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スパークスにわかファンによる映画『アネット』感想

私は以前エドガー・ライト監督のドキュメンタリー映画『スパークス・ブラザース』を鑑賞し、ひどくそのスパークスという兄弟バンドに心を奪われた、典型的なにわかファンである。

その際、スパークスが関わった映画『アネット』も現在公開中であることを知った。
縁あって好きになったスパークスをもっと知ることができるならという想いで、この『アネット』を観に行ってきた。

詳しいあらすじについては公式サイトをご覧いただきたい。


ワクワクの長回しオープニング「So May We Start」

この映画は前述の通りスパークスが関わっている。具体的には「原案」「音楽」を担当している。

この『アネット』のストーリーと楽曲は当初スパークスにより構想され、それをレオス・カラックス監督に紹介したところ彼が気に入り、今回映画化することになったそうだ。

そして、スパークスはこの映画の数ヵ所のシーンに出演している。その中でもオープニングは印象的で、「So May We Start」(字幕では「始めよう」と翻訳)という曲を、スパークスのヴォーカル・ラッセルが最初に歌い始め、次にメインの役者(アダム・ドライバー、マリオン・コティヤール、サイモン・ヘルバーグ)が順番に歌に加わりながら夜の街を歩くという演出である。

カットの無い長回しの映像で、その臨場感はスパークスファンならワクワクせずにはいられない。

以下、スパークスの公式YouTubeより、そのオープニングの様子が窺えるトレーラーを貼り付けたい。


トラウマになる覚悟で鑑賞を、オフィシャルパンフレットで精神安定を

この映画のキャッチコピーは「ダークファンタジー・ロックオペラ」である。オープニングのワクワクとは裏腹に、内容はダーク、暗いのだ。鑑賞後には、トラウマに近い心理的負荷がかかる可能性を覚悟した方が良いかもしれない。

私の場合、作品の鑑賞中はその強烈な表現やストーリーを目の当たりにし続けているため、どうしても冷静に映画を分析することが難しかった。

しかし、オフィシャルパンフレットの解説を読むことで心が楽になった。この映画がいかに緻密に練られ、文学的、演劇的“記号”が散りばめられている優れた作品なのかということを、解説によって理解することができた。映画を観た後の感傷的な余韻から一歩離れ、頭を冷やして作品と向き合うことにより、この映画の素晴らしさをより実感することができた。

この映画を観て心理的負荷を感じた方は是非、オフィシャルパンフレットを手に入れて、有識者の方々による解説も読んでほしい。

トラウマにならなかったとしても、評論やインタビューなど、読む分量がとにかく多くて、腹12分目になる今回のオフィシャルパンフレットを是非オススメしたい。


スパークスファンなら必見の映画

この映画の音楽は全てスパークスによるものである。そして、“暗い”だの“トラウマ”だの書いてきたが、音楽は本当に美しく素晴らしい。さすがスパークス!

私はスパークスのファンになってまだ日が浅いが、長いこと応援してきたファンにとっても、『アネット』の楽曲から、さらに新しいスパークスを垣間見れる良い機会になると思う。

スパークスがこれまでのキャリアで、映画音楽に2度チャレンジしたが挫折した経緯があることは、冒頭でも紹介したドキュメンタリー映画『スパークス・ブラザーズ』を観た方なら予習済みの話題だ。是非ファンの方には、スパークスの長年の想いが成就した『アネット』を(前述した諸々を覚悟の上で)見届けてほしい。

最後に私が行った映画館では『アネット』を盛り上げるべく、大きな掲示物を作成していた。この熱量を載せておきたい。

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※キネマ旬報シアターにて撮影

追伸:最後まで読んでいただいたあなたへ。この映画を観ると決めたなら、エンドロールで席を立たないように留意してほしい。

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