北岳に登って自分の弱さに気づきました。


写真を改めて見ると美しい

突然、登山がしたくなり日本百名山を制覇することにしました。
初めて目指す百名山は南アルプスの北岳。

記念すべき初登山は富士山にしたかったんですが、あいにく登山シーズンが終わってしまったところでして、日本で二番目に高い北岳を選んだわけです。

登る前はただ、高いところからせめたい!という気持ちで臨みましたが実際登頂した時高山病になり、ひどい目に遭ってから3000m級山の恐ろしさがわかりました。

北岳山頂。この時はまだ調子は良かった

今までウェイトトレーニングやボディビル式筋トレ、クロスフィットなどの運動を定期的にして恥ずかしくない体を作り、ロードバイクやランニングなどの有酸素運動も追加して体力にも自信がありました。

だからこそ高い山から攻めたい!という気持ちが強かったです。なんなら難易度が高い順に登りたかったんですが登山のことはあまり分からず、とにかく高い山=レベルが高いというイメージが僕の中にはあったので山の高さで難易度を勝手に評価しました。

そうして「俺の体力には高い山が似合う」と思ったのです。

小太郎山分岐点から続く綺麗な尾根。しかしこの時から体の調子がよろしくなかった

今日は、体力に自信を持つバカが無理な挑戦をするとどうなるのかをお話ししたいと思います。


そこまでなめてなかったけど高山病対策はしなかった

今回一泊二日の登山準備

登山ユーチューバの教えを参考に一泊二日の必需品を購入し、遭難された時も考えファーストエイドキット、シェルター、エマージェンシーブランケット、火を起こす道具、ライト、モバイルバッテリーなどもケチることなく用意しました。

僕の中で登山中の非常事態は遭難のみでした。

だから遭難を乗り越えられる物品を準備したことで登山へのリスク対策ができたと信じ、あとは人よりも早く南アルプス縦走を終わらすことだけを考えていたのです。

前の経験が毒となる

男体山山頂まで1時間半で登り切ったことを自慢げに思っていた

北岳に挑戦する前に男体山と日光白根山に登ったことがありました。

その時もやはり体力に自信が満ちており挑戦したことのない2000m級山に水分と行動食のみを持って挑みました。

YAMAPというアプリで登山ルートを検索すると、ルート完走平均時間が表示されます。男体山と日光白根山を登った時、コース平均時間を超える結果となりました。この経験はさらに高い山も早く登れるという自信をくれました。

南アルプス縦走も平均時間より早く終わらせるだろうと考えてしまったんです。

登山を楽しむということを建前に実は「縦走時間を短くする=やはり俺は体力が高い」という公式を成立させようとしたんですね。

小太郎山分岐点で感じた異変

富士山が綺麗に見える小太郎山分岐点

広河原登山口から小太郎山分岐点までの道のりは地味にキツく、僕の挑戦欲(キツければキツいほどそのことに挑んでいる自分が偉く感じる欲と言えますかね)に応えてくれる道のりだったので満足していました。

おまけに小太郎山分岐点から360°綺麗に見渡せる南アルプスの絶景もまた気分を高揚させてくれたのです。

一方で呼吸は窮屈に感じ、妙な頭痛と倦怠感が少しずつ襲ってきました。

南アルプスに挑む前に高山病に着いては調べていました。ですが調べたというより「どうやら3000m以上の山に登ると高山病という症状が出るらしい。」とどんな症状が出るのかを見ただけでした。

なのでこれが高山病の症状なのかと認識はしていたんです。しかし、高山病が進行するとどうなるのか、その症状を我慢し登山を続けると症状がどう発展するのかまでは分かってなかったんです。

肩ノ小屋テント場。ここで宿泊すべきだったかもしれない

強い頭痛と吐き気は突然おとずれる

微妙な高山病の症状を感じながらもスイスイ登ることができたので割と早いペースで北岳山頂を登り切り、その先にある北岳山荘へ足を運びました。

北岳まで肩ノ小屋で10分程度休んだだけでほぼダイレクトに登ったので時間的な余裕もありました。その故、もともと一泊を予定していた縦走計画も「日帰りでいけるのでは」と思うようになったのです。

その思いは北岳山荘で一変します。

遠く見える北岳山荘。あそこでえらいことになるとは思わなかった。

北岳山荘に着いたのは11時過ぎで、登山を始めて5時間弱。まともな食事をしなかったのでここで昼ごはんを食べることにしました。

受付カウンターで水を補充し、炊事ができそうな平たい場所を見つけて早速レトルトカレーを温めました。ここまでは食欲もあって山飯を楽しみにしていましたが。

突然のひどい頭痛と嘔気に襲われたのはレトルトカレーとごはんを温め終わる頃。

先まで楽しみにしていた食事は喉を通ることを拒否し、頭は脈を打つような痛みが続きました。

でもまだ宿泊予定地の農鳥小屋まで約4kmくらいあるし、食事もしてない状態だったので体力温存のために無理やり食事を済ませました。

食事中なんども吐きそうだったんですが、ここで吐くと体力低下はもちろん脱水症状も加わりもっと状況が悪化することを恐れ、我慢して最後までカレーを食べました。

体力を信じて命を落とすところでした

肩ノ小屋キャンプ場へようやく到着!本当死ぬ気でたどり着いた。

高山病の症状が強く出た北岳山荘でキャンプすることも可能でした。ですがなぜか知らないですが、できれば一泊せずになるべく早く下山することを試みたんです。

状態が悪いからこそ泊まるのではなく早く帰ろうと。こんな考えもまた自分の体力を信じたからでしょう。

当たり前ですが、強い頭痛と嘔気、倦怠感がある状態ではペースがどんどん落ちます。ちなみに北岳山荘から奈良田駐車場まで約17kmの距離でした。

めちゃめちゃ元気な状態でも一泊二日の装備を背負って日帰り縦走は難しい距離なのに高山病症状マックスな状態でこの距離を完走するという発想をするなんて怖いもんです。

これが体力過信の恐ろしさなんじゃないかなと思います。

ネットで高山病と調べればすぐ出てきますが、高山病が進行すると肺水腫や脳浮腫となり命を落とすことになるそうです。

運が良かった

農鳥小屋で無事夜を迎えることができて良かった

ひどい頭痛と嘔気を我慢しながらなんとか日没前に農鳥小屋につきました。なかなか受付をしてくれない独特な小屋のおっさんに怒りを感じる暇もなく秒のスピードでテントを設営しそのまま爆睡。

不思議なことにぐっすり寝ることができました。

人の話し声で目が覚めテントの外へ出ました。小屋周辺を散歩しているうちに少し調子が良くなったことに気づきます。

幸い食欲も戻り、そのままカップ麺を食べて(たまたま辛麺のカップヌードルだったので胃腸がスッキリしました)その日の夜を過ごせました。

次の日は少し頭痛が残っていましたが、症状は改善されて無事最後まで縦走を終わらすことができました。

翌朝キャンプ場から見えた富士山。この光景を見れて良かった

経験をどう活かすか

無事辿り着いた奈良田駐車場。達成感はすごかった

強い頭痛と強烈な嘔気。とにかくこの二つの症状が僕の高山病症状の特徴でした。

高山病の症状を緩和させるためには速やかに高度を低くする必要があり、ゆっくり歩くことや高度を急に上げないことが重要です。

僕はこれらのことを全無視し強い高山病症状でありながらも縦走を終わらすことができました。これは自慢ではなく、本当運が良かったとしか言いようがないです。

下手すると肺水腫になって呼吸困難となり、脳浮腫となって運動障害を患い下山できなかったかもしれません。

無知の力でしょうか。まぁ高山病の深刻さを知っていれば予防薬を飲んだり、症状の具合をみて即下山を試みるか、山荘の人に助けを求めたでしょう。

人間は愚かなものだなと思ったのは、後ほど北アルプスにも挑戦することになりますが、その時も高山病で苦しむことになります。

なぜかというと、ここでの高山病経験が「高山になれた」と変にインプットされたからです。

経験を正しく生かさなければ、経験は学びではなくかえて毒となることを知りました。

そうして山は僕の体力過信の心を正してくれました。自分は弱い人間であると山は教えてくれたのです。

自分の体力を過信せず、ゆっくり体を山にならしていくことが必要だと思いました。山は体力があるないだけでなく、高度、気候、距離、登山路の状況など複合的な要素から影響を受ける体調に耳を傾け、適切に対処しなければならないことを学びました。






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?