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[第3回] システム大改革の舞台裏!?

リンエイ株式会社は、岐阜県に本社を置く自転車関連アイテムの商社。
「商品開発力」「サービス提供力」「現場主義」の3つの営業コンセプトに基づき、サプライから商品開発まで手がけています。
オープン社内報RINZINE(Rinei Interview Magazine/リンジン)では、
リンエイで働く人、リンエイに関わる人に、熱い思いを語っていただきます!

今回ご登場いただくのは河田幸康さん(営業促進部 営業2課 課長)、熊澤圭紘さん(商品管理部 主任)。前回取り上げた「土曜祝日配送」に関連して、SKU8000※に及ぶ商品を即日発送・最短翌日納品できるシステムをどのように構築したのか、その秘密に迫ります。

※SKU8000:SKUとはストック・キーピング・ユニット(Stock keeping Unit)の略で、受発注や在庫管理を行う際の最小の識別単位。SKU8000とは8000品目を指す。


お客様のプラスにならないと意味がない

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――早速ですが、リンエイでは現在SKU8000、つまり8000種類もの商品を取り扱っており、在庫管理や受発注・出荷まで一つのシステム上で行われています。まず、このシステムが導入された背景は?

河田課長(以下 河田)
:営業2課 課長の河田です、本日はよろしくお願いします。2012年の12月に今のシステムが稼働しました。導入前はシステム上の在庫管理が一切できていなくて。人の目で見て「これがなくなったな」とか「減ってきたな」っていってメーカーさんに商品発注する状態。だからお客様からご注文いただいても在庫がない、ということも多々あったし、どこにどの商品が置いてあるかといういわゆるロケーションも、倉庫担当者の頭の中だけにあるような状態で。以前もWebからのご注文を受け付けてはいたんですが、それも手動だから、本当に商品があるかどうかはわからない。ですのでお客様から「これってホントに在庫あるの?」っていう電話がしょっちゅうかかってきてました。お客様の側でもバックヤードをどんどん縮小して、最低限の在庫しか置かないお店が増えてきていて。数字で見ても、1注文当たりの購入金額が3年で1割近く減っていました。つまり我々は、1社に大規模納入するのではなく、どのお客様にも、どんな商品でも好きな数だけすぐに納入できる体制を作る必要があった。売れる商品だけを安く提供しても値下げ競争に巻き込まれるだけで後がない。それが目に見えていましたから。

――システム導入によってどんな変化が?

河田:今はお客様が発注サイトで欲しい商品をカートに入れると、システム上で在庫が一時引き当て(取り置き)されて、13時の出荷の締め切り時間までは商品が確保されます。リアルタイムの在庫連動によってWeb上で本当に(笑)在庫の確認ができるようになって、当然お電話はなくなりました。以前は検品も人の目でやっていましたが、バーコード検品の導入で商品の誤出荷も減りましたね。出荷量によって変動はしますが2012年は月平均で30以上、2014年には月平均10件以下になっています。商品マスタの登録数も増えて、常備在庫の取り扱いも約3000SKUから5000SKUに。システムを導入した翌年に経産省のIT経営企業に認定されました。もちろん、商品管理の力もあって。


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熊澤主任(以下 熊澤):商品管理部 主任の熊澤です。僕はシステム導入後に入社したので過去の話は知らなくて。ただベテランの方に聞くとロケーションがない、限られた人しかピッキング(商品を集めること)できない、机の上じゃなくて地面で作業してたと聞いて、えっ…、って。棚管理やシステム管理とは無縁の世界で、在庫状況の即日回答とか商品の即日出荷なんて、夢のまた夢だった、って。

河田:本当に地面に物を並べて、あれがいくつで、ってやってたんだよ(笑)。

――システムを導入する際に大変だったことは?

河田:一番大変だったのは、なぜシステム導入をしなければいけないかを理解してもらうこと。受注や発送がどう連動すればいいのかの仕組みを、みんながわかってないと成り立たないので、そこまで落とし込むのにしばらくかかったと思います。認識の共有のためによく話し合いました。(システムが)お客様のプラスにならないと意味がないので、お客様の要望がこうだから、こうしようとか、日々話し合いながらやっていったと。

熊澤:上からある程度の方向性が示されて、あとはみんなで話し合って、というような?

河田:そうだね、手法の部分は現場に委ねられた。みんなに主体者意識を持たせるためだったのかな、今思うと。とにかく、やり方をみんなで話し合いました。でも実際は一度導入を延期してるんです。システムとホームページを連動させるときデータがちゃんと入ってないのがわかって、急ピッチで直した。棚卸しの情報をもとにデータを入れたけど、導入時期と情報がズレていた。だから、(当時の)棚卸しと同じやり方で一個一個在庫の数を拾って、イチからデータを作ったと思います。最初は人海戦術でしたね。

熊澤:棚卸しも、今はデータでできますけどね。

河田:昔は会社を1日休みにして全社員で棚卸しをやってました。自社カレンダーに棚卸しの日が書いてあった。今はデータで在庫がわかるから棚卸し日は消滅(笑)。厳密に言うと、日々の作業の中でロケーション単位の棚卸しが行われて、調整されているんです。一度に大規模な棚卸しを行うとヒューマンエラーでミスが起こる数も大規模になってしまう。商品が入ってくる数と出ていく数がシステムで把握されるからこそなせる技です。ホント。前は注文が入ったら、担当者が在庫を倉庫に走って見に行ってたし、引き当てなんて、ホントに商品を机まで持ってきてた。今はデータ上で確認するのが普通だし、誰でもわかる。仕事がすごく楽になりました。誰でもわかる、できるという部分はロケーション導入が一番大きいですね。どこに何があるか、誰でもわかるようになった。

――誰でもわかるロケーション設計は、実は難しいのでは?

熊澤:確かに。でも「仕事をいかにシンプルに、簡易的にするか」というのが上司から与えられたテーマだし、誰がきてもすぐ戦力になれる仕組みづくりを常に考えて、どんどん改善していかなきゃと。例えばですが、僕が入った頃は、この建物をぐっと迂回して商品を取りに行かなきゃいけなくて、そういうのがめんどくさいよね、時間がもったいないよね、って部署内で部下と話して変えてきました。よく出る商品を近くに配置するとか、ピッキングひとつに時間をかけない方法をずっと考えています。


自転車業界のLG※をリードする秘訣

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――リンエイでは8000SKUの95%を即日発送しています(2019年調べ)。

河田:お客様の欲しい商品をより速くお届けしたい、というのが大きいですね。取引先の多くが自転車の販売店様なので、急遽修理必要になる部品とか、お店が定番で在庫してない商品が多くて、それを注文していただける。でも中にはウチも在庫してなくてメーカーから取り寄せる商品もあって、それをなるべく減らしていきたい。受注の頻度が高いものはウチの在庫品としてどんどん採用していっています。今のシステムなら商品ごとの出荷量がすぐわかるので「これの在庫を厚くして」っていう相談もしやすい。SKU8000というのは、リンエイのカタログとWebの掲載商品の数で、以前は(メーカーからの)取り寄せ品も載ってましたが、今は全て在庫しています。だから基本的には即日発送できるんです。

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――その仕組みをつくるのが熊澤さんのお仕事。

熊澤
:受注の翌日届けるには、当然当日出荷が条件になります。僕が入社した2、3年前は、システムはあるものの、運送会社さんの集荷に間に合わないときなんかは、まだ営業さんにも出荷を手伝ってもらうことがありました。ここ1年でだいぶ変化してきましたね。

河田:前は月曜日はたいてい手伝ってた(笑)。

熊澤:今は部署内で出荷を間に合わせられるようになりました(笑)。変えたのはピッキングを少しでも速くする動線の組み方、ロケーションの組み方、あとはピッキングと梱包で人員の振り分けを工夫したりも。それと梱包用の段ボールの種類も減らしました。前はめちゃくちゃ種類があって、どれを選べばいいかわからないから、慣れた人しかできなかった。それを半分に減らすことで誰でも梱包作業ができるようになったし、人員の振り分けもしやすくなりました。今リンエイでは、社員=管理業、パートタイマー=実務業と定義づけられています。繰り返せるルーティンワークはパートさんの役割で、実務の効率化や問題解決など、クリエイティブな要素が必要な管理業は社員の役割。社員が実務を行っていると問題解決が先送りされてしまうので、常に問題解決が行えるように役割分担をはっきりさせています。役割によって職務内容を明確にすることで、常に問題解決を行って、変わり続けることができるんです。

――しかし、ロケーションをひとつ変えるだけでも周知が大変では?

熊澤:いや、それは、システムと連動しているので。商品マスターに「ロケーションが変わったよ」と入力すると、出荷指示書に反映されて、そこに商品を取ってくる順番も全部書き出されます。たくさんの棚をあっちこっち行くのは大変でしょう?だから、こっちから順番に取っていってねと自動で指示が書かれます。

河田:さっきも話しましたがかつては問屋さんがウチの主な販売先で、ケースでの出荷が多かったけど、主な販売先が小売店様になっていわゆる多品種小ロットの出荷がどんどん増えて、出荷作業が複雑になって。「なんとかしないと」と現場でも思っていたところにシステムが導入された。今、本当にいろんなところから少ない単位でご注文があるので、先取りといいますか、この体制にしておいて良かったですね。

※LOGISTICS、物流


未来を先取りしていこう


――南山大学と共同でさらなるシステム改革に取り組んでいるそうですね。

熊澤:こちらから南山大学の理工学部にアプローチして快諾していただき、2021年の4月から月1回リモートでミーティングをしています。私たちの課題を学生さんの研究テーマにしてもらい、数学的に解決してもらうんです。今取り組んでいるのはピッキングの効率化。1年間のデータを分析して、この商品とこの商品がよく一緒に出るとか、このお客様の注文はこのエリアに行けば揃うとか、数値的なアドバイスをもらって、すごく助かっています。僕らとは違う目線で意外な質問がきたりして、いい刺激をもらっていますよ。来期も依頼したんですが、学生さんは研究課題を探しているんだそうで、喜んで引き受けてもらえて嬉しいです。win-winですね!

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河田:議事録やミーティングの動画が社内で公開されていて、僕も見てます。会社のプラスになればいいですよね。

――次世代技術RFID※の導入も検討されているとか。

熊澤:まだ勉強中ですが、(RFIDの)メーカーとコンタクトを取っています。今はバーコードで一つずつピッピッピッって検品してますけど、RFIDは超音波だから、箱に入れたまんまで何がいくつ入ってるか、ちゃっ!とわかる。バーコード検品の数十倍の速さで検品できたり、瞬時に棚卸しできて在庫の精度が相当上がるので、お客様に今より更に正確な在庫情報をお伝えできます。いずれは在庫情報を○△×じゃなくて、実数で表記できるはず。

河田:ウチには8000SKUの商品があるけどパッケージがまちまちで、1箱に何個入ってるのかとか、多少知識がないと判断できない部分がまだあるんだよね。だけど、検品を本当に誰にでもできる仕事にするには、RFIDとか次世代技術への期待は大きいね。

熊澤:アパレル業界では導入が進んでるんですよね。でもウチの商品はボタン電池1個というのもあるから本当にコストが見合うのか、金属素材との相性にも課題がある。でもメーカーと一緒にRFIDの技術も進化させていけたらいいですよね。自分としてはRFIDに限らず、何かまた5年ぐらいかけて大胆なシステム改革をやってみたい。具体的にはまだネタ探し中ですけど。これからはどんどん人材不足になりますから、特別な技術がなくても誰でも仕事ができる「スキルレス」なしくみを目指していきたいです。

河田:今はSKU8000ですがSKU10000を目指して動いていますから、その意味でもシステムの進化は重要。一気には無理ですが順番に取り扱い商品を増やしているので、ここ1、2年で達成できると思います。

※RFID:電波を用いてタグのデータを非接触で読み書きするシステム。複数のタグを一気にスキャンしたり、遠くのタグの読み取りができる。

[インタビュー 控え室]

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営業促進部 営業2課 課長 河田幸康
リンエイに入社して13年。もともとIT関連の仕事をしていてネットショップを担当する予定だったのですが、なぜか営業担当に。自転車のことは全く知らずイチから勉強していきました。リンエイはみんな親しみやすく働きやすい会社で、安心して日々過ごしています。

商品管理部 主任 熊澤圭紘
少し前に2ヶ月の育休を取りました。リモートでちょっとだけ仕事の状況確認しつつ。リンエイでの男性の取得者第2号。3人目の子どもで育休を取ったのですが、上の子たちは最初の1ヶ月はほとんど会えなかったけど、末っ子とはずーっと一緒にいられて、すごく良かったです。











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