見出し画像

文学フリマ36で出した本の通販を開始しました!

 もう大分経ってるのに何で今? という感じではあるのですが、今朝突然ショップに商品を追加する元気が湧いてきたからです。あと7部売れ残ってることを突然思い出したから。

 以下にサンプルを貼っておきます。

1.名前は××××にしたいな

「今回も想像妊娠だったよ」
カラッとした声で私は彼に告げる。
「そっか」
当然でしょうと言いたげな顔。
私はもう36回も妊娠している、想像上で。
「私のこと、おかしいって思う?」
「いや、少し心配性なだけだよ。それに真由は」
彼はそこで言葉を切った。
「何」
「妊娠、したくないんでしょ」
「うん」
親のようには、なりたくない。
「生きていたくない私が、人を産む意味が分からないの。全く論理的ではないから。」
「そっか」
私の36回目の想像妊娠を受けて、彼は避妊具をつけてくれることになった。
「大人になったね」
「真由よりずっと大人だよ」
「精神的な話だよ」
避妊具を介した行為のあとも私は“お腹に子供がいる”ような錯覚を覚えた。
「ねぇ、ほんとうは産みたいんじゃないの?」



2.僕の大好きな彼氏は永遠

「死んでもいい」それがあなたの口癖だった。
あなたは嬉しいことがあるとすぐにそう言った。「死んだらやだよ」僕は何度かそう言ったけれど、あなたは冗談だよって笑っていた。どうして今僕は一人でいるんだろ。あの日に戻りたいって今も思ってる。
彼と出会ったのは高校一年生の春、入学式でのことだった。濡羽色の柔い髪が桜に映えてうつくしかった。声をかけたのは僕の方で、話しかけないと今にも消えてしまいそうな気がした。
「あの、僕と友達になってくれませんか?」
彼は目を見開いて驚いたあと、 「いいですよ」 そう言ってくれた。彼と僕はすぐに打ち解けた。
好きな作家、好きなアーティスト、好きな映画監督までもが同じだったからだ。
僕が彼に寄せに行くまでもなかった、本当だよ。僕らは良い友人同士だった。「だった」と書いたのは、その後関係性が変わったからだよ。それについては後で話すね。
実は、僕はバイなんだ。女の子を好きになったこともあれば、男の子を好きになったこともある。両性愛者を自負しているけど、好きになった女の子は一人だけだから、もしかしたらゲイに近いのかもしれない。



3.インターネット産まれ

 20XX年、世界の特殊出生率はついに0.3を下回った。そんな中、日本政府は新たな生殖技術を確立した。その方法は、生殖用コンピュータ「ゼウス」に精子の画像を解析させ、インターネットで作られた卵子と合体させることだ。これは、非常に画期的な生殖方法であり、キリスト教徒の多い国は日本を徹底的に批判した。しかし、もう「ゼウス」を利用して子供を増やさなくては国の存続は厳しいと判断した首相は、試しに一人の少女を作った。
 史上初めての、インターネット産まれ。少女は夢と名付けられ、科学研究所で育てられることになった。驚くべきことに、少女は産まれる前の出来事を全て知っていた。震災もテロも事件も、暗殺も何もかも。これを知った研究者は、「ゼウスを壊し、夢を殺そう」と言った。彼女は人の形をしたAIだから、これ以上増やしてはいけないとこの研究の当事者である男が言ったのだ。これを聞いた首相は、「ゼウスは壊してもいいから、夢だけは生かしておいてほしい」と懇願した。
男は首相の頼みを無下にできなかった。断ってしまえば、二度と自分は研究費をもらえないと分かっていたからだ。
 そうして、夢は一歳になった。彼女にはまだ顔がない。

 もし、もしも続きが読みたいなと思ってくれる方がいたら購入お願い致します。

この記事が参加している募集

#文学フリマ

11,688件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?