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お菓子作りはどこか幸せの匂いがする。【xuさん企画】

子供の頃、母がお菓子を作ってくれたという記憶はない。

うちが質素な暮らしをしているのは、子供ながらわかっていた。母は内職をしたりして一生懸命やりくりしていた。新鮮ながら安い物を買い、物はなるべく長持ちさせる。

作った方が安上がりかもしれない。
しかし、家には父方の祖母が住んでいる時期もあり、そんな余裕はなかったと思う。

私にとってお菓子とは、買ってくるものだった。
ただ、子供が目を輝かせるようなカラフルなパッケージは、時々買ってもらえるご褒美で。普段は大袋にたくさん入っている、お煎餅とか茶色っぽいものがメインだった。


姉が社会人になると、時々クッキーを作ってくれた。たいていプレーンで、丸くて、素朴なクッキー。時折、市松模様のアイスボックスクッキー。

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焼きたては温かく、ふんわり甘い匂いが家中に充満する。その匂いに包まれながら、ほんのりまだ温かいクッキーを口に運ぶ、至福のひとときだ。


大人になって、結婚して、子供ができるようになると、毎日ご飯を作らないといけない。その延長で、おやつも時々作るようになった。

小さな子供の相手をしながら作れるのは、ホットケーキミックスを作った簡単なクッキーや蒸しパンなど。それでも小さい娘は喜んで食べてくれるから、時間のある限り作った。




「で、誕生日にはケーキ作るの?」

と義母に言われたのは、まだ娘が小さい頃。


義母は料理上手で、誕生日にはいつもケーキをスポンジから焼き、本格的にデコレーションした誕生日ケーキを作る。ケーキはいつも買ってくるものだと思ってた私は、家庭によって随分違うものだなぁ、すごいなぁ、と呑気に構えていたところ、当たり前のように言われて、

「え、ええっ!?(;゚ω゚)」

スポンジすら焼いたことがないのに、いきなり誕生日ケーキ…?:(;ˊ꒳ˋ;):


この「作るの?」には、ニュアンス的に「当然作るんだよね?」という含みがあった。一応嫁という立場なので、こういわれたらもう作るしかないのだ。


私は数日後の娘の誕生日にむけて、スポンジの練習に励んだ。

しかしこれが思ったよりもハードだった。
本を買ったりクックパッド見たりしても、どうしても膨らまない。コツは書いてある。同じようにやっている。だけど、何度やっても出来るのは、平べったくて、甘くて、まるで固めのカステラ。

もう、なんで??ヾ(・ω・`;)ノ


涙目になりながら、ようやく少しだけ膨らむようになったのを2枚焼き、それを重ねてケーキにすることにした。

本来なら、1枚ふんわり焼いたスポンジを2枚または3枚にスライスする。それを1枚そのままに、ギュッと凝縮させてるものだから、やたら甘くて弾力があった。

お店のようなケーキを作れる義母の前に出すには、ちょっと恥ずかしい。だけど「作ります!」といった手前、下手でも持って行かなければならない。幸いホイップクリームと苺を使えば、デコレーションはなんとかなった。「まあ初めはこんなもんだよね」という感想を頂いた。


それから、誕生日ごとにスポンジを焼いた。
というか、なぜかケーキは私の担当みたいになっていった。

旦那の誕生日、子供たちの誕生日。義母のような美味しいケーキには遠いけど、作るたびにコツをつかみ、ちょっとずつ上手くなる。

作った当日、疲れ切ってトイレで吐いてしまったこともあった。作るのは楽しかったが、それくらい体力と精神をすり減らした。

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娘が12歳のときの写真があった。アレ、今見ると生クリームが変だ(*ノωノ)ハズイ


だんだん他のお菓子も、少しずつ作るようになった。

相変わらずホットケーキミックスを使った手抜きレシピだけど、ホットケーキミックスって結構なんでも作れる。クッキーも、ロールケーキも、ホールケーキだって。


あんなに、

工工エェ━Σヾ(・ω・´;)ノ━!!!!

って思ったケーキ作り。

作らざる得ない状況だったとはいえ、
できるようになってしまえば楽しくなる。


チャレンジして成功した経験は、人を成長させる。

お菓子作りは、自分のためじゃなくて人のため、子供たちのため。

そうじゃなきゃ、きっと作らなかった。誰かのためのパワーってホントすごい。



もうすぐ、ハロウィンがやってくる。

最近は子供たちも大きくなってやってないけど、ハロウィン近くなると、玄関にかぼちゃの置物やランタンを置き、あちこちの壁にオーナメントなどの飾りを付けて歩く。

ハロウィンデザインのお菓子をたくさん買っておいたり、かぼちゃやオバケのクッキーを作る年もあった。この作る工程も楽しいけど、子供たちがハロウィンの飾りをつけた部屋で、食べて笑顔になるその時間が好きだった。

誰かの笑顔のために、頑張れること。
頑張ったこと。
この記憶はきっと消えない。

そしていつか心が挫けてしまったときも、
こんなこともあったねと思い出し、
私の心の支えとして積み重なっていくだろう。
子供たちの心にも、
思い出として重なっていくといいな。

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