男性の皆さん、私たちを踏みつけるその足をどけて(byルース・ベイダー・ギンズバーグ)「ドント・ウォーリー・ダーリン」
あらすじ
完璧な生活が保証された街で、アリス(フローレンス・ピュー)は、愛する夫ジャック(ハリー・スタイルズ)と平穏な日々を送っていた。理想の生活、理想の家、そして理想の夫。幸せな生活を送るアリスだったが、ある日見てはいけないものを目撃してしまう。それ以降、彼女の周りで頻繁に不気味な出来事が起きるようになり、アリスは次第に精神が乱れ、周囲からもおかしくなったと心配されるが・・・。
ネタバレなし感想
主題となる男性の封建主義に関する部分が強調されすぎて、付随する『ビクトリー』という町についてのインパクトが弱い・・・。
オリヴィア・ワイルド監督が男性優位社会に「No」を突き付けるフェミニストであることはデビュー作『ブックスマート 卒業前夜のパーティデビュー』やインタビューで分かっているし、彼女自身も一番強調したい所はそこだったのは分かるけど、テンポが悪くなる手法はちょっと古臭いし退屈だったなー。
フロピューちゃんは可愛くて「やれー!やってしまえー!」と応援モードに。クリス・パインも嬉々として胸糞野郎を演じてたのは良かった。
※ネタバレあり感想※
まず最大のネタバレポイント。
『ビクトリーという街は現実ではなく、電脳が作り出した仮想現実だった』
が明かされた時、私はこう思った。
「いやこれブラックミラー(アメリカのSFドラマシリーズ)とか攻殻機動隊で見たことある!」
割とありふれているネタばらしだった為、そこからどう展開していくのか興味があったんだけど、いかんせんアリスがやる気を起こすまでが長い長い・・・。しかも終盤になってやっと反撃開始!と思ったら謎の建物に頭ゴツンで覚醒!した所ではい終了!
いやいやいやいや納得できませーん。
この映画の欠点は最大のネタバレ部分である、
「仮想現実のクオリティが凄い割に設定がガバガバすぎ」なところ。
そもそもきっかけとなる飛行機の墜落は何?あれは現実が侵食してきた?それとも実際にビクトリー内で起こった出来事?終盤の色んな建物が攻撃されているような描写に関係ある?とか、
ビクトリーの食料は恐らく現実世界から運んできたと思うんだけど他の食材は普通で卵の黄身だけ無かったのはどういう欠陥品?それだけ仮想内で作られたということ?とか、
ロボトミー手術後に尺の問題か速攻アリスが真実を思い出すのはいくら何でも早すぎて笑ったし、プラグの精度が悪すぎない?絶対マーガレット以前にもいっぱい失敗してそう、とか・・・
とにかくSFの設定があまりに雑で疑問点だらけ。
分かる分かるよ。監督がやりたかったことはそこじゃないことは。
『男性に縛られている女性の覚醒』を描きたかったのは分かる。
ラスボスはフランクじゃなくてジェンマ・チェン演じるフランクの妻みたいな展開は良かったので、そことの対決も見たかったし!
(男根社会をプッシュして権力を手にしているつもりの女の敵、現実世界でもいるよなーと納得)
考えてるうちにここまでガバガバ設定なのは「しょせん愚かな男たちの作った世界だから」という皮肉なのかもしれないと思えてきた。
もしそうだとしてもあともう少しだけSF世界観に芯があればさらに面白くなったはず!
例に出した「ブラックミラー」の各回のようにシンプルで現実的なSF要素を付け加えたりすればピッタリだと思う。(面白いので皆Netflixで見て。)
ちなみに今作は1975年の映画「ステップフォード・ワイフ」をベースにしているらしいが(2004年リメイクもあり)あらすじを見る限り大筋のストーリーが一緒だったのでリメイクとされていないのも疑問…。
最後にもう1つだけ。
あれだけ50年代の美しい調度品を揃えてくれるなら、せめて謎の建物だけでも空洞じゃなく凝った美しいデザインが良かったなー。
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