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わたしの本棚

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わたしが読んできた本の感想をまとめています。週1〜2回の更新です📚本好きの方、小説をよく読まれる方、ぜひ覗いてみてください♪
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#毎日更新

読書|池袋ウエストゲートパーク

私の知っている池袋じゃない。でも、もしかしたら私が知らないだけかもしれない。少年ギャング団に乱れる街。ヒリヒリとドキドキが止まりません。 頭の切れるナイスガイのマコトは、荒れ狂う池袋の街で颯爽と暮らしています。仲間が殺された時は復讐をし、ヤクザのお頭に人探しをお願いされたら奮闘し、街の秩序が乱れたら平和を実現させました。 残酷な仕打ちや性的な描写も激しく、夜寝ぼけた状態で読むにはだいぶ刺激的…。そのスリリングさがこの物語の美味しいところなのでしょう。 エピソードを重ねる

読書|神様の暇つぶし

優しい父が事故で亡くなった。心の隙間を埋めるようにふらっと現れたのは、かつて頭を撫でてくれた父よりも歳上の全さんだった。 恋は人を変えるのだろうか、恋で自分が変わったと思いたいのだろうか。 血色の悪い唇に、乾燥した肌。いつか土に還ってしまいそうな容姿なのに、全さんの眼差しや温度を忘れることができない。 大学生の藤子は、カメラマンの全さんに心と身体を奪われ、今もなお、全さんを身体の一部で飼っている。 私にも、過去の記憶が自分の中に居続けています。優しく撫でてくれたひいお

読書|声の在りか

声にならない声が存在する。自分の気持ちはどこに置けばいいのだろう?今日もまた、言いたいことをグッと我慢してしまった。 パートタイム勤務で小学四年生の息子を育てる希和は、自分の気持ちを伝えるのが少し不器用です。家のことは専ら希和が頑張っていますが、その頑張りを旦那は気づいていません。 そんな旦那は今日もまた、動画を見ながら夜ご飯を食べています。私が一生懸命作ったご飯を、動画の片手間に消費されいる姿に耐えかねて声をかけても、その言葉は旦那には届きませんでした。 私も気持ち熟

読書|なれのはて

最後のページを読み切った後、ふぅ…と漏れ出る吐息。読了後の充実感と壮大なストーリーが終わってしまった寂しさが、胸に広がりました。 「加藤シゲアキの第2章としてのスタート」のキャッチコピー。これまでの彼の作品を遥かに超えていった一冊は、読んで悔いなし、出会えてよかったと思える物語でした。 本書では、扱うテーマが多岐に渡ります。戦争・報道・著作権・家族・石油…。それぞれのテーマを貫くのが、無名の画家の絵でした。 報道の第一線で活躍していた守谷京斗は、ある事件をきっかけに、イ

読書|わたしが少女型ロボットだったころ

ある日、ふと気づいてしまったらしい。自分が人間ではなくロボットであることを。 今まではなんの抵抗もなく食べれていたご飯も、自分にとって栄養は不要だと知った途端に喉を通らなくなった。母親には心配され、怒られ、突き放され、でも今まで通りには戻れない。だって、私はロボットだから。 見た目があまりにも人間そっくりなので「ロボット」であることを信じてもらえない多鶴ちゃん。食事をしないとみるみる痩せてしまうところまで人間そっくりです。 頭がおかしくなっちゃった?単なる摂食障害?と思

読書|月曜日の抹茶カフェ

月曜日が定休日のマーブル・カフェ。「木曜日にはココアを」の続編として登場した本書のはじまりも、あの素敵なカフェからでした。 前作が色彩がテーマだったのに対し、本作は和風名月で物語が流れていきます。抹茶や京都がキーワードなため、1月2月…ではなく睦月如月…と続いていく日本の暦が、青山さんの紡ぐ世界観にピッタリでした。 心に残る言葉がいくつもあり、その度に付箋を貼っているのですが、今回はその中の3つを紹介したいと思います。 自分にとっての転機の言葉やあの人との大切の瞬間など

読書|きみの存在を意識する

自分にとっての当たり前は、誰かにとっての当たり前じゃない。ひとりの人間が感じられる世界は、限られています。 中学2年生の5人が語りの短編連作集。筆者の想いは、最後の一文に込められていました。 主人公の5人はそれぞれの特性を持っています。字を読むのにものすごく時間がかかる子や、筆記は苦手だけどタイピングは得意な子、匂いに敏感で教室に入れない子など。 ”教室”という子どもにとっては大きな世界の中で、自分が他の人の感覚と少し違うと気づいた時「大袈裟だ」「努力次第でなんとかなる

読書|夏物語

命とは、家族とは、子どもが産まれてくるとは。壮大な問いとぶち当たりながら、それでも生きていく。 季節は夏、夏目夏子さんが主人公の"夏"物語です。夏のゲシュタルト崩壊が起きそうですね。 取り扱うトピックはシリアスで、パートナーがいない夏子が自分の子どもに会いたい夢を叶えるために、見ず知らずの男性から精子提供を検討します。 情報を集めていくうちに、精子提供によって産まれた子どもの体験記へと辿り着き、さらには当事者と親交を深めていくーーという流れです。 シリアスで気持ちが沈

読書|木曜日にはココアを

人々の夢を愛するマスターが営む「マーブル・カフェ」 物語のはじまりは、ひっそりと佇むカフェから広がっていきます。 青山さんの作品は、文章が柔らかく、優しさが滲み出ています。あたたかな物語の世界に入りたい時に読みたくなるのが、この一冊です。 色彩の使い方と主人公の移り変わりがとっても心地よい。わたし自身、カラーセラピストの資格をとるために色彩の勉強をしていたので、色の持つ意味も頭によぎりながら楽しむことができました。 「聖者の直進」では、幸せの結婚を願うサムシングブルーが

読書|本当はちがうんだ日記

限られた文字数で起承転結を創り、まとめあげる。もちろん、笑いのエッセンスも忘れずに。 ナマズ(=旦那)の本棚からこっそり持ち出した本書。 文庫本にしてたったの4ページ程に綴られている各エッセイは面白く、穂村さんの頭と心の中を隈なく覗き見している気分でした。きっと普段から考えていることが面白いんだろうなぁ。 今回は50以上のエッセイの中から、私の付箋がペタッと貼られた3つのエッセイを紹介したいと思います。 タクシー乗り場にて こちらに登場するお爺様が、素敵で素敵で。

読書|ガソリン生活

車目線の小説など、出会ったことがありませんでした。ピクサーのCarsとはまた違った面白さで、さすが伊坂さん!という気持ちです。 物語の主人公?は望月家の「デミオ」 緑色の車体に、まるッとしたボディーは家族に可愛がられていました。 ある日、望月家が運転する緑のデミオに、偶然にも大女優の荒木翠が乗り込んできます。それだけでも非日常なのに、翌日彼女が事故で亡くなりました。 ここから荒木翠を中心に置くように、真実が蠢きまくります。そして望月家の次男坊・亨くんは小学生に思えない賢

読書|桜風堂ものがたり

本屋大賞の季節がやってきています。本書は2017年本屋大賞5位を受賞された物語です。 淡いピンク色を感じさせるような世界でした。表紙の影響かな、桜の描写が多かったからかな、と想像上の世界はファンタジー。 しかし、実際の内容はファンタジーではなく、本屋さんと書店員のリアルなお話です。私の大好きな本屋さんが舞台なので、そりゃあ読みながらわくわくした気持ちになりました。 人とのコミュニケーションが得意ではない主人公の月原一整さんは、本にかける想いはまっすぐで、本への愛が読者に

読書|勉強の哲学

掴みが面白い。深い勉強をすることは「ノリが悪くなる」こと、ってどういうこと?冒頭の疑問から、ページをめくる手が止まりませんでした。 何か新しいことを勉強するということは、今までの自分の世界から、一度外の世界に出ることになります。深く知らなければ、笑って過ごせていたことも、知識を得たことによって笑えなくなることってありますよね。 例えば、中学時代の同級生のおバカなノリに、ついていけなくなるのは、自分の見る世界の視座が高くなったり、”おバカ”にツッこめる冷静さを獲得してしまっ

読書|いのちの車窓から

頭の中に「SUN」が鳴り響く。彼を代表する音楽が、BGMとして読書時間を彩ってくれていた。 自分がnoteでエッセイを書くようになり、人のエッセイにもより興味を持つようになりました。図書館に行ったところ、返却カゴに並んでいた星野源さんを発見し、迷わず借りることに。 多くのエッセイの中から、今回は私が特に心に残った3作品を記録に残そうと思います。 「おめでとうございます」 タイトルからして、何かいいことがあったんだなと素敵な展開を予期させてくれます。物語の序盤では、それ