見出し画像

出口はある

 今日は東京で何もかも破綻し実家に戻ってきてからのことを書きます。今回も重い内容なので無理だと思ったらすぐにこのノートを閉じてください。

 東京から実家に連れ戻されて、命が一つあるだけで何もかも失った気分でいました。借金の肩代わりや全ての尻拭いを両親にさせてしまいました。自尊心なんてものも全て打ち砕かれていました。鬱状態が酷く寝返りを打つのもしんどかったのを覚えています。ずっと部屋に引きこもりインターネットをしながら精神安定剤と市販薬を乱用する日々が続きました。その頃のインターネットはSNSなんてものはなくそれぞれがWebサイトを手作りしていました。僕もオリジナルのサイトを作って訪問してくる人と交流していました。その頃の自分はインターネットの世界が全てでした。昼夜を問わず、ずっとずっとその世界で起こることに一喜一憂する日々でした。そこで知り合った人たちから薬を送ってもらったりもしていました。とても人には言えない内容のテレビの番組に出たこともあります。

 そのうち咳止め薬を乱用するようになり大量に飲んでは発狂し精神病院への入退院を繰り返すようになります。今まで30回くらいは精神病院への入退院を繰り返したと思います。何度、入院しても薬は止まりませんでした。嘘や言い訳であることを否定し薬を使い続けていました。そんなことをしているうちに主治医からダルク(薬物依存の回復施設)に行くなら退院させてやると言われ仕方なくダルクに行くことになります。

 ダルクに行ったのは精神病院を退院するためで3日で抜け出しました。その後は実家に戻ったりインターネットで出会った友達の家を転々としていました。東京から藤沢、静岡へ。その友達たちはみんな薬物をやっていました。その頃、仲間内で流行っていた薬はリタリンです。藤沢の女性の家に転がり込みました。その女性は母親と子供と暮らしていました。そのお母さんと子供のいる目の前でその女性と薬を鼻から吸うというとんでもないことをやっていました。その当時はそれがおかしなことだとは思っていなかったのです。

 仕事から戻ってきて薬切れと疲労で頭の中が真っ白になり死のうと思いました。他人の家でです。周りにあった致死量の高いベゲタミンAなどの薬を300錠くらいかき集めてお酒で飲みました。気づいたら穴という穴にチューブを入れられ病院のベッドの上にいました。痰が絡み床擦れが起きとても苦しい思いをしたのを覚えています。その病院から依存症の病院に移ったのですがすぐに脱走し女性の家に戻りました。その女性の腕はリストカットでズタズタに切り刻まれていました。僕はとんでもないことをしました。その破滅的な生き方を止めることができなかったのです。

 この頃はいつも身体に薬が入っていたので記憶があやふやです。病院やダルクに繋がっても回復しようという気はありませんでした。次はどうやって薬を使おうかと考えているだけでした。ここまで淡々と書いてきましたがめちゃくちゃな生活でした。ここに書いた何倍も実際は酷かったと思います。

 僕は自分で自ら気づいて回復に向かうことはできませんでした。ある程度、強制的に回復に繋いでもらわなければダメだったと思います。もちろん凄い反抗心でそれに抗いましたが。それほど病気が深かったのです。もちろんそれは僕の場合で強制的に回復に繋げられても上手く行くはずがありません。僕も底をつき自分で気づいて回復の軌道に乗るのにはとても長い時間がかかりました。

 僕はこの時期に徹底して家族から突き放されました。これも人によるし良し悪しがあるのですが、僕の場合は良かったと思っています。最初は怒りと恨みの感情でいっぱいでした。でもあのまま家族の元に居たらいつまで経っても薬を使っていたと思います。家族の愛ではどうにもなりませんでした。でも僕の場合は上手く行きましたが家族から突き放されて死んでしまう仲間もいました。薬物依存症者に対する接し方は画一的に対処すればいいというわけではありません。病気の深さや精神疾患の有無など様々なことを考慮に入れて対応しないと命に関わります。

 今日は情感をあまり入れずに書いてきましたが本当に酷い有様でした。薬物依存症者の生活は映画のトレインスポッティングのようなスタイリッシュなものではありません。あんな美しい音楽もバックグラウンドには流れていないのです。人としてダメになってしまいます。周りの大切な人たちも巻き込んでしまいます。全てを失っても薬を使うことを追い求めてしまうのです。

 次回はいよいよ回復に繋がってからのことを書きます。こんな生活からどのようにして回復、再生、成長していったのか。ほとんどの人は興味のない別世界のことかもしれません。でも未だに苦しんでいるアディクトに何か少しでも感じてもらえたらと思い書き続けます。

 出口はあります。

 読んでいただきありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?