甲府

2020.2.23 J2 第1節 FC町田ゼルビア vs ヴァンフォーレ甲府

待ちに待った開幕戦となりました。ゼルビアは6シーズンに渡った相馬政権に別れを告げ、2011シーズンに指揮を執っていたランコ・ポポヴィッチを再び招聘しました。サポーターの皆さんはどんなサッカーが見れるのか、早くゼルビアの試合を見たいと思っていたことでしょう。

無駄な前置きはこのくらいにして、試合について見ていきましょう。


スタメン

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町田:4-4-2
7人が新加入と昨季から大幅に選手が入れ替わっていることがわかります。相馬監督時代には安定だった井上-森村のボランチコンビや前監督から絶大な信頼を得ていた中島裕希がスタメンから外れているのを見ると、改めて変わったんだなと感じさせられます。
便宜上2トップにしていますが、平戸は実際1.5列目(トップ下、セカンドトップ)です。
甲府:4-4-2(4-4-1-1)
甲府も4-4-2とミラーゲームになりました。この段階から硬い試合になることは予想できました。甲府も攻撃時はドゥドゥがトップ下の位置まで降りてプレーしていました。泉澤・松田の両SHは要注意です。


去年までとの違い①

去年までは少ない手数で敵陣深くに侵入することを目的とし、その手段としてロングボールを多用していました。そして同時にセットプレー(ここにはスローインも含まれます)の獲得も狙っていました。そのためボールが外に出るなどしてプレーが止まったり、トランジション(攻守の切り替え)の回数が多くアクチュアルプレーイングタイムが短くなる事が多かったです。

ですが今季は陣地を獲得するためのロングボールは少なく、まずはDFからパスを繋いでゾーン3まで進もうという狙いが見られ、相手が前からプレスに来なかったこともあってプレーが止まったり、トランジションの回数が去年までよりも少なかったように思います。

去年までとの違い②

最終ラインからパスを繋ぐ今年はビルドアップの形にも変化が見られました。サリーダ・ラボルピアーナというビルドアップの時に数的優位を作る為の型が用いられました。詳しい説明はリンク先のfootballistaの記事を読んでいただけたらと思います。

足元の技術に長けているとは言えないCBコンビを助ける形で、髙江が最終ラインに落ちることで数的優位を作り、ビルドアップを円滑に行うという狙いが見られました。この試合では2パターン見られました。

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上が0:45頃に見られたもので、SBの空けたスペースに髙江が落ちるパターン。下が20:00頃のシーンで、CBの間に落ちるパターンです。どちらも欧州の試合ではよく見られる形で、後述するSBへの配球をスムーズにする狙いが伺えます。

ポポヴィッチゼルビアの狙い

今年のゼルビアがやりたいこと、ゴールまでこういう形で迫りたいというのが表れたシーンを中心に説明していきたいと思います。50:35~のシーンです。

高い位置まで上がった小田へ最終ラインからパス→相手最終ラインの裏のスペース(主にハーフスペースあたり)に走り込んだ平戸へパス→大外に流れた吉尾にボールを落とし、中央へクロス→ゴール前で繋いでマソビッチがシュート

このシーンやこの試合を通して見えた狙いを図にまとめると以下の通りです。

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この試合は主に右サイドからチャンスが生まれていました。

肝心の狙いはというとSBに高い位置でボールが入るとまず吉尾が少し下がってSBを引き付けてスペースを作ります。そのスペースに平戸が走り込んだところにパスが出てきて、このシーンはサイドの吉尾にボールを落としましたが、平戸が直接中を向けるようなら平戸がそのままゴール前にクロスを送っていたでしょう。中央にステファンとマソビッチがいることで空中戦での勝負は優位に持ち込めるということから右に偏った攻撃になったのでしょう。

ですがセットプレー以外にチャンスを作ったのはこの形しかなかったので、もう数パターン作れると、相手の対策をくぐり抜けてゴールに繋げられるかと思います。

ハイライト(20:05のピンチ)

敵陣でボールをカットされカウンターを食らい、キーパーとの1対1にまで持ち込まれたシーンです。直前のビルドアップでサリーをしていたので最終ラインに水本、深津、髙江が残り、相手は泉澤とラファエルが前線にいました。ですがドゥドゥが中央にパスを出した時点で左サイドの水本は無力化され、実質2対2のシーンでした。それでも数的同数だったのにシュートまで持ち込まれたのは髙江・深津の2人に守備のエラーがあったからです。

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深津・髙江ともにボールに意識がいっていて、泉澤・ラファエルを見る意識が無く、リトリートすればピンチにならずに済んだかもしれないシーンでしたが、深津の前に行く守備が裏目に出た格好となりました。

甲府3-4-2-1変更後の守備(61分~)に見えた課題

この試合SBが甲府のSHのポジショニング、特に奥山が松田のポジショニングに対して手を焼いていました。そこに追い打ちをかけるような61分以降の甲府の3-4-2-1への変更でした。なぜ追い打ちをかけたかというと、SBが見なければならない相手が2人に増えたからです。シャドーとWBの2人を見なければならず、負担が増加しました。すぐに町田の選手たちも対応し、SHの選手が自陣深い位置まで戻って守備をすることでSBの負担を軽くしていましたが、そこで問題点が2つ浮かび上がってきました。

①:前から圧力をかけることが出来なくなり、高い位置で奪えなくなった
②:低い位置で奪ってもカウンターの形が作れないので、相手を押し戻せない

特に②は深刻な課題で、去年もカウンターをチームとして仕込めず属人的なものに依るものが大きく、慢性的なゼルビアの課題です。

–攻撃面の連係や迫力、崩しの形などは試合を通じて、どう感じていますか?
「キャンプからご覧になっていて、ご存知かと思いますが、キャンプ中にジョン(チュングン)が怪我をしました。彼はそれまで切り替えた瞬間に背後を取りに行く能力を発揮してくれました。彼の離脱によって、そこの部分でパワーが落ちました。私が求めている背後を狙っていく、スピーディーに相手の背後に向かっていく攻撃はまだまだです。ただシーズンが始まったばかりですし、十分に積み上げていけるもの、レベルアップしていけるものだと思います。スピードに関しては選手の能力にもよる部分もあるので、切り替えるスピードを速くする、選手同士の距離感などは今後も高めていきたいです。」

課題解決のカギとしてポポヴィッチも期待していたであろうジョン・チュングンも長期離脱と、この先カウンターをどうしていくのか、仕込めるかどうかで今季のゼルビアの順位が大方決まると言っても過言ではないと思っています。

参考文献


さいごに

一部の図にはgifを用いてみましたがいかがでしたでしょうか。

肝心のチームの課題としてはカウンターをどう仕込むか。そしてSHを逆足配置にしたものの縦突破が無く、中に切り込む一辺倒だったので今後どうするのかが挙げられると思います。次の千葉戦はこれらの課題が解決されたかが楽しみですね。

今回もお読みいただきありがとうございました。

試合結果

町田 0-0 甲府

警告 77' 小田逸稀


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