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BEHIND THE MASKの歴史

① BEHIND THE MASK (SEIKO Quartz CM version) / 坂本龍一 (1978)
1978年、最初はSEIKOのCMのために坂本龍一が作曲、次にYMOの紀伊国屋ホールLIVEにてYMO版として再構築して演奏、これはコードリフやクリスモスデルの詞を使ったボーカルパートをCM版のメロを元に坂本龍一と高橋幸宏が一緒に考え、後にそれをレコーディングして『SOLID STATE SURVIVOR』に収録、
② BEHIND THE MASK (LIVE AT KINOKUNIYA-HALL 1978) / YELLOW MAGIC ORCHESTRA

③ BEHIND THE MASK / YELLOW MAGIC ORCHESTRA (1979)
ここからクレジットはクリスモスデル/坂本龍一/高橋幸宏に、と長年思っていたが『SOLID STATE SURVIVOR』のレコードを見たら、

『ソリッドステイトサヴァイヴァー』のB面

クリスモスデル/坂本龍一となっている、しかしジャケ裏のクレジットではクリスモスデル/坂本龍一/高橋幸宏となっており、もう既にややこしかった(現在のJASRAC登録はクリスモスデル/坂本龍一

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『ソリッドステイトサヴァイヴァー』裏ジャケ

④ BEHIND THE MASK / MICHAEL JACKSON (1982)
その後マイケルジャクソン『スリラー』をプロデュース中のクインシージョーンズがアルバム収録曲の候補としてこれを選び(マイケル自身がYMOを知ってて選んだ説もあり)、マイケルによる新たな作詞部分とボーカルパートを追加したカヴァーヴァージョンを制作、マイケル版はクリスモスデルの歌詞は残しつつも、ボーカルメロを一から再構築したため、マイケル版以降は坂本龍一/クリスモスデル/マイケルジャクソンというクレジットに変更になったと思われる、しかし『スリラー』に収録する際の版権の分配についてマイケルサイドが出版権(作詞作曲の著作権とは別)を100%譲れという強引な条件を出し、坂本サイドがそれほどいうならマイケル版がどの程度変わったのか、音源の確認を求めたが、リリース前の音源は渡せない(日本に送れない)ということで交渉は決裂(当然この時点では『スリラー』がどの程度売れるのか予測出来ていない)、よってマイケル版「ビハインド・ザ・マスク」は『スリラー』に収録されずにお蔵入りとなった

そして『スリラー』は発売されてから世界一の大ヒットアルバムとなり(現時点での世界一はイーグルスのアルバムらしい?)、悪い条件でも収録されれば良かったと坂本サイドを後悔させることになる、私がこの話を知ったのは84年に出版された『長電話』という本の注釈であったと記憶、『スリラー』大ヒット後に坂本龍一や高橋幸宏がラジオ番組でこのエピソードを語ることもあった

⑤ BEHIND THE MASK / GREG PHILLINGANES (1984)
お蔵入りになったマイケル版「ビハインド・ザ・マスク」はマイケルのレコーディングやLIVEで活躍したキーボーディスト・グレッグフィリンゲインズのアルバムに収録されてシングルカット、

⑥ BEHIND THE MASK / 坂本龍一 (1986, 87)
これが坂本龍一のサウンドストリートで85年5月にオンエアされ、このグレッグ版によってマイケルが作った歌詞付ヴァージョンが事実上解禁の流れになり、翌年行われた坂本龍一メディアバーンツアーでの「ビハインド・ザ・マスク」はYMO版ではなく、グレッグ版を踏まえたリアレンジで演奏、さらに翌87年NEO GEOツアーでも同様のアレンジで披露され、その時のツアーメンバーでレコーディングした12インチをリリース

坂本龍一_behindthemsk
ライブヴァージョンとあるが、実際はツアーメンバーによるスタジオ録音

⑦ BEHIND THE MASK / ERIC CLAPTON (1986)
さらにグレッグフィリンゲインズに続いてエリッククラプトンがアルバム『AUGUST』(プロデュースはフィルコリンズ、グレッグフィリンゲインズも参加)でカヴァー(よってグレッグ版よりクラプトン版の方が有名か)

⑧ BEHIND THE MASK / YELLOW MAGIC ORCHESTRA vs THE HUMAN LEAGUE (1993)
さらに、93年のYMO再生が発表された頃、その数年前からお蔵出し音源やリミックス企画を乱発していた俗に言う「アルファ商法」のドサクサでリリースされたHuman Leagueのカヴァーもあった

⑨ BEHIND THE MASK / MICHAEL JACKSON (2010)
そして、ついに!マイケル死後の2010年に約30年の時を経てマイケル版がリリースされたのだが、『スリラー』レコーディング時の音源ではなく、トラックは新たなものに変わってしまった、

自分としては当時のお蔵入り音源のママで聴きたかったのであるが、デモ段階で完パケしていなかったのかもしれないし、あくまでマイケル死後の新譜ということで、今のチャートに合わせたサウンドにしたかったのかもしれない、いずれにせよ、マイケル版『スリラー』お蔵入り音源に1番近いのはマイケルもノークレジットで参加しているグレッグ版となるのではないか、どっちみち『スリラー』にグレッグフィリンゲインズも参加しているし、トラックあるいはアレンジが流用された可能性は高い、要はグレッグ版のオケにマイケルのボーカルが乗れば、幻の『スリラー』ヴァージョンとなる(はず)

これで話は終わらなかった...
そもそもクリスモスデルが「ビハインド・ザ・マスク」の詞をYMOより先にBOW WOWに渡しており、「ビハインド・ザ・マスク」なる曲が77年のアルバム『CHARGE』に収録されている、同名異曲ながら、これが元祖「ビハインド・ザ・マスク」ということになってしまうが、何故一度BOW WOWに採用された詞をクリスモスデルは再度YMOに提出してしまったのか、YMO版と全く同じではないにしろ、既にBOW WOWが使った詞だと知っていればYMOも使わなかったのではないか?
⑩ BEHIND THE MASK / BOW WOW (1977)

以上は『YMO 1978-2043』を読む前に書いたもの(初出Instagram)に加筆したものだが、第13章「ビハインド・ザ・マスクの軌跡」にて、ここに書いてあることに対する補完情報があったので、興味がある方は一読を

▶︎追記
そして、再びついに!
マイケルジャクソン『スリラー40周年盤』のボーナスディスクに「BEHIND THE MASK」のレコーディング時のデモが収録されるというアナウンスがあった

▶︎追記その2
スリラー<40周年記念エクスパンデッド・エディション>』リリース後

グレッグフィリンゲインズヴァージョンに近いものを予想したが、YMOのレコードに合わせて歌って少し音を足しただけのリアルなデモ、アルバム収録に向けて完成させるべく、ここから先へ進める前にYMOサイドにコンタクトをとったが、前述のように交渉決裂、アルバム収録は見送られ、お蔵入りとなる
おそらく近年、YMOの原盤をソニーが管理することになったので今回収録が可能になったと思われます、2010年の時はまだそうではなかったので、新たなトラックを作る必要があったのかと

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