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エッセイ「徒然なる日々の瞬き」5.美術館

 作家の異様な空気感を体にまとうことのできる唯一の不思議な空間が美術館である。人の人生を覗き込み、そこに勝手に自分を投影し嬉しくなったり苦しくなったりする。それがなぜか病みつきになってしまう。

 時々絵の中に無意識のうちに取り込まれ、そこから抜け出せなくなるのではないかと感じる作品に出会うことがある。地に足を着けていないと、自分をしっかり保っておかないと、その絵に自分を殺されそうになる。そういう時は、蓋をしている心を相手に見せることで相手は警戒心を解き、私をも解放してくれるのだ。作品には命が吹き込まれているからこそ、友達になるには自分をさらけ出すことが手っ取り早い。

 まったく無知の場合でも、なるべくならばガイド音声は排除したい。一回目は自由気ままに作品との対話を楽しみ、ときに吸い込まれて焦り、よくわからないと頭を抱えたりしたい。そうすることで、ただの無知がちょっと知り合いになり、最後にガイド音声や図録なんかで答え合わせをすることで、しっかりと知人になれるのだ。


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