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7月のなまずねこ本記録

わたしの本棚、7月バージョンです。本当は全ての表紙やら背表紙の写真を載せたいところですが、なんせ図書館で借りているので全てが揃うことがなく…。残念!

📕羊をめぐる冒険/村上春樹

背中に星印のある羊を探す物語。探さないと君の未来はないと脅される始末だし、そんな羊の品種は実際に存在しません。北海道の寒い土地にたどり着き、雪が降り積もる手前まで羊を探す男。1ヶ月で羊を見つけ、彼の命や生活は守られるのかー。

村上春樹さんワールドが全開で、しばらく彼の作品を読んでいないと適応力がなくなり「?」が止まりませんでした。現実と非現実の行ったり来たり、これって夢なの?空想なの?という世界の広がりだったり。村上春樹さんの独特な世界観を堪能できる一冊です。

”羊を探す冒険”という主題ではありますが、著者がその裏に込めたテーマや意味合いがとても深い気がしてなりません。しかし、わたしの読解力や抽象化能力では、最後の結末も完全に理解できていない気がします。誰か、本書の味わい方を教えてください…。


📗雨夜の星たち/寺地はるな

お見舞い代行をシゴトにしている三葉ちゃん。人に興味がない、共感や同情をしない、察することや気遣いをしない。「あなた心あるの?」「あります」そんなやりとりが当たり前である彼女は、お見舞い代行が適職でした。三葉の扱いづらさや面倒臭さから、私たちが潜在的に他人に求めていることを浮き彫りにしていきます。

”常識で考えれば” や ”普通は” の言葉で括るようなこと(例えば、骨折した男が「喉が乾燥するな〜」と呟いたら、「飲み物を買ってきて欲しい」の裏返しであることなど)を、どれだけ他人に期待しているのだろう、と思ってしまいました。

言葉にしない期待や、わかるよね?という感情の強要をスルスルとかわす三葉をみると、自分の姿が少し醜く感じてしまいます。自分と逆の人間を見ると、自分の嫌な面に気づくというものでしょうか。本書は、三葉の面倒臭さ以上に読者のわたしも含む周りの人の生き方を、すごく考えさせられました。


📕手紙屋/喜多川奏

就職活動真っ最中の男性が、”手紙屋”とのやりとりで、社会に出ることや働くことに向き合っていく物語。手紙の数は全部で十通と決められている中で、「あなたの人生で実現したいことを実現することのお手伝い」をしてくれます。手紙屋が、男なのか女なのか?何歳なのか?など何もわからない中、勇気を持って文通を始めていきました。

就職活動を経験し、社会で働いている自分にも心に残ることや、今すぐにでも意識したいキーワードがたくさん詰まっていました。

大丈夫。あなたには、もっともっと他の人が欲しがる魅力がたくさんある。それを見つけて、磨いて、出し惜しみしないでどんどん周囲の人に提供してみよう。きっと思ってもみない、さまざまなものが手に入るはず。

周囲の人に対して、今までの経験からではなく将来こうあってほしいという称号を与える人になるだけで、あなたの人生は一転するでしょう。

収入や福利厚生、働き方などが気になるところに、新たな視点が優しくガツン!と脳内に入ってきました。そもそも、”手紙屋” という職業の設定がとても面白いです。転職や異動、キャリアについて悩んだ時に何度でも読みたい本だと思いました。


📗クスノキの女神/東野圭吾

「クスノキの番人」の続編。珍しく、図書館ではなく新刊を手に入れてしまいました。前作も、クスノキの持つ不思議な力ーー新月にクスノキに託した思い(預念)を家族が満月に受け取る(受念)ーー展開が興味深く、とても楽しく読了しました。個人的には、前作を超える感動が今作にはありました。

前作からプラスアルファの部分として、クスノキの力の使い方が多様にわたっています。記憶だけでなく味を伝えようと試みたり、自分で自分の念を受け取ろうとしたり。また、ミステリー要素もあるため、途中ドキドキすることや、大丈夫かなと不安になることもありましたが、根底にはクスノキの持つ神秘的な力が美しいことと、家族愛や生きることがテーマにあった気がします。

読了後も余韻がひたひたで、布団の上で「いい本だった…」と言葉がこぼれてしまいました。偶々にはなりますが、ドラマ・アンメットをみたばかりだっため、心に響くものがより深かったです。こちらの2作が私の中で結びついた理由は、読んでからのお楽しみとさせていただきます。

新刊にほっぺたスリスリ


📕青い壺/有吉佐和子

一つの壺が、様々な方の人生を旅します。無名の陶芸家が造った青い壺。ある時は老人病院に、ある時はお屋敷に、ある時はスペインに。全13エピソードが織りなす多様さと深さに驚きました。章ごとに、まるで違った世界に入った気分になるのですが、そこには必ず青い壺が佇んでいます。壺に意志があるとしたら、人間って面白いなあ…と思っていることでしょう。

私が特にお気に入りなのは、第5話。左目が緑内障となってしまった母親を介護するお話です。母はある日を境に、ついに右目も見づらくなってしまいました。緑内障ならもう治ることはないと諦めていましたが、いざ病院で検査を受けると右目は白内障で治りますよ、と医師に言われるのです。もう二度とものを見ることはできないと覚悟していた母親の視力が戻った時に、目に入ったの青い壺でした。

本書は私の祖母から借りた小説です。新聞の切り抜きから、面白そうだ!と購入したそうですが、目が疲れちゃって集中して読み進められない…と私に貸してくれました。であれば、私が物語を祖母のために語りたいと思います。それなら、目を酷使しなくても楽しめますからね。

新聞の切り抜きを栞にしていました


📗風に舞いあがるビニールシート/森絵都

大切な何かのために懸命に生きる人たちの、6つの物語

人は守りたいものがあると、強くなれます。対象は、人でもモノでも価値観でも、人によってそれぞれです。本書は、お金よりも大切にしたいことがある登場人物が、それに向き合い奮闘する物語でした。

全6話の中での一番のお気に入りは「ジェネレーションX」です。商品クレームの対応するために、関連会社の若造と一緒に群馬県のお宅へドライブします。父親世代の自分が運転する中、若造は私用の電話をしまくりました。

ひとこと断りがあったものの、ずっと電話をしているので礼儀がなってないな…と訝しげに思うのですが、若造の受け答えを聞いていると、なんでそこまで相手を必死に説得しているのだ?明日何か大事な予定があるのか?と気になって仕方なくなる…という展開です。パーキングエリアでついに電話の意図を知り、相談や協力まで応じていく流れが面白く、最後のオチ含めて楽しく読ませていただきました。

他にも、魅力的な作品が多く、場面が全く異なるけれども、誰もが人生を悔いないよう生きているのを感じます。


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7月は6冊読了しました。8月も、涼しい部屋で読書タイムを味わいたいと思います。

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