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その育休は、誰のため? 男性育休を取得する意義とは

こんにちは、Rioです!私は子どもが産まれてから9か月間の育休を取得し、妻と一緒のタイミングで仕事復帰しました。

復帰後しばらく経ったころ、職場で「育パパ推進」を標榜した社内イベントがありました。このイベントに聴取者として参加してみて感じた違和感と、男性として長期育休を取得した私なりに考える育休の意義について記事にしようと思います。


育パパ推進イベントで感じた違和感

昨今「DE&I」という言葉が日本でも聞かれるようになってきました。「diversity, equity and inclusion(多様性・公正性・包摂性)」の略語です。多様な人の集合体である組織を構成するメンバーが自分らしく働き、成果を出すことを目指す概念と理解しています。

わが社でも、DE&I推進の一環として男性育休を推奨する「育パパ推進イベント」が社内で開催されました。実際に育休を取得した男性職員がパネラーとして登壇し、自身の体験談を共有するという内容です。私にはパネラー依頼の声掛けは特にありませんでしたが、会社としてどういうイベントになるのかが気になり、オーディエンスとして参加することにしました。しかし、実際に参加してみて感じたのが、ザ・違和感

1.リアル限定のイベントで、参加者のプライバシーが守られない

まず、リモートワーク中心の会社なのに、なぜかオンライン参加不可のイベントだったこと。私含めて職員のほとんどはリモートワークが日常なので、社内研修等のイベントはほぼ全てがオンライン会議ツールで開催されます。にもかかわらず、なぜかこの育パパイベントはリアル限定。そのせいか、従業員数約1,000人の会社なのに、当日会場に来たオーディエンスはたったの10名。しかもそのうち半数はパネラーの身内(同じチームの女性職員)という、惨憺たる有様…。

でもそれならば、きっとリアルならではのパネラーとオーディエンス間の双方向的な対話ができるイベントなのかと思いきや、そういう訳でもなく…。しかもイベントの枠自体は90分だったのに、大して盛り上がらないまま60分ほどで終わってしまいました。あまりの残念さに、後日人事部になぜリアル限定にしたのか?と聞いてみたところ、「特別な形でのイベントにしたかった」と何だかよく分からない回答。

個人的には、「男性育休」というテーマだからこそ、なおさらオンライン参加OKにすべきだったと思います。なぜなら、このテーマに興味はあっても、イベントに参加していることを同僚に知られたくないと思う男性職員はきっと少なくないからです。もし参加していることを同僚に見られたら、彼らから「もうすぐ子どもが産まれるのかな?」「育休取りたいのかな?」と勘繰られることは容易に想像できます。プライベートな領域に関わり、かつ自身のキャリアにも影響する「男性育休」というテーマを扱う社内イベントを開催するなら、それくらいの配慮はして欲しかったです。参加者のプライバシーが守られないイベントでは、参加はおろか、満足に質問や意見もできません

2.パネラーたちが口を揃える職場への感謝と、”育児の当事者になれて良かった”という感想へのモヤモヤ

私は、自分と同じように長期の育休を経験したからこそ語れる体験談に興味津々でこのイベントに参加しました。ところが、まずパネラーたちが口にしたのは、自分が育休を取ることでクライアントや同僚に「迷惑」をかけることになることの申し訳なさと、そんな自分の「迷惑」を受け入れてくれた会社への感謝の言葉。自分の上司も含めた同僚たちが参加する社内イベントの性質上仕方のない事ですが、一見こうした言葉は美談に聞こえる一方で、明らかに社内の利害関係者を意識した、どこか上っ面な言葉にも聞こえてしまいます

もしかしたらパネラーは本気でそう思っていたのかもしれません。でも、もし今後育休を取りたい人がこういう言葉を聞いたらどう思うでしょう?「育休取得」と「迷惑」というワードが結びつき、育休を取ることに対する後ろめたさは、むしろ強化されてしまうかも知れません。自分の育休希望を受け入れてくれた職場への感謝はもちろん否定しませんが、ことさらに育休を取得した自分を下げて職場に対して過度にへりくだる姿勢は、自分を保身することにはなるものの、将来の育休希望者にとってプラスに働くとは思えません。

そしてもう一つ違和感を感じたこととして、「育休を実際に取ってみてどう感じましたか?」という質問に対するパネラーたちの回答が、「妻のサポートができて良かった」「育児の大変さを実感できて良かった」という、これまた上っ面な感想に終始していたと感じてしまいました。要は、”育児の当事者観を得られて良かった”という意味だと理解しています。でも、それも仕方のないことかもしれません。なぜなら、パネラーたちの育休期間はなぜか全員約1か月程度だったからです。1か月ってあっと言う間ですよね…。おそらく、妻が産後一番大変な時期だけ自分も育休を取得したのでしょうが、育休中の自分の気持ちを振り返る余裕も無いまま、また忙しい職場に復帰していったのだと思います。

長期の育休は自分の価値観を変容する可能性を秘めている

私たち夫婦に初めて子どもが産まれたことをきっかけに育休を取得し、9か月間仕事から離れた経験から感じるのは、今しかない子どもとの時間を過ごすことから得られる幸福感と、子育てを通じて変容した自分の人生観・キャリア観への新鮮な驚きです。

子どもが産まれる前、私は毎日夜遅くまで残業し、せっせと残業代を積み上げながらも自分の時間を仕事に捧げる生活を続けていました。自分の幸せについて深く考える時間も余裕など無く、目の前のタスクをこなすだけで一日を終えるという、なんとも不毛な時間を過ごしていました。まるで、仕事に打ち込みプロフェッショナルを磨くことに自分の存在意義を見出していたかのようです。

ところが育休がスタートして長期間仕事から離れる生活に入ると、今まで一日の時間の大半を支配していた勤労時間から突如解放され、家族との時間に替わることになります。そこで感じたのは、子どもの成長を朝から晩まで傍で見守ることから得られる、とてつもなく大きな幸福感。こんなに素敵な時間を過ごせないとしたら、勿体なすぎる!9か月の育休はあっという間に過ぎてしまいましたが、育休取得を後悔したことはこれまで一度もありません。

さらに、長期で育休をしたことは、仕事復帰後の働き方にも大きく影響しています。まず、育児をしながら働いていることが社内で認知されているため、緊急時の仕事の中抜けや、夕方保育園から帰宅した子どもの世話をすることに対して同僚から理解が得られやすくなり、フレキシブルな働き方ができています。また、仕事の効率性や生産性を以前よりも強く意識するようになったため、残業が劇的に減りました。育休を機に従来の働き方が一旦リセットされたことで、新たな働き方を一から構築しやすくなったのです。

もちろん、残業が減ったことで残業代はかなり減りましたが、子育てをするようになってから消費欲が減ったため、今のところお金に困ってはいません。激務の仕事と引き換えに受け取る給与や、長時間労働の結果として得られる仕事上のポジション、そして今の仕事で扱う業務領域に対する興味関心に至るまで、自分の価値観・キャリア観は自分自身でも驚くほどに大きく変わりました。

育休は子育てに専念するため?妻をサポートするため?

9ヶ月の育休が終わり、昨年5月に仕事復帰してから1年経ちました。改めて男性育休の意義について考えてみると、男性育休は当然夫が子育てに専念するために取得するものであり、同時に妻と家事や育児を分担することで妻を傍でサポートできる点で意義があることは否定しません。

しかし、私にとって育休とは自分自身のために取ったものであり、実際、育休中だけでなく育休が明けてから今に至るまでも一番その恩恵を受けたのは自分自身ではないかと思うのです。育休を取ったからこそ勤労の義務から解放され、替わりに今しかない家族時間を過ごすことができた。それだけでなく、自分自身の凝り固まっていた価値観・仕事観が一掃され、新たな人生観をアップデートする機会にも恵まれたのです。自分なりの生き方を見つめ直すには時間と気持ちの余裕が必要であり、育休本来の目的とはズレるかもしれませんが、結果的に長期の育休を取ったことで自分が今後well-beingに生きるために大事なことに気付かされたと感じます。

夫が子や妻のために育休を取る、という考えは一見自然なことですが、この考えだけだと育休が自己犠牲に陥るリスクも孕むと感じます。自分が誰かのために我慢していると思いながら続ける努力はきっと長続きしません。少なくとも私自身はそうです。

でも、心から自分自身のためになる、自分が一番恩恵を受けている、と思えることができれば、とても幸せなことだと思います。自分が幸せで満たされているからこそ、周りの他者も満たすことかできるのではないでしょうか。

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