panpanya「魚社会」(白泉社)
表題作は24ページの短編漫画。主人公が働く漁港に、足の生えた魚が水揚げされたところから物語が動き始める。「ゆるい」ようにも見える絵柄に、時折写実的な背景やアイテムが登場することから、視覚的に楽しい漫画でもあるが、今回はストーリーに着目したい。
単に足が生えていただけだった魚は日に日に進化を遂げ、ついには自ら履歴書を持って漁港に水揚げをされにくる魚までもが現れる。労働者としての魚は薄給にも関わらず文句ひとつ言うこともなく、そのけなげさにはアンデルセン童話の人魚姫を思わせる。
けなげに愛を貫き泡となった人魚姫。対して、魚たちは綿密に漁港を運営する会社の中に自分たちの社会をつくりあげていく。労働者は余計なことを考えない方が苦労なく、システムから逸脱しないことは楽でもある。しかし、まったく予想もつかないことをやってのける魚たちは、別の可能性を見せてくれる
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