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きっと彼らは羽ばたいていく

28歳時だった。
先輩に連れられて、ぼくの仕事に関連する技術なついて、日本中の技術者が集って論文を発表するシンポジウムに参加した。

そこでぼくは金槌で頭を打たれたような衝撃を受けた。

それまでぼくは、ぼくの会社の中で粛々と仕事をこなす毎日だった。
仕事の内容もマニュアル的。
狭い世界しか知らなかった。

世の中は広い。
ぼくが想像もしない技術が溢れていた。
たった二日だけのシンポジウムだったが、ずっと技術者たちの話を聞いていたいと思った。

"負けたくない"、"このままじゃダメだ"、そんな思いに駆られたぼくは、それから必死に勉強した。

論文を何十編も書いた。
技術開発、研究活動、大学や高度な知識を持った先輩技術者との交流、自分の技術を磨くためならどんなことでもした。

あれから30年。
ぼくは若い技術者の育成をしている。
彼らを連れて国内の学会の論文発表を聴講することがしばしばある。

ぼくは彼らにぼくの昔話などしない。
彼らが感じる純粋な感情を阻害してはいけない。

しかし・・・、
彼らはあの時のぼくのように、人生観が変わる衝撃を受けてくれると信じている。
広い世界を知って奮起してくれると信じている。

きっと彼らは自分を超えるために羽ばたいてくれる。

小説を読んでいただきありがとうございます。鈴々堂プロジェクトに興味を持ってサポートいただけましたらうれしいです。夫婦で夢をかなえる一歩にしたいです。よろしくお願いします。