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田舎だからこそのイノベーション。菌本位性パン屋「タルマーリー」の地域内循環。

前回の記事の講義では、木材を利用したパン工房の話がありました。
ふと、4年前鳥取の天然酵母のパン屋「タルマーリー」を訪れた記憶を思い出し、せっかくなので当時(2018年)の文章で紹介いたします。
※現在は内容やメニュー変わっている場合あるかと思います。

ちなみに、オーナーのイタルさんは「水が綺麗でないと美味しい物も作れない、そのためには地元の環境資源や林業に目を向けることがとても大事。密接にパン作りと関係している。」と仰っていました。

林業と食、食と自分、林業と自分。
どこか遠くにあるようなテーマでも、興味を辿ると意外な繋がりが見えてきます。

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以下からは、30.03.2018の文章です。

先週、一泊二日で鳥取にあるタルマーリーという天然酵母のパン屋さんに行ってきました。
このパン屋さんは現代では考えられないような非効率な方法でパン作りをされていて、でもそれが実はとっても先進的だったりして何とも不思議で面白いんです。


天然酵母菌の自家採取にかけるこだわり。

オーナーであるご主人イタルさんの著書『田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」』によれば、天然の菌が採れる環境のある土地を探し求め、3.11の震災をきっかけに千葉県から岡山の勝山に移住したという。
(2015年の6月に現在の所在地である、鳥取県智頭町に移転。)

驚きなのは、パンを発酵させる酵菌まで自家培養されているとか。正真正銘の天然酵母です。
菌って、つまり腐ってるわけでカビとほぼ同じなわけで、
それを自分の舌を使って感覚を頼りに識別していくなんて、プロ意識が高いというかとってもマニアック。笑

そんな天然酵母菌を採取するため、イタルさんと奥さんであるマリコさんのこだわりは並大抵ではなく。
その土地の自然栽培で作られた素材にこだわり、小麦も出来るだけ国産のものを、さらに自分達で製粉までしておられました。今は自家製粉は2.3割くらいの配合らしいのですが、これからどんどん自家製粉の割合が高まっていくみたい。


パンのお味は?


発酵に使われる酵母は全部で4種類。

ピール酵母
酒種
レーズン酵母
全粒粉酵母
それぞれ使う酵母の種類によって、パン自体の風味や香り、食感や甘さが違うみたい。
どれも風味豊かな個性あるパンだったけど、ライ麦パンなどサワー系のハードパンが好みなワタシとしてはイチジクとカシューナッツのパン・くるみのパンが素朴な味で好きだったな。


私たちは、併設されているカフェで結局開店前の9:00から約6時間ぬくぬくとゆっくりしていました。
(汽車の本数が少ないから、事前に調べることをおすすめします。)

カフェでは、旬野菜のとゴーダチーズ豆乳マヨネーズのサンドイッチと旬の野菜のピザ、蜂蜜とナッツのパン、そして野生酵母のビール(と和紅茶)を頂きました。

どれもとっても優しい味がして、タルマーリーに足を入れた瞬間ふわっと感じられる発酵の香りが口いっぱいに広がるあたたかいパンでした。


地域住民の方の意外な反応。

カフェヘビーユーザーの大学生である私にとっては、これ程こだわりのつまったパンやビバレッジを提供していて長居出来るカフェが家の近くにあるなんて何て羨ましい!と思います。しかし、意外にも地域に住むおばあちゃんたちにとってはピンと来ていないようで。

まずパンにしては高い、そして味も感動はしないらしい。確かにワタシの祖父母もあっまーい菓子パン大好きで、「これ美味しいよ!」と違うお店のパンを持って行っても、新しいものを受け入れるハードルが高いこと高いこと。


「自分たちが地域のためによかれと思ってやっていることが、地域の方に理解されづらい。」

そんな言葉をもらしていたマリコさん。
本を読むだけでは気付けなかった「タルマーリー」のリアルを垣間みた気がして、遠かったけれど実際に足を運んでみてよかったなと。


田舎の小さなパン屋からはじまる「循環型」社会。

今回私は持続可能な暮らしがどのようなものが見てみたいという想いから「タルマーリー」を訪れました。地域の素材にとことんこだわり、地域の生態系を守りながら、利潤の追究ではなく地域でお金が生まれ返っていく経済システムを創り出す「タルマーリー」。

パンを作る工程は昔ながらの手作業ばかりで本当に非効率。だけれども、もしかしたら本質的には資本主義の新しいカタチをいくとっても先進的な方法なのかもしれない。
そう思ったら、鳥取駅の近くでお店を構える「水越屋」のオーナーの「君たち、未来の社会を見たいなら鳥取を訪れて正解だよ。」という言葉にも何だか納得出来て。


マリコさんいわく、「私はパン屋はあくまでも手段であって、本当に実現したいのはその先にあるの。だから本当は私はパンじゃなくてもいい。」とのこと。

私も目の前の利益や手段に捕われるのではなく、目的意識を常に持ちながら生きられる大人になりたいなと思いました。


次の旅に向けて
新幹線で品川→姫路、特急で姫路→鳥取、汽車で鳥取→智頭→那岐
約半日という長旅の末辿り着いた、はじめての鳥取県。
鳥取駅の改札が人力なのは驚きました。
狩猟直後の鹿が吊りさげられているトラックが私たちの目の前を通って行った光景も衝撃的だったな。

「何もない 県」のイメージが強かったけれど、東京のストアに劣らない品揃えのオーガニックストア「水越屋」さんをはじめとして、店員さんの愛らしい笑顔が印象的な「Y pub&hostel TOTTORI」、豆腐チーズや豆腐シーザードレッシングなどお洒落でヘルシーな創作料理を提供する「TAO CAFE」など素敵なお店もたくさんありました。

探せば意外と見つかるものですね。

次はもう少し余裕をもって、鳥取砂丘なんかにも足を運んでみたいです。


30.03.2018


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