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鍵をかけていてください

今回の話はタイトルにもあるように、彼には常に鍵をかけていて欲しい、という話だ。もちろん家だとかチャリンコの話ではない。SNS上でだ




別れてから私は彼のYouTubeアカウントを定期的にチェックしていた。

新しく曲はアップされていないか、彼の作った曲を他の女が歌っていないか。

単に彼の作った曲が好きというのもあるのだが、それ以上に私に言っていた「俺の作った曲歌って欲しいな」を他の女にも言っていないかをチェックするためでもある

我ながら書きながらやべえやつだなと思ってきた。いや、既にやべえやつです


とある日、彼がアップしたインストの楽曲の概要欄をチェックしてしまったことが今も私を苦しめる原因となっている。

そこにはTwitterとInstagramのアカウントのURLが貼られいた。すぐさまぴゃっとタップしTwitterを開いていた。

今までのツイートやリプライのチェック、フォロー、フォロワーのチェックをする。インスタも同じように投稿やフォロワーのチェックをする。

幸いどちらもそんなに多くの人と繋がっていなかったのですぐにチェックは終わり、何度も何度も彼のツイートを舐めるように眺めていた。

とそこまではよかった。なぜならまだ趣味垢だから。


彼は頻繁にツイートをするタイプではなくすぐにツイ消しもする。

気が向いた時に開いて新しいツイートや投稿があったらラッキー、ぐらいの気持ちだったけども常にTwitterやInstagramの検索欄に彼がいるようにしていた。


道を踏み外してしまい始めたのは(かろうじて自覚はある)のは彼のLINEの過去の投稿を見始めてから。

今とは比べ物にならないぐらいダサい彼の写真や彼女らしき子とのツーショットのアイコンの投稿を残しているのに少し慄きながら、暇だった私は誰がいいねを押しているのか、投稿にどんなコメントがあるのかをひたすらチェックしていた。

すると最近の彼の投稿に頻繁にスタンプを押している女の子のアイコンが目に入った。


どうせわからんやろうけど誰やねんこいつ、と思いながらアイコンをタップすると設定のせいだろうか、その子のタイムラインが私の携帯に表示された。

投稿をチェックしているうちに私は「これって彼がよく行くって言ってた居酒屋さんで働いている子なのでは…?」と思い、コメントの中で出てきていた店名らしき単語を調べたら場所も一致してしまい私の予想は的中してしまった。


すると今度は何をしたか?答えは彼のインスタの本垢探しです。

お店のインスタを調べるとすぐに出てきた。もちろん鍵はかかっていないので投稿もフォロワーも見放題だ。

早速「探すぞ!」と意気込みフォロワーのボタンをタップした瞬間に上から5番目ぐらいに彼らしきアカウントを見つけ、アイコンの写真の感じやプロフィールの文言から彼のアカウントであることがすぐに分かった。

いや、アカウント特定するの早すぎだろCIAかよわろた(こんなことと比べてすみません撃たないで…)。


インスタは鍵垢だった。

私の学校は「教師のSNSはフォローしてもいいが教師側がフォロー返しをしてはいけない」という謎ルールがある。

おそらくそのせいで彼はアカウントを閉じてしまっているのだろう。

知れただけでもいいもん、と思いつつしばらくはネトストも少し落ち着いていた。


ちなみにその子が万が一彼とどうにかなったら、と思ってしまい、彼氏さんがいるのも知っていながらインスタを覗き見していたのですがなんとこの前入籍されてました!!!!!!おめでとうございます!!!!!!!!(お前が祝うな)




年明けのビッグニュースは?と聞かれたら「元彼がボカロPになってた」の一言に尽きる。

ネトストが落ち着きかけていると言いつつも、見えてしまうプロフィール欄や趣味垢のツイートで「ボーカル募集中」と書いてあるのを見る度、私はすぐさまLINEで「いや、私がおるやんけ!!!」と問い詰めたくなる気持ちを抑えひたすら1人でヘラっていた。

そんな中彼はボカロに手を出し、それもちゃんとツイートしていた。

彼の元カノではあるが、まず第一に彼のファンでもある私は、色んな人に彼の曲を聞いて欲しいと思っている。

そんな中彼のツイートにリツイートがついていた。「拡散されてる!」と思い、拡散してくれた人は誰だろう、とタップしたらまさかの彼の本垢!!!!!!!

いや、いやいや、こんな形で知ることある!!!?????


今まで私は彼のTwitterの本垢を調べていなかった。

どうせ鍵をつけてるから調べても無駄やろ、という気持ちとダメもとでフルネームで一回調べたけど出てこなかったことから、やっぱり自分のことをおじさんと言いつつもInstagramをメインに使っているんだろうな、と諦めかけていたからだった。


そう思っていたのにこんなところでこんにちはしてしまうなんて…。

人間、いつチャンスが舞い降りてくるかはやはり分からない(一緒にすんな)。

鍵をかけていなかったことから早速ツイートを見させていただいたし、フォロワーチェックももちろんした。

私と付き合っていた時やその後でツイートの内容が大きく変わることはなかったし、私の存在が匂わされるようなことも全くなかったのだが、別れる数日前に「そろそろ一人旅も飽きたなあ」、とツイートしているのがずっと引っかかっている。

その後すぐに私に別れ話をしてきたくせに、その時はどんな気持ちで文を打ってたんだろう。

すぐにツイ消しをするタイプなのに、なんでこれは残ってるんだろう。

なんでだろう(今さっき確認したら消えてて泣いた)。


ネトストにも忙しさの波はある。

Twitterも鍵をつけたり外したりしているし、趣味垢の更新が急に活発になったり、逆に、ずっと更新が途絶えたりするのも彼にとっては珍しくなかった。


して楽しいことなんてない。

インスタが鍵垢なのを分かってるから、彼の日常をストーリーで覗ける人たちが羨ましくて仕方がないし、「結婚したい」なんてツイートしてるのを見つけた時は「彼女が出来たのか」とひたすらグレーな思考を巡らせるのが辛すぎて「彼女が出来たら言ってください」と酔いに任せてLINEを送ったこともある(別れてからはまだいないって言われたけど)。


未だに彼が優しいから辛い。

その気になればすぐに彼女でも結婚でもできるだろうに、そうならないことに「もしかしたら」と常々思ってしまう。

アップしているご飯もいつもでも一人前だったらいいのに。家で飲んでる写真が流れるたびにホッとしてしまう。


前に彼が家に来た時、彼は私が作ったオムライスの写真を撮って「ストーリやったらバレんかなあ」と嬉しそうに言っていた。

明らかに誰かの家で、量だって2人分で、食器なんかも、自分の趣味のものではないのに。

あげたら「彼女の家?」と確実に思われてしまうような内容でもあげたいと思ってくれたのが、彼にとって私が「誰かに自慢したい」と思ってもらえる彼女だということが嬉しくてたまらなかった。


だから怖い。次に付き合った子が、私とは比べ物にならないくらいのいい子で、ストーリーやツイートにたくさんその子が写るようになるのが。

私の時にはしていなかったことをしているのを見た時に自分が耐えられるのかが怖い。

だから彼にはずっと鍵をかけていてほしい

もし、関係が変わった後に私が彼のアカウントをフォローしたとしても、ほんとに一ミリも復縁する気がないのならブロックして欲しいとさえ思ってしまう。


友人の結婚式に行くと言っていた時も、ずっとフォロワー数が変化していないかをチェックしていた。

こんなご時世で二次会はないだろうから出会うきっかけなんてないだろうと思いつつも、彼はスタイルはまあまあだけど身長は平均はあるし、雰囲気がなんかシュッとしてるし、清潔感があるし、何よりスーツが似合う。

「このコロナ禍の出会いがない中にそんな人がいたら、声かけない訳なくない…!!!??」と彼バカの私は思ってしまうので、結婚式に行ったことがないため全く知識がない中、式場のシャンデリアのあるようなキラキラした空間で女の子とインスタを交換している彼を想像して発狂しそうになっていた。


そのあたりからフォローフォロワー数をスクショで残すようになったと思う。

増えた、減ったと思ったらとりあえずスクショ。プロフィール写真やプロフィールの一言が変わってもスクショ。探偵事務所かて。


最近ついに開き直ってTwitterの趣味垢を私の歌い手垢でフォローし、ツイートの通知が来るようにしているのだが、ここのところずっと彼には珍しく、飲みにいけないのが辛いだとか、病んでるツイートしかしていない。

誰かへの文句のツイートが少し私とダブって心が痛いのもあるのだが、投稿頻度が上がっていることや、ツイートの内容が荒れていることが心配でたまらなかった。


私が彼のストレスの原因であることも重々承知しているのだが、毎日毎日ツイートしては消されていく文言を見て、1人で抱え込まないで、と思った。

そりゃあ私は頼りないし、逆に頼ってばっかりだし。

でも、辛そうなのはなんとなくわかってしまう。彼が辛そうだと、私も段々と辛くなってしまう。

見なければそうならないのは分かり切ってはいるものの、人に自分の気持ちを伝えることを諦めている彼に、絶対に私は味方だよと伝えたい

どうしたら彼がそう思ってくれるのかも、彼にどんな風に伝えればいいのかも、いい方法がちっとも思い浮かばないけど。




先日ついに彼のインスタの鍵が外れていた。

それと同時にしばらく鍵のかかっていたTwitterも外されていた。

そうなると私は時間がある時も無い時もひたすらそれを見てしまう。


ああ、お願いだから、早くまた鍵をかけてください。


そう思いながら私はまた今日も検索欄にある、彼のアイコンをタップしている。

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