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OGRE YOU ASSHOLE@日比谷野外音楽堂 ライブレポ&エッセイ その②

〜入場後〜

今回は、日比谷野外音楽堂初の試みである、クアドラフォニックサウンドシステムを活用したライブ(通常、野音では前方2箇所にスピーカーを設置するところ、今回は四方4箇所に設置。ステージから様々な音の粒子が飛び交う立体音響システム)であった。そのため、「音響を調整するPAブースあたりの席が1番、音が良い」との噂を聞いていた。

入場番号が若かったぼくは、急ぎ足でPAブースに駆け寄り、見事にその付近の席を確保する事に成功した。

会場は飲食物持ち込み可であったため、酔っ払った人々で大騒ぎ。なんと、いい歳した社会人がシャボン玉で遊び、暴れ始める程の荒れ具合であった。ひとりぼっちの僕にとっては肩身が狭く、多少イライラしたが、無理やり許容した。好きなアーティストが同じである事に、なんらかの可能性を感じていたためかもしれない。心の中で彼らを殴り、和解した事でこの問題は解決した。

17時00分に開演予定だったが、なかなか始まらず。待ち時間のざわつき、自分の器の小ささも相まって、ぼくは少々狼狽気味であった。

数分後、舞台の右手側から颯爽とメンバーが登場。各々楽器を手に取り演奏を開始した。前方のスピーカーから、後方のスピーカーにかけて不気味な音が流れ出した。奇妙な電子音が徐々に音を増し、ぼくの耳の表皮を貫き鼓膜を振動させた。

一曲目、『ロープ』のイントロが流れだした。ポッポ、ポッポという音と同時に、空からほんの数滴の雨が降り出した。"奇跡としか言いようがない"。さすが、雨バンドである。フジロック2017においても、彼らが演奏を開始した途端に大雨が降りだしたという。

彼らの演奏、ボーカルの歌声は"奇妙"である事は間違いない。初めて聴いた人は嫌悪してしまうだろう。ぼくも初めはそのうちの1人であったが、今では彼らが奏でる「音」がなくては生きて行ける気がしない。サイケデリックな音が実に心地よいのである。

一曲目の演奏が終わると、会場からは盛大な拍手と奇声が。鳴り止まない騒音を打ち消すかのように、ドラムの演奏が会場に響き渡り、二曲目『タニシ』へ。軽快なリズムで奏でられた。その後、一昨年リリースのアルバムから、『頭の体操』、普段ライブで披露する事が少ない、『ヘッドライト』、『バランス』、『バックシート』を続けざまに演奏し、会場は大盛り上がり。と同時に、雨雲も本領を発揮。会場に大粒の雨が降り注いだ。

日は完全に落ち、会場は暗闇と水滴に包まれる。彼らは一切MCをせず、演奏し続ける。我々に隙を与えようとしない。

『寝つけない』、『ムダがないって素晴らしい』によって、会場はさらに勢いに乗り、『素敵な予感』で会場は異様な雰囲気に。真っ赤な照明が、ステージ上の4人を映しだす。まるで悪魔の舞踏会を見ている心持ちであった。

その後、ライブ定番曲である『夜の船』を演奏。恍惚かつ艶っぽいイントロは、何度聴いても素晴らしいものである。続く『フラッグ』、『見えないルール』では、4人が完全に会場を掌握。次第に雨あしも弱くなっていった。支配された我々は、雨の中でカッパを存在を忘れ、踊り狂う状況となった。演奏が終わり、ボーカルである出戸さんが、「次で最後の曲です」と宣言。すると、彼の発した声と同時に、雨は完全に止んでしまったのである。いやほんとに、奇跡としか言いようがない。演奏と共にやんだ雨雲、シンプルで真っ青な照明に彼らは包まれ、『ワイパー』を演奏し終えた直後、会場は再び奇声と拍手に包まれた。

9月17日、月曜日。日比谷野外音楽堂。17時~19時30分。この時間帯、この場所は完全に地球上から離別された「異端な空間」であった。少々大げさな言い方かもしれないが、彼らの演奏、音は幻想的な空間を生み出していたことは間違いない。

会場のアンコールで彼らは再び登場。Neu!のHallo Galloであったり、WilcoのSpidersを彷彿とさせる『ロープlong ver』を披露。その後、新曲である『動物的/人間的』を演奏し、会場は大盛況の中幕を閉じた。

やらなければならない事があるとき、人間誰しもやる気が出るとは限らない。しかしながら、仕事を毛嫌いしているぼくに対し、仕事に対してのモチベーションを高めてくれる先輩が、ありがたいことに存在する。ぼくが日比谷野外音楽堂に着いたとき、雨雲はやる気がないように思えた。千切れてバラバラになった雲は太陽を隠すのに精一杯。しかしながら、彼らが演奏を開始した途端、雨あしは徐々に強くなり、次第に豪雨にまで発展した。かと思いきや演奏が終われば雨脚は弱くなる。OGRE YOU ASSHOLEの演奏は、僕ら人間だけでなく天候まで掌握してしまうのかもしれない。彼らの音楽の力は無限大である。

濡れたTシャツと靴に不快感を感じ始めたぼくは、いち早く駅へと向かった。ライブ鑑賞後、かの暴れん坊将軍もきっとご満悦であっただろう。帰り道も迷うことなくすんなり帰れた。これまた、奇跡としか言いようがない。

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