【詩】夜誘い
右を向けばあなた。息を吐けば彼方。夜に響くソナタ。欲に満ちる夜鷹。
隣には誰も立っていない。帷には影も這って来ない。
季節に沈み込む。素面で踊り狂う。青白く揺蕩う。摩擦なく彷徨う。
こっちにおいでとあなたは歌う。
音楽になれば良かった。夜が苦にと言って笑った。染まるにはまだ早かった。澱まずに流れたかった。
困り顔は柔らかく崩れて。世迷言は堆く積まれて。来ない夜を予め呪って。止り木は空高く吊るして。
樹々はせせら笑う。日々が目減りする。
こっちにおいでとあなたは唄う。
傾く夜に深く微睡み。逸る意識に揺らぐ心。
見ず知らずの行き先。道標は目と鼻の先。
こっちにおいでとあなたは詠う。
こっちにおいでとあなたは謡う。
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