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さよならの向う側

子どもの頃、全てのことは永遠に続くものだと思っていた。いや、永遠という言葉は知らなかったけど、その状態がずっと続くと思っていた。

母が山口百恵さんの大ファンで山口百恵さんが引退するとき、テレビにかじりついていた。♬さよならの向う側♬は山口百恵さんが最後に歌ってマイクを置くシーンが印象に焼き付いている。母は涙ぐみながらそのシーンを見ていた。

時は流れ、私は母になり、子どもたちには理科好きになって欲しいと、理科事典を購入した。私は幼い頃から空を見るのが好きで、宇宙にとても興味があった。子どものために買った本ではあったけど、自分の興味もあり、本を開いて宇宙の項目を読んでみた。

そして、そこで、初めて、衝撃の事実を知った。太陽にも、地球にも、寿命があるということ。永遠にも思える、絶対だと思っている、それらが、すべて、いつかは終わりが来るという現実。

スタンドFMで山口百恵さんの歌を他の配信者さんが歌っていたのが、懐かしく、自分も演奏したくなり、ネットを駆使して山口百恵さんの楽譜を入手した。そして初めて、歌詞をじっくり読んだ。

「何億光年 輝く星にも寿命があると教えてくれたのはあなたでした」

この一節に衝撃を受けた。

いつか配信したいと練習していた♬さよならの向う側♬

配信のために、録音はして準備してはいた。

だけど、どうしてもライブで弾きたくなった。ある人にライブで弾いているのが届いて欲しいと思ったから。

音声配信で、顔も見たことのない、声とコメントだけのやりとり。

そのままどんな人か見ないままの人も一杯いる。

その人が音声配信をやめてしまったら、他に接点はない。

それでも、時間を共有できたことにはありがとうとどうしても伝えたかった。届いたかどうか分からない。だけど、こうして思った通りの行動を自分が取ったことで、私の中に後悔はなくなる。

どうしてもこの曲を伝えたくてライブを立ち上げた。

曲の終わりが近づくのが悲しくて、最後の最後、ためてためて、ゆっくりゆっくり弾いた。曲が終わったら、完全にその人との接点は切れてしまうと言うさみしさを感じながら。そして曲には終わりが来た。

淋しいけど、すがすがしい。もうこれで心残りはない。

終わりが見えてきたら、決して後悔のない行動を取ろうと、前から思ってはいたけれど、さらにさらにその思いが固まった。

今、終わりはいつか、全く見えないけれど、いつ終わりが来たとしても後悔することのないように、自分の心と向き合い、日々を重ねていく。


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