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Recommendisc'02

2002/3

JEL
Sympathy For The Beat. SP1200の音色とトラックのシンプルな構造に。
FAT JON
FIVE DEEZインスト盤を含むインスト・ヒップ3連発。丁寧なグルーヴでジワジワと浸透。
ANTI NY
アンチ!アンチ!アンチ! ニューヨーク・アンダーグラウンド7周+リミックス5周。
MORE DUB INFUSIONS
レゲエじゃないダブを聴きたいという要求に応えたベルリン・コンピ。
MUSIC INSPIED BY THE FILM “SCRATCH”
コスリにreverbをかけたビルラズウエル、総勢6組の’Rockit’は2ちゃんによる祭り。
“SECONDHAND SOUNDS” HERBERT REMIXES
2枚組全21リミックス集。実直な男による堅実な仕事ぶり。カットアップ・ハウス。
“FEEL IT” KITTY WINTER GIPSY NOVA
極めてフリーソウルな内容、テクノ以前のフュージョニックなシンセが新鮮。
“LES FLEURS: ANTHOLOGY” MINNIE RIPERTON
天まで歌い過ぎシンガー、EMI-UK監修のベスト。4Heroもカヴァーした表題曲は名曲。
“ZAPP” ザップ!
「気分はザッピー(=邦題)」電撃のデビュー作(=帯コピー)。
“FUNKY GOOD TIME: THE ANTHOLOGY” THE J.B.’S
Back to the Basic. 生演奏によるグルーヴ&ブレイク&ループ。充実アンソロジーx2。
“LOVERS LIVE” SADE
Hip Hopはハード過ぎて苦手という米黒人に愛される音楽の力。過剰な演出はナシで。
“MULHOLLAND DRIVE” ANGELO BADALAMENTI
凡庸なアメリカン50’sオールディーサウンドがリンチ・サントラでは常に新鮮に響く。

teezee(以下、T)「まずAnticonの流れでJel、この人もシンプルですよね」
Riow Arai(以下、R)「やはりインストHip Hopというのは求めてて、さっきのPete Rockのやつとか、要するにビートメイカーだよね、この辺は。Fat Jonとかも」
T「でもFat JonとJelだとかなり趣きは違ってきますよね」
R「くるんだけど、自分は並列で聴けるというか。ビートメイカーとして聴くってことだから、ヴァリエーションとして全然聴けるんですよ」
T「Fat Jonは凄く作風が広いっていうか、この中だとMaurice Galacticaで4つ打ちをやっていたり、その後ヨーロッパに行ってPoleとやったりとか」
R「それで今はエレクトロニカの人とやったりとか」
T「あとMore DubInfusions、これはJazzanovaのレーベルから出てたと思うんですけど、これも現在のダブの面白いところを集めたコンピで。既にレコメンに挙がってるPoleとかの流れとレゲエダブの流れをまとめてる感じで」
R「次が最後のターンテーブルシリーズ(笑)」
T「これは”SCRATCH“っていう映画のサントラですよね。これはRock Itのリメイクとか」
R「非常に下らないんだけどね(笑)」
T「それからDr.Rockitは既に出ましたが、Herbertのリミックス集、この人はリミックス多いですよね。ボーカルものも多いし」
R「だからこのコンパイルはお得かなと」
T「通して聴いてまとまり感もありますしね。あとこれは新譜というか旧譜というか微妙なとこですけどAnti NY」
R「これはまさに僕のレコメン的内容というか、NYアンダーグラウンド当時のやつとFunkstrungとかが入ってくるっていう流れを1枚にしたっていう」
T「ですね。この後のPlaygroupとかの流れも出てるっていうか。あと新譜はSadeですけど、これは定番というか」
R「Sadeは久々の新作で」
T「”Mulholland Drive“のサントラもこの頃出た感じですかね」
R「そう。映画が良くて」
T「このAngelo Badalamentiに関しては何か思い入れはありますか?」
R「まーDavid Lynchの映画といつもセットだから。Twin Peaksのサントラは有名じゃないですか」
T「あとはKitty Winter Gipsy Nova、これはフリーソウルの流れでしょうけど、リズムの面白さとかが出てるところですかね」
R「フュージョンっぽいし、シンセも入ってるし、いわゆるまったりとしたシンガーソングライター系の音ではない」
T「そしてMinnie Riperton」
R「これは王道過ぎましたね」
T「割とこの辺の女性ボーカルものとかはKitty Winterとも繋がるし、アライさんの好きな路線の1つではあるという。それからZAPP、これはリアルタイムで思い入れがある感じで?」
R「大好きというわけじゃないんだけど、基本っていうか」
T「JB’sとかはプレイヤー的な耳で聴く感じですか? ドラムを聴いてしまうみたいな」
R「そうそう。でもトラック作る上においてもグルーヴのお手本として」
T「これは学生時代にドラムをやってる頃から聴いてるような。こういうファンクって90年代後半にネタって感じで聴いてる流れがあったと思うんですけど、2000年代に入ってからファンクをネタとしてじゃなくて曲として聴くみたいな流れが出てきてるかなと」
R「それはわからないけど。僕は元々曲として聴いてるんでね」
T「この後のレコメンで出てくるKeb DargeのNew Master SoundsとかQuanticとかやってること、それに対してDJ ShadowやCut Chemistがやってることが段々この位の時期からファンク7インチを集めてって、昔のファンクの再燃じゃないですけど、昔の生演奏スタイルのバンドも出てきてっていう辺りの再評価が出てきてるのかなと」
R「それはわかるけどね。だけど前も言ったけどジャンルで丸ごと好きっていうのはないから、ファンクだったらいいっていうのは絶対なくてJBが好きなんですよね(笑)」
T「特にこの頃のドラマーが好きだったとか」
R「そうそう、バックメンバー含めて」

2002/6

EL-P
ソロ"FANTASTIC DAMAGE"とCANNIBAL OXインスト盤。狂牛ステーキは重量級。
“PERSONAL JOURNALS” SAGE FRANCIS
或日のアンチコン議事録を米片田舎のホームステイ先で入手し、邦人として監禁される。
“SOULSHINE” CAM
DJがとれてアブストラクトが薄まり、ただのソウルになってしまったが、愛情は深し。
“MY WAY” AKUFEN
毎朝ラジオ音声をガラスの破片で切り裂く習慣が実り、見事にハウスを蘇生。ほぼ全1曲。
“TEXTSTAR” FARBEN
JANGRAMMとも微妙に違う質感で再び驚かせ、波形ルーピングの面白さを突き付ける。
SND
飽和したエレクトロニカから鱗のミニマリズム、退屈か否かは体内の毒素の量で決まる。
“EIN KONIGREICH FUR EINE HANDGRANATE” BEIGE
ジャケはベビー、ビートはイカついファンカニカ。幼児虐待はせずヒューモアに育みます。
MISSION THREE -ESTABLISHING ELECTRONIX NETWORK-
伊NatureRecordsコンピ。EUエレクトロニカ工場で130度2秒間の高温殺菌処理。
“REMEMBER TODAY” BORNEO & SPORENBURG
温室育ちの新鋭エレポップ(インスト中心)。たおやかなモジュール系、潔い全8曲。
DISCO NOT DISCO 2
NY地下倉庫の左翼ディスコパーティーは実にhot! 最後にTHIS IS CLASHが乱入浴。
“STRAVINSKY, CAGE & REICH” MICHAEL TILSON THOMAS
ループ楽曲ライヒ「4台のオルガン」の緊張感あるミニマル生演奏がたまらない。
“CORRELATIONS” ASHRA
79年、阿修羅がテクノポップ化を試みたが、酔いしれギターが止まらなくなり計画は凍結。

T「これはまたアメリカものとヨーロッパものの新譜が拮抗していってる感じですか。アメリカに関してはアンダーグラウンドHip Hopですね。EL-PはCompany Flowの流れから追って聴いてたっていうところで、Company Flowの時期よりEL-PのソロはCannibal Oxの作品の方がよりらしさが出てきてるっていうか、Def Juxの。ノイジーなHip Hopっていうか」
R「これは僕の音楽のイメージと近いとは言われた」
T「どっちかというとSage Francisの方が意外な感じがするんですよね」
R「これもAnticon流れで、それ以外に理由がないんだけど(笑) これはこれでトレンドですから」
T「(笑)Anticon周辺ということで」
R「ここでやっとCamが来ますね」
T「出ましたね。Camの場合はDJ Shadow、DJ Vadimと並べて語られる中でアライさんが一番好きなCam、それはヨーロッパ的なコード感とかムードが好きなんですかね」
R「特にオシャレな感じはしないけど耳に馴染みやすいというか」
T「このアルバムはちょっと音楽よりになったというか」
R「かつてのアブストとかじゃなくてソウル寄りでしたね」
T「それからクリックものでハウスの流れでAkufen、これは手法的には新しかったカットアップハウスっていうのが」
R「カットアップとかチョップというのはそんなに驚かなかったけど」
T「4つ打ちに乗せてというのが」
R「逆にPrefuseよりもダイレクトに伝わった部分というのはあると思うんだよね。それでAkufenの方は割と一般の人っていうか普段こういうのを聴かない人が聴いたというか」
T「それまでのクリックとかってミニマルとかはイベントでもかかってもワッと踊る感じじゃなかったのが、Akufenの’Deck The House’辺りはかかると盛り上がるっていうか、上がる曲として捉えられてたから、そこが新しかったというか。そしてFarben、SND、Beige、この辺は何か共通する流れがあったんですかね」
R「実はAkufenみたいなのはすぐ飽きちゃって、僕としてはFarbenだね」
T「これは音色的に気持ちいいっていうか」
R「クリックのデジタルの感じじゃなくて同じ手法でローファイというか」
T「クリックを聴いて和むじゃないですけど、そういう感覚がFarbenとかにはあるような」
R「あとコード感とかが凄くいいんですよ、これ」
T「それに比べてSNDとかBeigeはもっと凝ったことしてる感じですかね」
R「いや、SNDは超シンプル。殆どループっていうか同じことを繰り返す。ミニマルっていうか風鈴をずっと聴いてるみたいな感じで変わらない。変わらないけど聴き飽きないっていうか」
T「どっちかというとOvalとかの流れですかね」
R「それもあるし、それに加えてクリック的な手法でビートらしきものもあるというか。これは凄い好きですね」
T「詰め込み過ぎの一方でスカスカというか」
R「それを極めた感がありますね。Farben、SNDはいまだに好き」
T「Beigeの方はもっと打ってる気がするんですけどね。ブレイクコアまでいかないけど、結構ドシャドシャで、この並びからすると異色ですかね」
R「いや、この時期のエレクトロニカの新譜系としてはいい流れだと思うけど」
T「(笑) レコメンの前年がHip Hop、ダブって感じのとこにガーッといってるとこからするとヨーロッパ系の新譜に耳がいってるかなと」
R「エレクトロニカ/音響系でまた好きなやつが出てきたって感じで」
T「これも新譜ですかね、Nature Records」
R「クリック系を始めとして竹の子の様にアーティストが出てきたんで、その一部ですね」
T「Borneo & Sporenburg、これは新譜ですか」
R「これは偶然買ったやつで。これは他で取り上げてるのを見たことないんで、どういう文脈で語ったらいいのか。でもこれはアタリでした」
T「エレクトロニカっていうよりかはシンセを使って弾いてるって感じの、聴いてて気持ちいい感じの」
R「もうこれ手に入らないかも」
T「今回は新譜がかなり多いというのが特徴ですね」
R「結構アタリの時期でした」
T「旧譜的なとこでいくとコンピですが、Disco Not Disco2、前のAntiNYもそうですが、NYアンダーグラウンド、ニューウエイヴディスコっていう流れですよね。’This Is Radio Clash‘はアライさんの好きな」
R「10代の頃から好きな(笑) Clashで唯一好きな曲、これはDJでもよく」
T「かけてますね(笑) STRAVINSKY, CAGE & REICH、これはこの時期に買ったものですか?」
R「再発された感じですね。まー現代音楽もたまには入れておこうかなと(笑)」
T「あんまりその辺はレコメンで出てこないですものね。で、最後にAshra。さっきのManuel Gottschingに続き」
R「ジャーマンは特に好きじゃないんだけどManuel Gottschingは好きなんですよ。深入りもしてないけど」
T「こういうのは1曲が無茶苦茶長いっていうかアルバムが何曲かで出来てるみたいな感じじゃないですか」
R「これはその辺の時期を脱してテクノポップっていうかニューウイエヴ化してる感じが面白くて」
T「でもついつい弾き過ぎちゃうみたいな」
R「その辺がバカっぽくて面白いっていう」

2002/9

“THE MEAT & OIL EP” JEL
4曲入り。よりSPの質感充満でハムソーセージ偽装事件は未決、次回へつづく。
“THE MAGNIFICENT” DJ JAZZY JEFF
プロデューサー気質からかゲスト満載で散漫だが、こゆいゆるいビートは健在で。
“DEADRINGER” RJD2
あの爆撃の粉塵の中から大技小技で攻めまくる血だらけの殉職ビート。
“INSTRMNTL” DABRYE
エレクトロニカかヒップホップかなんてどうでもいいんじゃん、とのたまう弱冠22歳。
SYSTEM
3人組エレクトロニカユニット。低音なしの低温で熟成されたライト・ダブの味わい深し。
“ARRANGE AND PROCESS BASIC CHANNEL TRACKS” SCION
トレゾー200バンハテクノノミックスシィーディー。使用ソフトはAbleton Live。
“GRADATIONS” ELECTRIC BIRDS
ミルプラトー/エレクトロニカ。さしたる特徴もないが、聴けるうちに聴いておきたい。
“RAINDROPS, RAINDROPS” KARIN KROG
ノルウェーの異色ジャズシンガーのアンソロジー。ジャンルを超えた希有なアレンジメント。
“DAP-DIPPIN’ WITH. . .” SHARON JONES AND THE DAP-KINGS
再発じゃなく新譜。フェイクJB’sによる演奏/音質含めたバーチャルソウルレヴュー。
“FROM LEFT TO RIGHT” BILL EVANS
エレピと生ピの誘いはあくまで空港かホテルのラウンジ。ソファに腰を埋め、もう動けません。
“I LOVE ROCK N’ ROLL” JOAN JETT AND THE BLACKHEARTS
81年、愛の言葉とロックンロールはシンプルに。
“AUDIO SPONGE” SKETCH SHOW
3分の2でショウ。ローマニッシェス・カフェが構想20年を経て結成。not CCCD.

R「あのーまずレコメンの前提として、ここに挙がってるものが時代の全部じゃないっていうことを一応断りとして」
T「なるほど、でも2002年とか言われてもわからないですね。何か年間ベストとかそういうのが載ってる雑誌で世間的にはこうだったけど、アライさんが聴いてたのはこうだったみたいなのを照らし合わせれば良かったですね。今回も新譜が半分以上入ってきてる感じですね。Jelは結構追って聴いてますね」
R「ビートメイカーだから」
T「あとやはりSPを使ってるっていう意味で一目置いてしまうというか。あとJazzy JeffのBeat Generationからのアルバム。これはもう少し色んな人を取り入れてやってるっていうか」
R「だからそれまでのBeat Generationの流れからするとあんまり面白くなかった」
T「インストHip Hopでもないですしね。一方ここで出てくるのがRJD2とDabryeで、RJD2に関してはその後も名前が出てくるんでアライさんの中で評価が高い?」
R「ビートメイカーっていう部分でもそうだし、変にジャジー過ぎないし」
T「鳴きもない、鳴き過ぎないみたいな、そこが良かったんですかね。このアルバムが出た時はShadowフォロワーっていう言われ方が多かったと思うんですけど、後々違う路線っていうか、この人はファンクとかソウルの匂いがしないっていうか、どっちかというとサイケデリックロックというか、そっちの要素が強いのかなっていう気がしますね」
R「ネタ的にはそういう感じなんだろうね」
T「このアルバムはDef JuxなんでEL-Pの後押しで出てきて、ラッパーからも人気なんで、ラッパーのアルバムを丸々プロデュースしたりっていうのも多いんですよね。CamとかShadowとかと比べるとそういうとこが大きいのかなっていう」
R「このトラックでそれも不思議だけどね」
T「EL-Pとかああいうタイプのラッパーからは好かれてますね。そしてDabrye、この人もポストPrefuseみたいな言われ方で出てきましたけど。Dabryeもその後にレコメンでも出てきますけど、このアルバムはまだ個性を出し切ってない感じもしますね」
R「いや出してると思うよ。これセカンドなんだよね。サウンドのバランス的にはいいんじゃないかな、エレクトロニカ聴いてるのかHip Hopを聴いてるのか」
T「その辺の湯加減が微妙な。これは僕はわからないんですけど、System」
R「これはscapeかな。それでOpiateとかがやってるユニットで」
T「あとScion」
R「これはBasic Channelの音源をリミックスっていうかDJミックス」
T「Ableton Live、この辺からこのソフトが出てきて、そういうのを使う人も増えてきたかなと。次がElectric Birds、これのコメントを読むとエレクトロニカの熱が一時期の90年代ラウンジブレイクビーツ熱がカーッと上がってきて冷めてきてるの同じ感じが(笑)」
R「もういっぱい出てくるとどうでもよくなるっていうか」
T「コメントを読むと熱のテンションがわかってきますね(笑)」
R「これも悪くないんだけど(笑)、言うことがないんだよね」
T「まーこの盤を聴いてくれと(笑)」
R「こういうコメントっていうのはメディアではないから」
T「このタイミングでアライさんが聴いてる盤を挙げておくことが大事ですからね」
R「後々思い出すしね」
T「自分でもこの時期はこれ聴いてたって思い返せますよね。あとこれも新譜なんですよね、Sharon Jones And The Dap-Kings、これもさっき言ったソウルファンク7インチシーンの盛り上がりとリンクしてるような」
R「これもリンクしてるの? Keb Dargeとかはわかるんだけど。それでこれ挙げておいてなんだけど、結局音質含めて、ぶっちゃけ昔のソウルを聴いた方がいいけどね」
T「(笑) こういうものがこの時期あったよっていう、記憶として。それでいうとKarin Krogが入ってくるのも自然な感じがしますね」
R「これはフリーソウル的な流れっていうか」
T「今までのレコメンの並びからいっても自然な感じがしますね。このBill Evansなんかは先程のジャズギタリストのアルバムみたいにリラックスして聴くもので」
R「これまたRhodesだしね」
T「あとJoan Jett And The Blackhearts、これはなんでこのタイミングで入ったかという」
R「これは流れ的には80’s Classicなんだけど、これは愛聴盤でもなんでもなくて、Britney Spearsが当時これをカバーしたんですよ。そのネタを使って僕がトラックを作ったことがあって印象に残って、オリジナルを探したと」
T「特にロックンロールに思い入れはないと(笑)」

2002/12

“THE NO MUSIC.” THEMSELVES
Hip Hopの不良債権処理。銀行の借金は国が帳消し。addictive…!
“PHRENOLOGY” THE ROOTS
頭部の骨相をみて、その人の性格・運命を判断するHip Hop。意味不明の無音トラックあり。
 “SOUND EVENT” ROB SWIFT
実験的な前作から一転、本作はスクラッチビートで攻めまくる大サービスぶり。
“DIGITAL DISCO” V/A
force inc.コンピ。DIGITAL DISCOって要は今どきのハウス。クリックグリッチ周辺の。
“PARTYMIX VOLUME ONE” PLAYGROUP
非売品プロモオンリーながら堂々と発売。これでもかと繋がれる80’sビートの数々。
ANDREAS TILLIANDER
ミルプラトー。いかにもトロニカな音色ループの微細/微妙なグルーヴ感。
“ALPHABET” SILEX
ミニマル・アンビエント調。アナログモジュール感も程よく古臭く、程よく眠り。
KEB DARGE presents THE NEW MASTERSOUNDS
リイシューと思いきや2001年録音。誰が聴いても努ファンキー。音の歪みもなんのその。
“THE GOSPEL COMES TO NEW GUINEA” 23 SKIDOO
ニュー・ウエイヴ・インダストリアル・エスノ・ダブ・ブレイクビーツ・レアトラックス。
“DIDI” FERNANDO GELBARD
アルゼンチン’75年作。Azymuthライクなオールド・フューチャ・ジャズ。
“EDEN” EVERYTHING BUT THE GIRL
1984年秋、カフェ・ミュージック初体験。
“OUT OF SEASON” BETH GIBBONS & RUSTIN MAN
ボーカリストとしての怨念を嘔吐し、世界観は完璧。が、しかし何かが物足りない。

T「ここではもうアメリカとヨーロッパが半々でHip Hopとエレクトロニカ、クリックという感じで。アメリカの方からいくとThemselves、Anticon周辺は意外と長く聴いてますね。Anticonはアライさんのイメージからすると遠い感じがするんですけどね」
R「惰性で買ってたのかな、この辺は(笑)」
T「Anticon周辺はリリシストというか」
R「全然メランコリックだよね、今考えると」
T「大体そういうところで評価されてた感じなんですけどね。僕もAnticonは聴いてたんですけど、そんなにハマれなかったですね」
R「皆何かを探してたんじゃないですか、求めてたっていうか、それをAnticonに全部期待しちゃったんだろうね(笑) この人脈の中に何かあるんじゃないか的な」
T「今Anticon周辺の音で余程思い入れがないと今聴き返そうって盤は正直なかなかないかなと。Rootsとかは今聴き返してもその時期その時期で面白かったりするんですけど。Rootsもこの辺からかなり独自の方向になってきた感じですよね。結構これはアタックが強かったっていうかロックっぽかったイメージがあります」
R「いつも一応試聴するんだけど、確かにドラムがグッと来るのが好きなんで」
T「かなりソリッドっていうかガツガツしてる感じがしますね」
R「Rootsはいつも出たら買うとまでは思ってないんだけど」
T「聴いたら買わずにはいられないというか。そういう意味でRootsはフェイヴァリットアーティスト(笑)」
R「あんまりそういう意識はないんだけど、多いよね、載せてる数が」
T「無茶苦茶聴いてますよ、ほぼコンプリートみたいな。そしてこれまたRob Swift、これも意外と追ってるっていう」
R「これはマイナーなレーベルから出て話題にはならなかったけど、これは普通に聴いていいですよ」
T「ターンテーブリストの作品というよりかは単に作品として上げていく方向で。それでヨーロッパものだとDigital Disco、これはForce Incのコンピですね。これはクリックが歌ものになってきた時期ですよね。凄いメロディが強いっていうか」
R「Akufenとかそういう流れを経て欲を出してきたっていうか」
TLuomoとかここから出てきましたね。そしてPlaygroupのミックスCD、これはFlying Lizardsとか入ってるやつですかね」
R「80’sが鬼のように入ってるんだけど」
T「ある意味アライさんの80’sMixに近い」
R「近いっていうかさらにそれを」
T「ダンサブル?」
R「それもそうだけど凄く細かく入ってるんだよね、1曲というのがわからない位入ってるから」
T「Playgroupはこの1~2年前に出てきたと思うんですけど、最初凄い80’sっぽかった。Roddy Frameとか参加してましたね、あとSlitzを引っ張り出してきたりとか、80’s人脈を引き連れてきてKC Flightとか。後の80’sノリの流れを90年代後半にいち早くやってたなっていう。このTrevor Jacksonは元々Underdog名義でHip Hopをやってたんですよ。その頃は地味で地味で全然売れなかったですよ、Massive Attackのリミックスとかやってたんですけど、90年代後半になってブレイクしたなと」
R「でもそういう80’sリヴァイバルとかエレクトロクラッシュ的なものは全然ピンとこなかった。それだったら80’sを聴いた方がいいやって、散々聴いてるわけだから」
T「そうですね(笑) この選曲の仕方が面白かったっていうところですかね。それでMilleplateauxのAndreas Tilliander、これは結構メロディアスとか?」
R「まー微妙にだけどね」
T「リスニングテクノの延長って感じですかね。あとSilex」
R「これは4つ打ちなんだけど、そんなに派手じゃない感じで」
T「あとPortisheadのBeth Gibbonsのソロ、これはだいぶレイドバックしてるというか。この人が歌ってるだけで世界が出来てくるっていうか」
R「そうですね」
T「しかし物足りないっていうのは」
R「ビートの部分。でもそれの人がいないってことだから」
T「そして限りなく旧譜に近いKeb DargeのNew Mastersounds、これも新しいものを聴くって感覚よりかはファンク的なものを聴く感じで聴いてるんですかね」
R「そう」
T「これはBBEとかのファンクのコンピの流れで聴いたものですか?」
R「いやそうじゃなくてさっきのDap-Kingsの流れで聴いたものかな」
T「この頃は2000年代のファンクバンドが出てきた感じですよね。レコ屋でもプッシュしてましたね。そしてまたちょっと意外なインダストリアルもので23 Skidoo」
R「これは80’sだけど全く知らなかったやつで」
T「逆に今の耳で聴いたものっていうか。これはこの時期のニューウエイヴコンピに入ってたりしましたね」
R「割と再評価的なことだよね」
T「これは僕知らないんですけどFernando Gelbard」
R「これはフュージョンのレア盤だと思うけどCD化されて、Azymuthチックだったというか」
T「そういうヨーロッパジャズの復刻とかもチェックしてたと」
R「この時期はそうでもないんだけど、たまたまbounceのレビューでAzymuthっぽいって書いてあって似てるなと」
T「そしてEverything But The Girl」
R「また80’s Classicですね、ネタがなくなると(笑)」
T「(笑) これはリアルタイムで聴いてた盤ですか」
R「そうです」
T「アライさんとネオアコっていうのはなかなか結びづらいところなんですが」
R「そんなにいわゆるネオアコ好きではないですよ」
T「ただ割とポップスとしてネオアコっぽいとかソフトロックっぽいものはずっと好きな路線ではあるという」
R「だから80’sの中にも色々あってエレクトリックなものだけが好きなわけじゃない。これなんかはアコースティック路線で。それで最初のシングルがボサノヴァなんだけど、ボサノヴァというのを知らずに聴いてた時代、そして今のカフェミュージックに繋がると」
T「あとSarahとかelとか、これはCherry Redですけど、その辺は聴いたんですか?」
R「その辺はちゃんとは追ってないです」
T「Flipper’s世代はその辺、後聴き勉強で結構聴いてる感じがするんですよね」
R「あとそのFlipper’s以前というか、要するにそれを作る土壌っていうのが、そこにグワーッとあったわけですよ、80年代に。僕はどっちかというとエレクトロな方を聴いてたから、そんなに深追いはしてないですけど、並列でそういうのがあったんで抵抗はないというか」


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