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「歌ってないと死んじゃうやつの歌が聴きたい」りんご音楽祭主催者dj sleeperの原点・DJ MAMEZUKAさんと対談【ココが変だよ、りんご音楽祭vol.3 前編】

長野県松本市で毎年開催される音楽フェス、「りんご音楽祭」。14年目となる今年は5ステージに拡張し9月23日−25日に開催決定。

そもそも、「りんご音楽祭」って?他の音楽フェスと何が違うの?フェスのHow toとは?……etc主催者のdj sleeperを中心に、その他の運営メンバーや、出演者へのインタビューなどを通じて、りんご音楽祭について紐解いていきます。お相手を務めるのは、2001年生まれのフェス初心者、長崎航平。根掘り葉掘り、「りんご音楽祭」の魅力を探ります。

そのりんご音楽祭を主催するdj sleeperがこのフェスを始めることになった原点とも言える存在であると語るDJ MAMEZUKAさんをゲストにお迎えしての今回の収録。MAMEZUKAさんにお伺いする、りんご音楽祭の”ココが変”もあわせてお楽しみください。

▽「dj sleeperの原点はDJ MAMEZUKAにある」

長崎:さて、今回もゲストの方をお迎えしています。まず最初に簡単に自己紹介をお願いします。

DJ MAMEZUKA:京都を拠点にDJしてます、MAMEZUKAです。

長崎:sleeperさんによると、「dj sleeperの原点はMAMEZUKAさんにある」と。

sleeper:MAMEZUKAさんと出会ったことをきっかけに、俺はこういう人生を歩むことになったんですよ。

DJ MAMEZUKA:そうなんか。ほんまごめんなぁ(笑)

sleeper:いやいやいや! 

長崎:お二人の出会いの経緯と、「原点」だと断言する理由を教えてください!

sleeper:俺は、朝霧JAMってフェスのスタッフをずっとやってたんですが、新潟の中越地震が起きたときに、朝霧JAMの運営会社がチャリティーのイベントを冬の苗場で開催したんですよ。そこにMAMEZUKAさんがブッキングされてて、俺もそこでDJをすることになったんです。

sleeper:そのあと京都に遊びに行って、MAMEZUKAさんがDJやってるパーティーないかなって検索して出てきたのが、第二水曜日にメトロでやっていた「FANTASIA」ってパーティーで。

MAMEZUKA:よう覚えてるなぁ。

sleeper:だって俺、その当時はFANTASIA中心に毎月のスケジュール組んでたぐらいっすよ。で、何がそんなによかったのかって言うと、それまで、クラブとかDJって若い頃にやる遊びだと思ってたんです。でもFANTASIAに出会って、これって一生やるもんなんだなってわかった。それで松本でやってた「瓦レコード」を、レコード屋さんから改装してパーティーハウスにしたんです。

長崎:へー!

sleeper:それから、ことあるごとに重要なパーティーにMAMEZUKAさんに来てもらっては、「あれじゃあダメだ」とか「よかったよ」とかいろんなアドバイスをもらってます。俺の歴史をずっと見てもらって、今に至るわけです。

長崎:今の話を聞いてどうですか?

DJ MAMEZUKA:……すごいなぁ。。

長崎:(他人事……笑)

DJ MAMEZUKA:ほとんどの人は、ちょっとしたきっかけで何かをはじめても、何年かしてもうやめてしまう。sleeperは、何回もコケてんねやけど、しぶといね。すごい。ここまで続けられる人はそうそういないと思います。

sleeper:じゃあおれの特技は「続けること」ですかね。

長崎:しぶといことかぁ。

DJ MAMEZUKA:だけど、今残ってる人たちはみんな当たり前やけど「続けてきた」人やからね、しぶとく。

▽野外音楽フェスの新しい形を作った「りんご音楽祭」

長崎:では、「りんご音楽祭」の話もしていけたらいいなと思うんですが……。

sleeper:実際に、クラブ、レイブやパーティーシーンに長年関わっているMAMEZUKAさんが「りんご音楽祭」をどう思っているのか、すごく興味がありますね。

DJ MAMEZUKA:一番最初の「りんご音楽祭」が始まった時は……、「どこにもない」フェスというか。

長崎:なるほど。

DJ MAMEZUKA:「りんご音楽祭」みたいなフェスを求めていた人は、実はすごくいっぱいいた。でも、そういうフェスは、まだ誰もやっていなかった。

長崎:何か他のフェスとの決定的な違いはあったんですか?

DJ MAMEZUKA:ん〜。なんやろ。いわゆる「フェス」に呼ばれないアーティストがいた。あとはミックス具合やな。ほんまジャンル関係ない。そういう、「新しい形」を作った感じはあったな。で、あのねぇ、最初はやっぱりはじめたばっかりやから、「もっとこうしたらええのに」とかあるやんか。そういうのを、毎回ほんとにちょっとずつ形にしていってるんよね。最初はほんま自分たちだけでやってたもんね。

sleeper:ほんとにひどかったっすねぇ。一年目のスタッフ、半分以上女子高生でしたからね。

長崎:(笑)

sleeper:そんなフェス聞いたことないよね。今考えると意味不明だよ。とにかく、手伝ってくれる人に全員手伝ってもらったら半分以上女子高生だったっていう。

DJ MAMEZUKA:そっからはじまって今やからね。本当に全部形にしていってる。それはすごいなと思う。

▽「ブッキング、全部一人でやってるって嘘だと思ってました」


DJ MAMEZUKA:あとすごいのが、出演者をさ、ほとんどsleeperが決めてるやろ?

sleeper:そうっすね。ほぼほぼ俺です。

DJ MAMEZUKA:基本的にsleeperが出演者の音楽をみんな聴いて、それで判断してるから。いや、ほんま当たり前のことやねんで? でも、それぞれ何人かでやるのが普通やねん。じゃないとできんからさ。それを一人でやってるからさ、sleeperは。

sleeper:まぁね。20組くらいのブッキングだったらできるなと思うけど、正直自分でやってて200組とか無理だよ。

DJ MAMEZUKA:やってるやんけ(笑)普通できひんから(笑)

sleeper:うちとかもう、全部俺がやってるからさ。精一杯やってるけど、アーテイストごとの連絡とか対応は、やっぱり他のフェスみたいに手厚くはできてないと思う。それでも許してくれるアーティストが出てくれてるって感じかも。

DJ MAMEZUKA:あんまり手厚さを求めてるわけじゃないからさ。信頼できるか、信用できるかってことやんか。曲を聴かんでブッキングしてるやつとかもいっぱいおると思うで。単純に売れてるからとか、人気が出てきたからとかな。そういう基準やないやんか。sleeperが、全部の出演者の曲聴いてやってるからや。

sleeper:普通じゃないすか? そんなの。

DJ MAMEZUKA:普通やねん、普通やねんけど、それを一人でやってるっていうのは、普通じゃない部分も絶対あるはずやねん。20組とか30組とかならわかるけど、200組を一人でやってるって。

sleeper:今日も言われましたね、ブッキング一人でやってるの嘘だと思ってたって。

長崎:嘘だと思われちゃうくらいすごいことなんですね……。

▽やっていくほどアンダーグラウンドの人たちが増えていく

DJ MAMEZUKA:それから、やっていけばいくほどお客さんも増えていくし、アーティストも増えていくやろ。そうなっていくと、わかりやすくメジャー化していくやん。そしたら、アンダーグラウンドの人らとかがだんだん呼ばれなくなったりするんやけど、sleeperのすごいところは、それが逆やねんな。やっていくほどアンダーグラウンドの人らは増えていく。

sleeper:俺、そこはそんな意識してないんだけどな。

DJ MAMEZUKA:「りんご音楽祭」の規模やったらさ、アンダーグランドの人は普通呼ばれなくなるんよ。でもsleeperは、メジャーなのも、アンダーグランドなのもちゃんとピックアップしてる。やろうと思ってる人もいっぱいいると思うけど、なかなかできんよね。一般の人に知られるようなアーティストいっぱい呼んだ方がお客さんも呼べるかもしれへんし、コアなことやってたら、逆に引かれるかもしれへんやん。そこをあえて、お客さんが入り出したここ数年でさらに力入れてやってるっていうのがすごいよなぁ。

sleeper:けど、逆にそれができるようになってきたってことじゃないですか。影響力がないとできなかったですよ。

DJ MAMEZUKA:できてもやらへんやん普通は。sleeperが意識してないだけやねん。

sleeper:そうか……。


▽歌わないと死んじゃう人の歌が聴きたい。パーティーやってないと死んじゃうやつのパーティーに行きたい。


長崎:規模が大きくなるほど、メジャーなアーティストの比率が増えていくことが一般的なのに、その真逆でどんどんいろんなアーティストがミックスされていくフェス……。人気が増すことで、出演者をお客さんのマジョリティーに合わせていっちゃうみたいな現象もあるのかなと思うんですが。

sleeper:いやでも、逆じゃん。それは順番が逆だよ。だって、お客さんが求めてるからその曲ができるわけじゃないじゃん。その曲ができたから、その曲を求めるお客さんがついてくるでしょ。でも、ビジネス的にやる人たちは逆にしがちなのかな。その方が楽だからね、実際。お客さんが求めるものを作った方が、わかりやすいし、リスクがないじゃん。

DJ MAMEZUKA:そやねん。

sleeper:でも、なんかね、それをビジネスとしてやるのは全く問題ないし普通のことだと思うんだけど、音楽でビジネスやるんだったら、他のジャンルでビジネスやりなよって思う。別に音楽業界でビジネスできるくらいビジネスの才能ある人は、音楽以外だったらもっと成功するんだろうな、って俺は思っちゃうな。 わざわざこんなハードな業界選ぶ意味なくね? って。そう思いません?

DJ MAMEZUKA:sleeperは、「好き」でやってるからさ。それが原点やんか。

sleeper:「儲かるから」って音楽業界やる人って少ないと思うけどね。だって、全然儲からないもん! そもそも儲けるための業界じゃない。わざわざそういうハードな業界でやってるんだから、ビジネス的な「安全」を優先しなくてもいいんじゃないかな、って。

長崎:たしかに。

sleeper:理屈はわかるけど、やめたら? って思うよ。大変だから他の仕事をした方がいい。やっぱり、そこまでしてでも、「音楽」しかできない人たちがやる仕事だと俺は思ってるから。仕事だと思ってない人もいっぱいいるしね。やっぱり、歌わないと死んじゃう人の歌が聴きたい。パーティーやってないと死んじゃうやつのパーティーに行きたい。その純度は常に追い求めてる。面白いもので、お客さんも正直だから、そういうのにちゃんと反応するんだよね。

DJ MAMEZUKA:そうやな。お客さんはそんなのわからへんくても、感じてはいるよね。

sleeper:ビジネス的な部分があるから、いろんなものが成り立ってるのをわかるけどね。俺もできることならビジネスしたいよ! お金なさすぎてつらいから。

DJ MAMEZUKA:でもな、「好き」だからできてんねやんか。

長崎:音楽が「好き」だから、しぶとく続けてきて、今があるんですね。それでは後半は、これからの「りんご音楽祭」についてお話うかがっていけたらと思います。



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