この星のどこかにいると知っているだけでいい
風のたよりにきいた
メークインのメー君が、フライパン地区の公園で、時々日向ぼっこしてるってことを
ローズマリーのマリアは自宅のビーズクッションに寝転んで、スマートフォンとにらめっこしている
SNSのおすすめに、メー君とおぼしき人物が出てきて、クリックしてしまった
この投稿に写り込んでいるこの噴水は、もしかしたらあの公園の噴水かもしれない
アプリのマップで写真を見比べてみる
この呟きはメー君の呟きかもしれない
この花木の投稿の仕方、この文章の呟き方、メー君だね
もう何年も忘れていたのに、ふと風のたよりにきいたうわさが、マリアの心の奥のほうに置きっぱなしにしたままの、記憶に触れて、好奇心というか、怖いものみたさというか
会いたいとか一目みたいとか、そういうのではなくて、ただ、メー君がマリアの人生のほんのひとかけらを形成しているということで、追跡の欲求が生まれているのだった
これはメー君の呟きだ
メー君、変わっていない
メー君の視点が好き
メー君、パパになったんだ
メー君はぶれないな
メー君はわたしの生き方とは真逆の生き方をしてるな
でも、メー君はわたしと少し似てるな
メー君という人に出会えたことがラッキーだったな
メー君
マリアはビーズクッションに寝転んで、まだスマートフォンとにらめっこしている
なかよしのコブタたちがその回りをくるくると走り回っている
マリアはスマートフォンを机に置いて、コブタたちに声をかけた
「カフェオーレいれるけど、飲むひとー?」
おおきなコブタが「はーい、欲しいでーす」と返事をした
マリアはコーヒー豆とフィルターを用意して、コンロに火をつける
メー君が淹れてくてたカフェオレが最高に美味しかったことを思い出しながら
でも、このコブタたちと一緒に飲む自分で淹れたカフェオレも最高に美味しいことも知っている
火にかけた細口のやかんがシュルシュルと湯気を吹いているのをみて、マリアはニンマリと笑みがこぼれたことには気づかず、火を止めた
もう部屋中にコーヒーの香りが満ちてきている
おしまい
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この物語はプードルのきょうだいが店員をしているSTORY CAFEで提供しています
次回の物語は「忘れるぐらい夢中にしてくれて」です
吾亦紅のモ子、ラズベリーとブラックベリーの少女が出てきます。
コーヒーも出てきます。
挿絵はすべてオリジナルです
マリアは自宅のローズマリーの苗がモデルです。ローズマリーはジャガイモ、豚肉と相性ばっちりですよね。この物語の裏話です。
物語を思い浮かべながら、絵を描くのはとても楽しいです
金曜日更新を予定しています
最後までお読みいただきありがとうございました!
良い週末をお過ごし下さい
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