ちち。

「りさが結婚するまでがんばるよ」

父が亡くなった。
あっけなく、私たちの元から消えた。

父はいつでもわたしの味方だった。
高校が決まったときも、東京へ出るときも、
宮城へ帰ってくるときも、結婚するときも、
父は私のしたいことを反対したことはなかった。

怒られた思い出は一度だけ。
小さい頃から体が弱かったわたしは薬が手放せなかった。

「薬なんて飲まない!」

その日は一日機嫌が悪く、そんなことを言った。

「飲まないなら出て行きなさい」

初めて父の怒った顔を見た。怖くてたくさん泣いた。
たくさん泣いて、謝って、薬を飲んだら
いつもの笑顔の父が戻ってきて嬉しかった。

それが父に怒られた唯一の思い出。

25歳になり、私は結婚した。ずっと付き合っていた彼と。

そして一ヶ月も経たないうちに父が亡くなった。

父がいなくなった日、私に母は知らせなかった。
私はそんなことも知らず日々の生活を送っていた。

父と連絡がつかなくなり2日。
姉から父がいなくなったことを聞いた。
仕事が手につかないほど、不安に駆られた。

そして2日後、父は見つかった。もう息はしてなかった。
人形のような父が私たちの元へ帰ってきた。

あっという間に葬儀が終わって、日常が戻った。

一ヶ月、そして三ヶ月、半年……
時が経つにつれて薄れていくものは正直ある。
思い出さない日だってある。

忘れた訳では無い、悲しくないわけもない、
でも人はこうして前に進んでいくんだと実感した。

半年が経って、父とのメールを見返した。

東京に出ることになった私のために苦手なメールを
頑張って覚えて送ってくれた。

その中に見つけた

「りさが結婚するまでがんばるよ」

の一文。

"結婚しなかったらもっと一緒にいる事が出来た?"

結婚しなかったら。しなかったら。しなかったら。

そればかり頭を駆け巡った。

母にこの話をすると、
「パパはリサが結婚すること、誰より喜んでたよ。
安心したんだね、結婚して幸せになるのが分かって」

本当にあっという間に、私たちの元から消えた父。
でも、25年父の娘で居られて本当に幸せだった。
そして今も幸せだから。

結婚しなかったら……って思う日々。
今も思うことはあるけれど、
これからもっともっと幸せになるから。
結婚してよかったって死ぬまでずっと思うくらいに
ずっとずっと幸せで居るからみていて。

ありがとう、心から。
これからもずっと家族のこと大切にします。
父。本当にありがとう。

2018.2.14

甘いものよりバタピーが好きな父へ

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