スペイン4 待ち合わせと別れの舞台
旅にまつわる音楽を聞きながら、記事をお楽しみ下さい♪
ホームステイの約束
スペインの首都マドリードでは、半年前のウィーン語学研修で本当の兄弟のような絆で結ばれたハビの家に、ホームステイさせてもらうことになっていた。
「ウィーンに留学する前、親友と旅行するんだけど、スペインにしたよ!」
「最高!絶対にマドリードにも来て、僕の家に泊まってよ。家族みんな、大喜びだよ!」
海外にもできた「弟」
生まれてから長らくシスコンだった弟(1ハワイ、2シンガポール、3マレーシア、4オーストリアのエッセイに登場)を可愛がって来たからか、弟が11歳で姉離れをしてからも、私には日本で、たくさんの弟ができた。
習い事、サークルなどでできた弟達は皆、とても可愛く優しかった。
でも、まさか海外にも弟ができるなんて、嬉しい驚きだ。
海外の弟第一号は、このスペインのハビだった。
待ち合わせは、世界有数の美術館にて
私とみゆは、そのハビとマドリードのプラド美術館で待ち合わせをしていた。
美術館は、さすがスペイン首都の美術館だけあり、ゴヤの「着衣のマハ」やベラスケスの「ラス・メニーナス」、ムリーリョの宗教画など、スペインの名画家の作品が楽しめた。
そこに、実はギリシャ人だがスペインでも重宝されたエル・グレコの力作なども並ぶ。
「どの絵もタッチがはっきりしていて印象が強いから、飽きないや」
「そうだね、“着衣のマハ“のポーズ、弟のハビ君の家でやってみたら?あっ!そろそろ待ち合わせの時間だね」
「みゆも、一緒にお家に行けたらいいのになぁ……」
「ほんと……!マドリードから日本への飛行機、もっと増やして欲しいわ」
再会の瞬間
時間が近づきプラド美術館を出ると、「Rina!」と大きな目を輝かせて駆け寄って来る、お洒落な青年がいる。
「やっと会えたね!」
背は180cmとスペイン人にしてはとても高いが、少年の様に可愛く愛らしい心を持った弟に抱きしめられ、私はとても幸せだった。
みゆのこともよく話していたため、ハビはみゆの事も長年の親友のように抱きしめた。
「きゃっ!」
「君のこと、Rinaからいつも聞いていたよ。会えて嬉しいよ!少しだけでも、お家に遊びにおいでよ?」
「もちろん行きたいんだけど、もうすぐフライトだから、バスに乗らないといけないんだよ。ハビがウィーンに来るって、Rinaから聞いているよ。私もウィーンに遊びに行くから、絶対また会おうね!」
みゆがプラド美術館前からまさにバスに乗り込む時、すっかり気分はスペイン人になっていた私達は涙が出そうな位、情熱的に抱き合った。
ハビに温かく見守られる中、みゆと私はマドリードの中心・プラド美術館で別れたのだった。
待ち合わせ、そして別れる場所は大切
プラド美術館は私にとって、世界有数の美術館というだけではなく、スペインの弟と待ち合わせをし、親友みゆと別れた特別な舞台になったのだった。
私達3人は半年もしない内に、本当にウィーンで再会を果たすが、約束を果たせたのは、私達の待ち合わせと別れの舞台がプラド美術館だったのも関係していたのかも、と今でも笑いながら話すのだった。
たかが待ち合わせや別れ、されど実はとても大切な、待ち合わせや別れ。
日本でも世界でも、どこで待ち合わせをするかから物語は始まっている。
大切な人との待ち合わせやお別れの場所は、ずっと忘れられない、思い出になる場所を選ぼう。
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