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戦後の焼野原から再興した温泉宿が、ライフスタイルホテルへ。先代から使い続けるシャンデリアに、リノベーション業の根幹を見た。

観光客をはじめ様々な人々が行き交う、西新宿。

淀橋浄水場が転居した広大な跡地に、副都心計画で誕生した中央公園は、いまでは都庁を覆い尽くさんばかりのオアシスを形成している。

そんな一帯を目前に控えるモダンなライフスタイルホテルが最近のお気に入り。2018年にいちご (2337) の買収で業態転換を果たした老舗で、最初期は戦後の焼け跡からスタートした温泉宿だった。

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重厚なインテリアとインターナショナルなゲストが行きかうメインホール。象徴的なのは前身のころから変わらないシャンデリア。今でも私たちを魅了するそのフォルムから、当時においても最先端だったことは想像に難くない。

その一つ一つに封入される電球から降り注ぐ光に、歴史と入れ替わりの儚さを感じる。フィラメントも美しく、シャンデリアから手を差し出す様に延びる光は、ほのかに温かく思え心が安らぐ。

やっぱり美しい光は白熱電球じゃないとだめなのだ。

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おもえば様々な場所で、照明の主役がLEDに取って代わられているようだ。
ちょっと前に“白熱電球2個でLEDと交換!”というキャンペーンを見た記憶がある。リードオフマンは都庁にいるあの人だ。ふと気づいたら、照明界隈では隅に追いやられてしまったようだ。

「ぼくはまだここで頑張ってるよ~~~」という電球の声が聞こえてきそうだ


白熱電球をエジソンが発明したのは1879年10月。実は英国ではそれよりも早い、1879年2月に特許が取得されていた。
それでもエジソンが発表したのは電気供給システム全体を含めたプロダクトだったというのが、エジソンの方が一枚上手だったといわれるゆえんだ。


いまでもエジソンが考えた仕組みは大して変わっていない。主原理としてフィラメントの発光を使う白熱電球には、ものの燃焼やろうそくの揺れに代表される、1・fのゆらぎがあるという。

LEDや蛍光灯に人類が出会ってから半世紀足らず。欧米ではまだまだ白熱ランプが主流で蛍光灯やLEDは忌避されているという。
ヒトのDNAにとっては、たいまつにまでルーツをたどれる、白熱電球の方が自然体なのかもしれない。。。


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2階のメインバーからシャンデリアを眺め、そんなことをつらつら話していると、うんうんと聞きに徹していたバーテンが言いずらそうに口をひらいた。
「じつは白熱電球に見えるLEDなんです」という。

なんと LEDなんだと・・・

近くにあった電球を見せてくれたが、言われてみるとそうかもしれない。何ともよくできた擬態だ。


「環境にも配慮しなきゃいけないですからね うちって共生社会みたいなところも重視してるじゃないですか、懐古的なだけじゃやっていけないんです」
手元のグラスを洗い場に送りながら語る。
「それに、高いところの電球交換って結構手間取るんですよ。」

なるほど 取り残されていたのは、僕の方だったみたいだ。

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「シャンデリア自体は先代のオーナーの物をそのまま使っています」

リノベーション案件で業態転換をした背景があるだけに、その言葉は重い。

「デザインは変えずに中身を時代に合わせて変えてゆく、時には柔軟性も大事です。」

「コアがしっかりしていることが重要です」

きっと戦後の焼野原から代々受け継いだホテルを買収させるという選択肢自体、悩みに悩んだ選択だっただろう。

これが英断だったのか、はたまた時代に流されることになるのか、いずれにしても今判断すべきことではないように思う。

だがすくなくとも、老舗とインバウンド需要が呼応して、よい化学反応が起きているのは間違いない。

ゲストと楽しそうに会話するスタッフを見る限り、そう思えた。

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そして、カウンターの上では、”ほんもの” のキャンドルのあかりがゆらゆら、1/fのリズムで、きらめいていた。



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