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フリーペーパー「星屑」とその本のこと

フリーペーパー星屑とは、2015年から毎週1回のペースで、主にセブンネットプリントやネットワークプリントサービスを利用して配信しているフリーペーパーです。とりとめのない日記のようなもの、私が考えていることを毎回テーマを決めて文章にしています。
「星屑」を始めた時は大学4年生でした。簡単に言うと大学院試で必要になる論文対策のために始めたようなもので、1人で完結してしまうと続かないだろうと考えて、ネットプリントで配信するようになりました。わざわざデジタル(SNSで番号を確認する)を通してアナログ(コンビニのプリンターを操作して印刷する)を手に取る人が果たしてどれくらいいるのか興味があった部分もありました。

SNSで発信すると当時に、大学内と知り合いの古本屋で配布もしていました。この時は「純白ロール」の薄い紙に印刷していました。グラシン紙とも言われ、片面がつるつる・裏面はざらざらの紙で、紙の名前は知らずとも一度は見たことのある人も多いかと思います。

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大学院に進学した後も星屑の更新は続き、100回を超えるあたりで形になるものを残したいと考えました。私の大学院での研究は紙と文字を中心に、紙の持つ風合いや印刷効果がデザインにどのように影響するのかということと、装幀をメインにグラフィック全般の制作と製本もしていたので研究課題のひとつとして制作しました。

星屑1

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装幀を考える時に、どこから考えるかはデザイナーによって違います。本文の組版から考える人もいるし、タイトルを聞いてロゴデザインがぱっと降ってくる人もいます。カバーに使用したいイラストや写真から探すこともあります。今回は「星屑」にちなんで星や空を連想させる紙を使いたいと考え、紙を探すところからはじめました。自分の作りたいものを優先するためにコストは無視しています。


カバー「スタードリーム-FS」
星の夢という名前の通りきらきらの光沢のある紙です。比較的落ち着いた光沢なので目にすっとなじみます。上部で折り返していて、広げると一面の星図が現れるデザインにしました。第一弾では夜中の星を、第二弾では白昼夢をイメージして色を選んでいます。

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表紙・見返し「新・星物語」
満天の星空をイメージしたというファンシーペーパーです。当時配布していた星屑を入れるための袋は薬袋をモチーフにしていたので、その名残を印刷しています。

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遊び紙「クラシコトレーシング-FS 星くずし」
透け感のあるクラシコトレーシングの、天の川や運河を思わせる柄です。第一弾で使用していたいろが廃色になってしまい第二弾での使用を諦めましたが、ふつうの白も使えばよかったな……。どうか廃盤になりませんように。

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本文「スピカボンド」
スピカはおとめ座α星とも呼ばれる、おとめ座の中で最も明るい星の名前です。本来はステーショナリーペーパーで本文用紙向けではないのですが、白い紙で本文に使用できそう、かつ手触りの良い紙ということで選んでいます。ランダムにウォーターマークが入っていてかわいい。

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判型は四六判の仮フランス装。もともとはアンカット本や本フランス装と呼ばれ、ヨーロッパで仕上げ断ちを行った本の流通が普通になる前、本の袋になった部分(折丁)をペーパーナイフを用いて切り開きながら読む必要があり、自分の好みに合わせて製本し、蔵書に加えるのが一般的でした(諸説あります)。その特徴的なカバー部分が残り、仮フラとして存在しています。仮フラをまだ製本したことがなかったことや、大事にしていく本になることを意識してこの仕様にしています。
本文レイアウトは第一弾と第二弾で変更しています。当初、イラストも頑張って描いていたのでそれも含めてレイアウトしていたのですが、途中からフリー素材を多用し始めたので文章中心にシフトしました。

製本作業は基本的に自分でやります。本来製本所などに頼むと機械化されて効率的なはずの作業も、第一弾は紙の手配からすべて自分で行いました。(写真は今回の書籍ではないものもあります。)
在学中は地元の紙問屋さんに頼んでファンシーペーパーを取り寄せてもらいました。全紙を1000枚単位で紙を買うと壁ができます。下の写真は、大学院の進級展で白い本を大量に作った時のもの。

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本文の背を固め、花布やスピンをつけます。細長い帯は花布(はなぎれ)。上製本のノド部分にひっそりついているあれです。星屑にはついていませんが多くの上製本にはついています。仮フラでもつける場合があるみたいです。

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背を固めているところ。カオス。

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カバーを折って巻きます。これで大体完成です。

基本的な作業は、上製も並製も同じです。アレンジすればエンボス風の加工や箔押し風の加工もすべてできるようになります。環境は変わりましたが、第二弾も似たような感じで進めています。印刷はイニュニックさんに頼んでいます。

手製本は手間はかかりますが、10〜100冊くらいまでなら比較的自由に制作することができます。私は直に紙に触れることで、物体としての本のよさを実感することができました。たくさん作らなくてもいいけれど、必要な人にはどといて欲しい、そんな時に小部数の本は便利です。

星屑もまさかこんなに続くとは思っていませんでした。更新頻度は減っていますがこれからも書くつもりです。第三弾がいつになるかはわかりませんが、その時もファンシーペーパーが生き残っていますように。

これからも細々と、手の届く範囲の本を作り続けていくのだと思います。


自費出版・完全手製本で冊子版星屑を制作しています。第三弾の制作費のサポートよろしければお願いします!