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【ショートエッセイ】極めた先にある世界

いつものようにビジネスバッグを電車の網棚に上げようとして違和感を感じる。
コートが破けそうになるくらいキチキチになる。
原因はわかっている。
筋トレのやりすぎだ。

コートを買った時から15kgは体重が増えている。
腕周りも胸周りも二回りくらい大きくなった。
どうでもいいことだが、いつも身体のあちこちが痛い。

今年になって、太ももとウェストが入らなくなってスーツを買い換えた。
さらにコートまで買い換えるとなると、我が家の経済が苦しくなる。

一体何のための筋トレなのか、ただのお金の浪費じゃないか、と筋トレをしていない人は思うかもしれない。
おっしゃる通りだ。

しかし大金を払って危険な山に登る登山家はどうだろうか。
命を削るようにして走るマラソンランナーはどうだろうか。
部屋にこもってひたすらゲームをするゲーマーはどうだろうか。

皆、確かに時間とお金を浪費しているだけかもしれない。
山の頂上に登って景色が綺麗だった。
マラソンを走り切って気分爽快だった。
ゲームを長時間やってストレス解消・・・。
そんな簡単な言葉では片付けられない。
そこに辿り着くまでのプロセスは、並大抵の努力ではない。

そう極めた先にしか見ることができない世界がある。
どんな世界かはわからない。
だから皆それを見てみたいと思う。
それには大きな代償なくして成し得ない。

ぼくもその世界を見てみたい。
代償は辛いけど・・・。



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