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他人様の記事。

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ぐっときたり、勉強になったり、思わずうーんとうなる他人様の記事。
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#純文学

無数の針

無数の針

短編小説

◇◇◇

 海に向かう街道の少し手前でスーパーマーケットに立ち寄り、そこでぼくと十歳になる姪は、チョコレートやキャンディーやスナックなどの菓子類をしこたま買い込んだ。ここから海水浴場までには長い峠道を越えなければならず、三十分くらいでは着きそうにないから、車の中でおやつを食べようと、ぼくが姪に提案したのだ。

 お菓子に関しては子供の方が目利きだろうと思い、姪が選ぶに任せたのだが、買い

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半月たちの哀歌

半月たちの哀歌

短編小説

◇◇◇

 寺林涼子は職員室にある自分の机に置いてあった二つ折りのメモを見つけて、高校三年生のある男子生徒の顔を思い浮かべた。

 涼子は以前、その男子生徒から詩のようなものが書かれた手紙を受け取っていた。性器を見たことがない……とか、そういった気味の悪いセクハラまがいの文面だった。もしもそれが、ポストに入っていた差出人不明の手紙なら、最後まで読まずに破り捨てていたと思うが、涼子はその

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