サバサバして夢を終わらせよう
息子はプロ野球選手になりたくて、小学校四年生から野球を始めた。
他の子供達は小学生になったときからすでに野球を始めていて、彼のデビューは少し遅かった。
それからは野球に夢中になって練習も毎日のようにしていた。
高校を卒業して、彼の野球に捧げた青春は一区切りをつけた。
彼はどの段階で気が付いたのだろうか。
自分がプロ野球選手になれないことを。
10歳から描いていた夢・・・。
追いかけて、何年も追いかけて、それでも手が届かなかったのならまだ諦めもつくだろう。
まだ彼は子供だった。
あと何十年も生き続けるのに、子供の彼はどうやって自分の心にケリをつけたのだろうか。
あまりに残酷な話だ。
そういえばぼくにも医者になりたいって夢があった。
何年も必死で勉強したけど、大学受験に失敗して儚くも夢は果たせなかった。
ぼくの夢は、そんなことで強制的にシャットダウンさせられてしまった。
あの時の心境を思い出してみると・・・。
意外とサバサバしていたなぁ。
やるだけやったけどダメだった、ってそんな感じだっなあ。
その時はもう子供じゃなかったけど、子供に毛が生えたような歳だった。
何年も勉強に費やした時間が無駄になったって、そんな感覚はなかった。
息子はどうだったのだろう。
サバサバしていたのだろうか。
それは永遠にわからない。
でも社会人になった今でものんきに草野球をやっている。
野球小僧の血は絶えず流れ続けているのだろうか。
少なくとも、もう野球なんかやりたくないって、そんな心境じゃなさそうだ。
親が思っているより、彼もサバサバしていたのかもしれない。
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小説を読んでいただきありがとうございます。鈴々堂プロジェクトに興味を持ってサポートいただけましたらうれしいです。夫婦で夢をかなえる一歩にしたいです。よろしくお願いします。