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【#曲からストーリー】100年越しの愛を

あなたはどうして僕に心をくれたんでしょう
あなたはどうして僕に目を描いたんだ

貴方はゆっくりと変わっていく とても小さく
あの木の真ん中に育っていく木陰のように

ヨルシカ「アルジャーノン」より


 ✖️

貴方だけを憶えている
雲の影が流れて往く
言葉だけが溢れている
想い出は夏風 揺られながら

ヨルシカ「第一夜」より



2曲合わせたらストーリーが浮かんだので
2曲からの〜ぽんっ٩(๑•̀ω•́๑)۶




森の中を彷徨って倒れていた僕を拾ってくれたのは、森の奥に住むという魔女だった。

目を覚ますと、すでに魔法で毛並みもツヤツヤに綺麗にされていて、僕に「クロア」という名前を付けてくれた。

魔女は一人きりで寂しいからと、僕を人間の男の子の姿に変えた。パリッとした燕尾服に蝶ネクタイ、人間たちはこの格好を『執事』と呼ぶらしい。僕は魔女の執事として暮らすことになった。


魔女といっても、おっちょこちょいでそそっかしくて、自分のこともまともにできない。部屋は散らかし放題、魔法の研究に没頭するとご飯も食べないのだ。そんな魔女の世話をするのがいつしか僕の生きがいになっていた。


そんなある日、魔女が森で倒れていたという人間を小屋に連れてきた。嘘みたいな話だが、彼は隣国の第二王子だった。世話をしているうちに魔女と王子が惹かれあっていくのが手に取るようにわかった。


そうして王子と魔女は森を去った。
隣国のお城で暮らすらしい。


僕は…

僕はそんな二人のそばにいたくなくて、森に残ることにした。魔女には惜しまれたが、すぐに送ることのできる魔法の手紙があるので、来たくなったらいつでも連絡するように、と念を押された。



それから、何年経ったのだろう。

僕は魔女と暮らしたその小屋で、
今までと同じように暮らしていた。

名前を呼んでくれる人がいなかったので、
いつしか自分の名前さえも忘れてしまった。


あれから何度か手紙を送ったが、
魔女からの連絡は一切なかった。

そうか、きっと彼女も王宮の暮らしに慣れて
変わってしまったのだろう。

こんな風に捨てるのなら、
いっそ拾ってくれなければ…

名前なんてつけなければよかったのに…



こうして僕はまた一人になった。


魔法で魔族にしてもらっていたので、
もとが猫とはいえ長生きすることができる。


いつのまにか、僕の体はついに猫に戻ってしまっていた。それでも構わない。もう一人なのだから、誰の世話をする必要もないのだ。


ある日、森の中で倒れている女の子を見つけたので小屋まで運んで介抱した。どことなく魔女に似ている気がするのは、久しぶりに人間に会ったせいなのだろうか。

「ありがとう。あなたのお名前は?」

「名前?名前は..」

やはり思い出せない。

「名前がないなんて不便ね。じゃあ私が付けてあげるわ。クロア、なんてどうかしら」




そのとたん、僕の体は光に包まれると魔法陣が浮かび上がった。光る魔法文字が螺旋のように全身を取り囲んでいく。

そうだ、僕の名前はクロアだったんだ!
でもなぜ、この子が知っていたんだろう?

その光を見たのか、白い鎧を着た騎士たちがどこからか小屋に駆けつけてきた。

「姫さま!ご無事ですか?」

「ひめ?」

「大丈夫よ、こちらの方が助けてくれたの」

騎士たちはクロアの前に膝をつき深々と礼をした。

「ありがとうございます。私たちは隣のメルキア国から、この森に亡き皇太后様の忘れ形見を探しに来たのです。結界で守られた小さな小屋にいる黒い執事姿の男の子、とはあなたのことでは?」


クロアの姿はいつのまにか、黒い燕尾服の執事姿に戻っていた。

「亡き皇太后…魔女さん?」

「申し訳ありません、皇太后様は我が国に来て数年で亡くなわれてしまいました…こちらのセリーナ様は皇太后様の孫にあたります」

セリーナが堰を切ったように口を開いた。

「お祖母さまの日記にね、ここのことが書いてあったの。お友達を置いてきてしまったこと、病に伏して連絡が取れなくなってしまったことを悔やんでいたわ。クロア、って熱に浮かされながら言葉にされていて…やっぱりあなたのことなのね」

王女はクロアにニッコリと微笑んだ。

「さっきのは名前の再契約の魔法みたいね。これであなたは私と契約をしたことになったわ。できたら一緒にきて欲しい。でも、それはクロア次第よ。これはあなたの意思ではなかったのだから…」

そうか、魔女が亡くなってしまったから、100年は持つと言っていた魔法は解けてしまっていたのか。いや彼女は孫なのだから、もうとっくに100年経っていたのだろう。僕はボロボロと涙をこぼした。

小屋の中にはそこら中に、魔女と過ごした日々が詰まっている。あの窓で流れる雲の影を見て過ごした午後も、僕の作ったお菓子を嬉しそうに頬張るその顔も、目を閉じれば今でも鮮明に思い出せる。


だけど、それはもう幻影でしかないのだ。

今度こそ、僕は選択肢を間違えない。

「セリーナ、良ければ僕を君たちの国へ連れて行ってほしい。魔女さんが暮らしたその国を、僕もこの目で見てみたい」

「ありがとう、クロア。一緒にいきましょう」


一瞬セリーナの声が、魔女の声とそっくりに聞こえてクロアはハッとした。これも魔法なのだろうか。セリーナは微笑んでいる。


僕が小屋の外に出ると、入り口のすぐそばに名前も知らない白い花が寄り添うように咲いていた。僕はその花ごと保存の魔法を小屋全体にかけると、セリーナたちとともにこの地を発った。



画像はいつもの画像作成AIアプリより。

「アルジャーノン」は「アルジャーノンに花束を」、「第一夜」は夏目漱石の「夢十夜」の中にある「第一夜」をもとに作られた曲です。

それぞれ元のお話があるので、新たにというより、ぽんのように組み合わせてみました。
どんだけヨルシカ好きなんだ(´ー`*)




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