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#1「人が出ていく街」を変えたいと思うに至るまで/エッセイ

地域との出会い
「太鼓運ぶから通してあげて」

私の街には大きなお祭りがある。
その名も宿場祭り。

商店街に二日合わせて3万人ほどの人が訪れる

お祭りに集まる大勢の人たち

普段は隣に横浜駅があるため、
そちらへ人が出ていってしまう。
集まるということがなかなかない

宿場まつりは、
唯一町の人が集まれる時間だった

そんな祭りに私が初めて参加したのは
中学生になってから。

所属していた吹奏楽部は、
毎年その祭りで演奏させてもらっていたのだ。

商店街の狭い駐車場だったので、一年生は演奏には加わらず、先輩方のサポートに徹する。

私は打楽器の搬送を担当していた。

だが、人が多く集まった商店街で
大きな楽器を通すのは至難の業

「すみません、楽器通ります」
と遠慮がちに声を出す私たち。

でも盛り上がっている会場では
そんな声じゃ届かない



そんな時だった

「おーい、みんな
太鼓通るから通してあげて」

後ろから知らないおじちゃんが
声をかけてくれる

その声に気づき、
楽器が通れるスペースができてゆく

「ありがとうございます」

と後ろを振り返って言うと、
満面の笑みでグッドサインを出したその人は
再び人混みの中に消えていった。

演奏はしていないけれど
あぁ私はこの町に生きているんだな
この町の人に支えられているんだな
と感じた出来事でした。

つづく...

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