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マイリー・サイラス「My Heart Beats For Love」ープライド月間に聴きたい洋楽

プライド月間で思い浮かべる洋楽は?

6月は世界共通のプライド月間です。

毎年6月はプライド月間と呼ばれ、世界各地で性的マイノリティ(LGBTQ)のパレード(プライド・パレード)が開催されたり、その権利啓発のイベントが催されたりします。

ところで、洋楽好きの方だったら、プライド月間にどんな楽曲を思い浮かべますか?

例えば近年のポップソングから、

ロサンゼルスのプライド・パレードで撮影されたミュージック・ビデオが印象的な2014年の楽曲、デミ・ロヴァート「Really Don't Care」(Billboard Hot 100 26位)や、


テイラー・スウィフトが、ホモフォビア(同性愛嫌悪者)に対し「落ち着いて」と歌い、LGBTQコミュニティへの支持を表明している2019年の楽曲「You Need To Calm Down」(Billboard Hot 100 2位)、

などは、すぐに想起できそうです。


では、今回は私からマイリー・サイラス「My Heart Beats For Love」をご紹介したいと思います。



マイリー・サイラス「My Heart Beats For Love」概要

「My Heart Beats For Love」は、マイリー・サイラスの2010年のアルバム「Can't Be Tamed」(日本語アルバムタイトルは「Can't Be Tamed―ワタシ革命」)に収録されました。

アルバム「Can't Be Tamed」はアルバムチャート(Billboard 200)で最高位3位、シングルカットされたアルバムタイトルナンバー「Can't Be Tamed」はBillboard100で最高位8位でした。

ちなみにレコード会社はウォルト・ディズニー・カンパニーの傘下である、ハリウッド・レコード、日本盤はエイベックスでした。

今回紹介する「My Heart Beats For Love」はシングルカットされなかったため、おそらくファン以外の方たちにとっては知名度が低い楽曲だと言えます。

また、このアルバムにはポイズンのカバー曲「Every Rose Has Its Soon」を抜いたすべての曲にマイリ―・サイラスの名前がクレジットされています。そのため、この曲のクレジットにも、

Written by John Shanks, Hilary Lindsey, Gordie Sampson and Miley Cyrus, Produced by Shanks

とあり、マイリー本人が楽曲制作に関わっていることがわかります。ちなみに、この曲のプロデューサーは以前からマイリーの楽曲をプロデュースしてきたジョン・シャンクス(ボン・ジョヴィ、シェリル・クロウ等のプロデュースでも知られている)が担当しています。


ゲイの親友に捧げた歌

マイリー・サイラスは当時、ディズニー・チャンネルのテレビドラマ「ハンナ・モンタナ」で主演を務め、アメリカを始め世界のティーンエイジャーたちを虜にした俳優であり歌手でした。筆者もそんな子どもの中の1人でした。

そんなディズニー・スターだったマイリーは「Can't Be Tamed」の発売当時、「My Heart Beats For Love」ついて、ゲイでヘアスタイリストの友人のために書いた歌だと公に発表したのでした。

マイリ―は後に自身について「私はディズニーで、ゲイの友人たちをサポートしているとカミングアウトする唯一の子どもの一人だった」と振り返っています。(2019年3月の記事引用

「LGBTQコミュニティーを支持している」と表明する17歳のスターは当時珍しかったということなのでしょう。

また、マイリーは同曲の発表がファンに影響を与えた例として、「トロイ・シヴァンは、わたしがカミングアウトした『マイ・ハート・ビーツ・フォー・ラブ』を聴いて、自分のセクシュアリティを受け入れられるようになったんだって。」と語っています。(2020年12月の記事引用)

トロイ・シヴァンはオーストラリアのシンガー・ソングライターで、2006年から活動しており、2013年に自身がゲイであることをカミングアウトしたのだそうです。トロイ・シヴァンは自身がマイリーから受けた影響について次のように語っています。

「ストレートでないことをカミングアウトした私にとって、実際に重要だった最初の人はマイリー・サイラスです。13歳でハンナ・モンタナを見ていたとき、彼女が世界で一番クールな人だと思いました。そして彼女は"My Heart Beats For Love "という曲を作ったんです。彼女はインタビューで、ゲイの親友のことを歌っていると言っていました。私はこんなふうに思いました。『なんてこった、マイリー・サイラスにはゲイの親友がいるんだ。どうして私はそういう人ではないのだろう?世界中のみんなが私を拒絶するなら、マイリー・サイラスと友達になればいいんだ』ってね。
2016年9月の記事引用

このように「My Heart Beats For Love」が、LGBTQの若い世代を勇気付けたということがわかります。

この曲はヒットチャートの歴史にこそ足跡を残しませんでしたが、LGBTQの若者たちに手を差し伸べた重要な曲なのです。

さらに、マイリ―は2014年から若者のホームレス問題、そして若者のLGBTQコミュニティ、その他の社会的弱者に焦点をあてた慈善団体である「Happy Hippie Foundation」も設立しています。

ちなみに、アメリカ合衆国の最高裁判所が同性婚を合憲と認め、アメリカ全土で同性婚が認められるようになったのは2015年6月です。

それよりも前の2010年に「My Heart Beats For Love」をゲイの友人のために書いたと公表し、2014年に慈善団体を設立したのですから、これらのマイリーの行動がいかに当時のLGBTQの人たちを勇気付けるものであったかは、想像に難くないと思います。


楽曲制作の背景を知ることの重要性

実は、オンタイムでマイリ―の楽曲を聴いてきた筆者は、最近までこのエピソードを知りませんでした。なぜなら、当時購入した日本盤のアルバムの解説にも、当時購読していた雑誌にもこの曲の背景について言及しているものは無かったからです。(※もちろん筆者が知る限りのお話です。)

私は当時10代のマイリ―が楽曲に自身のポリシーを反映していたという事実を知りませんでしたが、こういった楽曲制作の背景やアーティストの真のメッセージがリスナーに伝えられることは非常に重要に感じます。

ちなみに、マイリーは自身をクィア(性的マイノリティの総称)と自認していて、「パンセクシュアル(全性愛者)」と公言しています。(2019年2月の記事参照

最後に、マイリーが2021年6月に開催されたプライド月間のピーコック・コンサート・シリーズで「My Heart Beats For Love」を歌った映像を以下に貼り付けます。(2021年6月の記事引用)


そろそろ参院選、日本での同性婚を考える

今回のテーマから派生して、日本では現在同性婚ができない問題について考えてみませんか?

タイムリーな話題だと、先日2022年6月20日大阪地裁は「日本政府が同性婚を認めていないことは合憲」との判決を下しました。非常に残念な結果でした。ちなみに、2021年3月の札幌地裁の判決は“違憲”でした。

同性婚について賛否があるかと思います。もし、日本における同性婚について理解するのが難しいという方は、Marriage For All Japan の「よくあるご質問」のページが非常にわかりやすいので、是非ご覧になってみてください。


また、Marriage For All Japanによる他のサイトで、現在の国会のうち何%の議員が同性婚に賛成しているかがわかる「マリフォー国会メーター」があります。

皆さんの選挙区の議員さんから有名な政治家まで、現職の議員がそれぞれ同性婚に賛成なのか?反対なのか?を見ることができます。また、政党別で見ることもできます。

選挙で一票を投じる前に是非ご覧いただき、参考にしていただけたらと思います。

是非、来たる2022年7月10日の参議院選挙で投票に行きましょう。あなたがLGBTQに該当するかどうかは関係なく、この人権問題と向き合って下さったら嬉しいです。

最後までお読みいただきありがとうございました。


追記その1:参議院選に対応したマリフォー国会メーターのサイトがオープンしました(2022年6月25日)

現職の国会議員が同性婚に賛成なのか?反対なのか?がわかる「マリフォー国会メーター」のページをご紹介しましたが、今回の参議院選に出馬する候補者一人ひとりが同性婚をどのように考えているのか?また政党別にはどうなのか?がわかるサイトがオープンしたそうです。
以下のサイトを是非ご覧ください!


追記その2:「My Heart Beats For Love」対訳(2022年6月25日)

今回紹介した楽曲の対訳を載せました。同曲が収録されているアルバム「Can't Be Tamed」(日本盤)の沼崎敦子さんによる日本語対訳と、翻訳サイト(DeepL)を参照し、英語の歌詞になるべく忠実になるよう訳詞をまとめました。そのため一部直訳のような表現になっています。予めご了承ください。また訳詞に問題がある場合はお気軽にお知らせいただけましたら幸いです。

I've been stranded on a lonely street
私は孤独な道で立ち往生している
Got lost in the shadows
影で迷子になって

Fell hard in the battle
戦いの中で激しく倒れた

The cries and the suffering
悲鳴とうめき声が聞こえた

I walked through the darkness
私は暗闇の中を歩いた

Left broken and heartless
傷つき、心細くなった

I'm calling out, can you hear my voice?
呼びかけているんだ 私の声が聞こえる?

I'm gonna find you through all the noise, oh whoa
私はすべての騒音の中であなたを見つけるつもり

You know there's nothing that I wouldn't do
私はどんなことだってするって知ってるでしょう?
So shine your light as I reach for you
あなたに手を伸ばしている私に、あなたの光を照らしてよ

(※)My heart beats for love
私の心臓は愛のために鼓動する

My heart beats for love
私の心臓は愛のために鼓動する

It's the sound that I hear
聞こえるその音は

Tells me not to give up
私にあきらめるなって教えてくれる

It breathes in my chest
私の胸で呼吸し

And it runs through my blood
私の血の中を駆け巡る

My heart beats for love
私の心臓は愛のために鼓動する

My heart beats for love
私の心臓は愛のために鼓動する


And I've been told at least a thousand times
少なくとも1000回は言われた

It's not worth struggle
闘う価値はないって

The hurt or the trouble
傷ついたり、悩んだりする(価値もないって)

I keep running up to these front lines
私は常に最前線へと駆け上がり続けている

No, I won't surrender
いいえ、私は降伏しない

I'll wait here forever
ここで永遠に待ち続ける

Standing here with my back held high
背筋を伸ばしてここに立つ

Oh, can't you see that it's worth the fight?
闘う価値があるって思わない?

(※)

I march across this battlefield
私はこの戦場を行進する

I'm screaming out, can you hear me now?
叫んでる、私の声が聞こえる?

I'm holding on, I stand my ground
私は踏ん張ってる

I'm screaming out, can you hear me now?
叫んでる、私の声が聞こえる?
(※)


「My Heart Beats For Love」参考記事・資料


・日本盤アルバム「Can't Be Tamed―ワタシ革命」解説


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