【連続note小説】日向食堂 小日向真司72歳
吾郎は気付き始めていた。
開店当時から客層は変わったが、新しい常連のお客さんがやってきてくれていた。
皆、真司の料理のファンだった。
そのお客さんたちが、最近になって真司の料理を食べても、以前のような美味そうな顔をしない。
吾郎はたまに真司の料理をつまみ食いしてみるが、味付けは以前と何も変わらない。
"一体どうなってるんだ"
吾郎はもやもやした気持ちを抱えていた。
ある日、吾郎はたまたまやってきた長友に真司の料理のことを聞いてみた。
「なんて言うのかなぁ、最近のオヤジさんの料理に感激しないんだ。
以前は食べる度に感激したんだけどな。
なんて言うか、これじゃ他所の飯屋で食べても同じって感じかな。
まぁ、オヤジさんには世話になったから、そんなことはしないけどな。
オヤジさんも歳だしなぁ」
真司の体に何か変化が起きている、吾郎はそう確信した。
しかし真司にどうしても問いただすことができなかった。
"もしそうなら・・・"
真司が何十年も苦労して築いてきたものが壊れ去る。
それは真司にとって死ぬより辛いことを吾郎は誰よりも理解していた。
<続く…>
<前回のお話はこちら>
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