
暗闇に君を浮かべて眠りたい。

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