見出し画像

コスト意識とインタビュー

 長年、医療界に身を置いていて感じること。それは自分たちのコスト意識の低さだ。医療/福祉領域は聖職で、お金のことを細かく言うのは、どことなくご法度のようなところがあるし、患者さん/利用者さんから直接、お金をもらうことが少ない。

 もともと奉仕精神みたいなところを出発点にしているので、営利主義に対する心理的抵抗も大きい。

 けれど、私は地域の支援機関と一緒に仕事をすることも多かったし、地域の支援者と個人的に親しくなる機会もあったので、彼らの報酬とか持ち出しに(他の医療者に比べて)関心が高いように思う。

 例えば、患者さんが退院する前に、病院は当然のように退院前カンファレンスを開催して、そこに地域の支援者を呼ぶけれど、職種によってそこに報酬が生まれる人とそうでない人が混在していること、とか。

 もちろん包括的に考えれば、退院後の支援をするためには必要な手順だし、地域生活を支え始めれば定期的に報酬が発生するのだから、カンファレンスに参加する“持ち出し”はすぐに回収できるだろうけれど。
 一時間のカンファレンスに参加している時間、彼らが本来業務をこなすといくらの収入になるのだろうか。私はそんなことが気になる。
 どうしようもないことかもしれないけれど、「参加して当然」というような態度で彼らを呼びつけるようなことはしたくないと思ってきた。

 さて、今日の本題。

 これから夫婦で始めようと思っている事業について、知り合いの地域支援者にニーズ調査をしたいと考えている。できれば、彼らの事業所を訪問して、1対1で本音を聞かせてもらえるとありがたい。そこで浮かび上がってきた彼らのニーズを、自分たちの事業計画に反映させるつもりだ。それには小1時間ほど時間を作ってもらう必要がある。

 それについて夫と話し合っていた時のこと。「(彼らに)謝金を用意したい」と話すと、夫はちょっとびっくりした顔をした。

 私からすると、自分たちの事業の種を探すために彼らに協力を仰ぐわけだから、謝金を用意するのは当然だと考えている。けれど、夫はそこに金銭のやり取りが発生するという発想がなかったので驚いたようだった。

 社会に役に立つ事業をする(つもり)だからといって、彼らの仕事の時間を搾取していいとは思わない。
 金銭的な報酬でないとすれば、たとえば、聞き取り調査の結果を論文にして発表するとか、そういう形で彼らから得たものを彼らと社会に還元することができるというのも、ひとつの報酬のあり方かもしれない。「自分が役に立っている」ということが医療/福祉従事者にとっての心理的報酬でもあるからだ。

 そんなわけで、発想を拡げてみて、いま考えているのはこんな感じ。

1)謝金を渡して、一時間ほどインタビューをさせてもらう
2)5~6人くらいに協力してもらって、それを文字に起こす
3)結果をまとめる
4)結果を元にプロジェクトチームで検討する
5)事業内容を決めていく

 それプラス、フィールドワークの結果を何らかの形でペーパーにまとめて発表するのもアリだな、と考えている。それが協力者への心理的報酬になり得るし、私たちがやろうとしている事業の必要性を世に問う機会になり得る。まさに一石二鳥だ。

 謝金を渡してインタビューするのならば、その結果を最大限に活用するほうがいい。それに一度、界隈の人間にインタビューというものをしてみたかった。無所属の今なら利害関係なく、それができる。
 そこまで考えて、なんだかワクワクしてきた。

 コスト意識を持って動く

 これから起業する私たちにとって、根本に持っておかなければならない大事な軸だ。

(つづく)

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?