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【成果に繋がる実践UXリサーチ入門】プロジェクト全体のリソースを削減する!初期にやるべきリサーチ手法とは

この記事はCreatorZineからの転載です。
https://creatorzine.jp/article/detail/1270

UXデザインにおける大切なフェーズであることは理解しているけれど、どのように進めればいいかわからない。「定量リサーチ」、「定性リサーチ」という言葉は聞いたことがあるけれど実践できていない。本連載ではそんな方に向け、現場で使える具体的なリサーチの手法や業務への取り入れ方をお伝えしていきます。第2回のテーマは「アイディア発掘フェーズで行うリサーチ手法」です。

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アイディア発掘フェーズで行うべきユーザーリサーチとは


 こんにちは!株式会社アジケでUXデザイナーをしている佐藤李里(サトウリリ)です。前回は、ユーザーリサーチの必要性や、マーケティング・リサーチとの違い、リサーチ分類の種類などについてお伝えしました。

 今回からは、プロダクトのフェーズごとに、限られたリソースでできるリサーチの手法や、少ないリソースで成果を得るためのTipsを紹介していきます。今回は、新規サービス作成時や、サービスの方向性を大きく変えたいなど、アイディア発掘フェーズでのリサーチ手法についてです。

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出典:The Design Squiggle


 上の図はデザインプロセスを表す「The Design Squiggle」というイラストです。プロジェクトの初期には不確実性が高いのが、後半になるにつれて明確な一本の線(=デザイン)になっていく様子を表しています。

 図の左側がグネグネと曲がっているように、プロジェクトの初期には、なにを基準にプロジェクトを進めていくべきか、迷うことが多いかと思います。この時期にユーザーになにが刺さるのかを調べることにより、エビデンスを持って不確実性を下げていくことができるので、とくに最初はリサーチの重要性が高くなります。

 まずは、プロジェクト初期にやるべき「ユーザー像やその課題を深く知る」ための手法から見ていきましょう。

1.ユーザーインタビュー


概要
その名のとおり、ユーザーにインタビューを行う方法です。

メリット
インタビューのメリットとしては、まず、ユーザーの行動やその背景をより詳しく聞くことができる点が挙げられます。また、ユーザーの課題や普段の生活などもセットで聞くことが可能なので、よりユーザーの生活に自然に溶け込むソリューションを提供するためのヒントを得ることができます。

さらに、個人的にかなり大きいと思っているメリットは、実際のユーザー像を目にすることで、「この人たちのために作っているんだ!」という意識がメンバーに生まれ、共感を持ちながらデザインを進めることができる点です。プロジェクトの初期にチームでこの経験を共有すると、チーム全体でユーザー視点を持ちながらプロジェクトを進めることができるので、そのあとの合意形成もしやすくなると実感しています。

やりかた
ユーザーインタビューは「誰に」「何を」「どうやって」聞くかが重要です。今回は詳細な説明は割愛しますが、「誰に」の部分のTipsと、限られたリソースでやるためのTipsを紹介できればと思います。(ユーザーインタビューはかなり奥の深い手法になりますので、参考になりそうな記事や本をこちらのページにまとめています。ぜひ実践してみてくださいね。)

リクルーティング(リサーチに協力してくれる対象者を募集すること)のTips
前回の記事で、UXリサーチは、行動に焦点を当てたリサーチだとお伝えしました。これはリサーチのみに言えることではなく、マーケティング全体・UXデザインプロセス全体で「誰」を見ているか、というターゲット層の捉えかたの違いです。

たとえばマーケティングだと「Facebookに毎日ログインしている20代女性」と区分するのに対し、UXでは「Facebookで毎日4時間以上費やしている人。かつ3つ以上のソーシャルゲームをしている人」のような形で人を捉えています。

このようにUXの基準でユーザーを捉えることで「この行動パターンの人々に適切な課題の解決策」や「この行動パターンの人の生活に馴染む体験」をデザインすることができるので、よりユーザーに寄り添った設計ができるのです。

UXリサーチでリクルーティングをする際にも、この考えかたにのっとり、行動パターンでターゲットを絞り込むようにしましょう。

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限られたリソースでインタビューを行うためのTips
Tips1:コストがかけられないときのリクルーティング方法
リクルーティングの方法として、リサーチ会社に頼む方法があります。しかし、コストに限りがある場合はなかなか難しいですよね。

現代であれば、SNSやbosyuなどのサービスを使って一般ユーザーにアプローチするのは難しくないように思います。既存プロダクトがある場合は既存ユーザーにメールをしてみたり、SNSで競合サービスについてつぶやいている人を見つけてDMを送ってみたりと、方法はたくさん存在します。候補が複数人いる場合は、Googleフォームなどでアンケートを作り、よりターゲットに近そうな人を選んでインタビューをしましょう。

Tips2:1回のインタビューの人数は少なめに設定し、小さく失敗する
たとえば、リサーチ会社に頼んでリクルーティングをするとしましょう。通常はリサーチ会社の抱えている被験者リストからスクリーニングをして、ターゲットにもっとも近い被験者を選びます。

しかし、実際にインタビューをすると、思っていたような話が聞けなかった、という失敗が実はよく存在するのです。リクルーティングの方法はいくつか考えられますが、それぞれ多少のバイアスはかかりますので、必ずターゲット層に近い人に巡り会えるとも限りません。そのため、1回のインタビューの人数は少なめ(状況次第ですが3人程度)に設定し、適宜リクルーティングの方法を変えることで、小さく失敗することを意識しましょう。

また、もしいくつかの方法を試みてもなかなかターゲット層が見つからない場合は、そもそもターゲット層が少なすぎるのかもしれません。早い段階でサービスをピボットすることも検討してみるとよいと思います。

市場性のチェックに有効なリサーチ手法「LPテスト」とは

 ふたつめに紹介するのは、サービスコンセプトの市場性を確認したい時にオススメなリサーチの方法です。詳しく見ていきましょう。

2.LP(ランディングページ)テスト


概要
サービス自体を作り始める前に、サービスのLPを作成・リリースし、「事前予約する」などのコンバージョンボタンを付け、そのボタンがどれくらい押されているのかを確認することで市場性を把握する手法になります。

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メリット
多くのサービスはターゲットの課題を発見し、そのソリューションとして開発されます。しかし、ユーザーの課題が明確であるからという理由で、その解決策となるサービスを作れば売れるとは限りません。たとえば、体重を落としたいというニーズは多くの人が持っていますが、だからといってすべてのダイエット方法が売れるわけではないのです。

そんなときにLPテストを用いれば、サービスコンセプトに対する需要の有無を、サービスを作る前に検証することができます。また、複数コンセプトを作り、どれがより売れるコンセプトなのかを検証することも可能です。

やりかた
サービスコンセプトがある程度固まった段階で、LPを作成してリリースします。リリース後、Facebook広告などを使いターゲット層の流入を増やし、Google Analyticsなどの分析ツールで数字を取得するのが基本的な方法です。デザインやコーディングをすることが難しければ、ペライチなどのサイト作成サービスを使用し簡易的に作ったり、Facebookページで代用することも可能です。

しかし、そもそもまだできていないプロダクトのLPやFacebookページをリリースするのは、さまざまな理由で難しい場合もあるかと思います。そんな時は、ユーザーインタビューやアンケートで複数種類のLPやパンフレットを見てもらい、反応の違いを確認するなど、状況に応じて臨機応変に変更してみてください。

 いかがでしたでしょうか。今回はアイディア発掘フェーズで行うリサーチ手法をふたつお伝えしました。これらの方法などを使い検証することで、エビデンスを持ったうえでプロダクトの方向性を決められると思います。

 次回は、方向性の決まったプロダクトをどのように具体化していくか、その意思決定をサポートするリサーチ方法についてお話できればと思っています。お楽しみに!


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