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【読書日記】異邦人のロンドン

ロンドンにずーっと仕事で駐在して居る著者によるロンドン今昔。

視点が並行というか、上からでもなく下からでもなく、英国すごい!礼賛!でもなく、ここはこう、こういう時はこう、とナチュラルに良いこと悪いことがきちんと書かれていて、肩肘張ってなくて読みやすい。

とはいえトップに来る話がとても衝撃的。そんなことある?する?という話から始まるのだ。
そして章は変わり、コロナ禍のロックダウン、エリザベス女王のジュビリー、娘さんの学校、
日本軍に捕虜として捕まっていた人たちの日本への気持ちなど読みがいのある内容が続き、
そして最後にまた巻頭に書いてあったことの回収話のようにその後、が、書かれている。

簡単にいえば飛行機の車輪格納部分に隠れて英国を目指す人たちが、もちろん高度による気温の低下や気圧、さまざまな事に耐えられるケースは僅かで、ほとんどが気を失いとある地点で落下するというのだ。
それがまた決まった場所だと。
著者が住んでいる場所のすぐそばのスーパーの駐車場に人が落ちてくるらしいのだ。

なんということだろう。

そんなことをしようと、そこまで思い詰める自国から抜け出すというのはいかほどのことなのか。
その思いを考えるだに、想像もつかない上に
知らない場所で落下してしまうなんて。

で、本の内容に戻るが、巻末に載っている話では、そこから生還した人のその後。
手を差し伸べる人の存在。
私ならできるだろうか。日本の社会が受け入れるだろうか。

以前英国に旅行した時に、物乞いをしている人がいて、その人に買ったばかりのバーガーをさっと当たり前のように渡して立ち去る人を見かけたことがある。

自分が生きている意味は、1人だけが得をしたいからではないはずだ。そんなことをその時に考えた。

この本は、自分の持っている心の何かにスッと入ってきたところでなかなか良かった。


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