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【漫画の感想】『えれほん』うめざわしゅん氏のテーマとその分析に脱帽

読む前からざわざわしていたんだけど。
まったくタイトルから何も想像できないから。

3つの短編集。えれほんというタイトル短編はこれまた入ってないのだ。
Amazonの本の説明を見てみよう。

Amazonより

タイトルだけだと、曲や絵本のオマージュかな?と思うけど。

私なりに読後の分析をすると、
全て社会への、自由への問いかけと、
それに対する答えを自分で探すために
二項対立をさせて描き出すもの。

その描き方が深い。
あ、これ漫画だよね?っていうくらい
台詞で埋め尽くされているページもあって
そう、こんな時きっとこの人ならこういう表情で話すよね、という納得感もすごい。

『善き人のためのクシーノ』
リア充爆発しろ!のリアルシーンから始まる。
ルッキズムってよくないでしょ、の隠れ蓑から
独裁国家となった日本の極端な姿。
そのなかで官憲ともいうべき住田という男。
対象となったアイドルにのめり込み、
結果として…
そして政府が用意した結末。
読後、ドキドキしてしまう。

ちょっと古い雰囲気の絵がまた、なんとも言えぬ味わい。

『かいじゆうたちのいるところ』
知的財産権の保護から行き過ぎた監理監視社会。違反者を取り締まる男と、組織的にこの社会を壊そうとしている海賊。
台詞のオンパレードだけど
読み甲斐がある。

これ、うめざわしゅんさんのnoteでも読めるみたい。
パブリックドメインへの考え方を体現してらっしゃる。

『もう人間』
生まれついての病気、臍の緒を切ってしまうと死んでしまうという臍子がいるという設定。

これはねー、子どものこと考えると、辛さが増す。
だってお母さん生きてるから生きていられるんだって。
この怖さ。子どもは年々普通に成長するんだもの。

しかも自由意志で中絶が禁止されている日本っていう設定。

で、どこから人間なの?って。
胎児の中絶をめぐって、どこから人権がみたいな話は以前から話題になることがある。

この場合は、取材する記者もお腹に臍子を宿し、取材される男性は母親が以前自死しようとして植物状態。
それらを取り囲む周りの人達。
きちんと描き込まれていて、脱帽。

こういう理屈と論理の構築によって成り立つ漫画、好きな人にはたまらないよね。
っていう世界。

しかも読む自分はある意味、まったくちがう世界にいるという安心感を持ったまま読めるわけだから、気楽なものです。

なんだか、アイロニーな雰囲気の文章になってしまったけど、自分は安全地帯にいるからこそ
フィクション(特にディストピア)の世界を楽しむことができるのかな、と最近よく考えます。

うめざわしゅん氏の漫画は、色々考えられる要素を与えてくれる良書です。

好きだわこの世界!

ではまた!

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