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【Superfly】“0”リリース記念イベント【ライブパート】

Superflyは、とても丁寧に言葉と向き合う。
活動休止期間に、段々とフラットに、ゼロの状態になったという心で作られたアルバム・0(ゼロ)は、越智個人として、そしてSuperflyのプロジェクトとして、音楽に対峙するスタンスがとても明瞭に表れている。一方には包み込むような温かい楽曲、もう一方には越智のルーツでもあるロックを感じさせるパワフルな楽曲。ゼロの状態で作り上げられたアルバムは、自然な言葉と幅広い楽曲によって、越智の表現者としての姿を巧みに描いている。
 
『Ambitious』で伸びやかに包み込むように始まったフリーライブ。高倍率を勝ち抜いた500人のファンとの距離の近さに感激するように笑顔を見せた越智は、表情豊かに日常の風景を輝かせていく。
2曲目はがらりと雰囲気を変えて『gemstone』。包容力のある1曲目とは裏腹に、小さな会場を震わすほどの声量で一気にロックライブを作り上げた。
続く『覚醒』では、背後に投影された映像と際立つキーボード、ギターの音と相まって立体の音の世界が作られる。サビの変拍子では越智の声が音の立体の中心に突き刺さる感覚があった。

のちのトークパートでも、自由にコンセプトを決めずにアルバムを制作したという話があったが、それはこの曲調の幅によく現れている。非常に短いこのライブで、捕らわれない自由さとそれを歌いこなす実力を明確に見せつけたのは流石としか言いようがない。1曲の中でも様々な表情を見せる越智の歌声だが、豊かなその人間らしさはロックであれポップスであれ、その音楽を聴く誰かによく刺さるのだろう。

「ないない、ではなく、「ある」ものを感じてほしい」という『gifts』は、中学生の合唱曲として作られた楽曲である。中学生以外にももちろん応用可能なこのメッセージであるが、あえて「中学生」という文脈で届けられることで、過去の陽報としての意味を持つようになる。身近な場所に「ある」、些細だけれど影響力を持つもの、あるいはそれに気づかないけれども確実にあるもの、そんなことを思い出させてくれる優しい曲は越智の包み込むような声に丁寧に包まれた。

「本当にフリーライブって短くて、次が最後の曲なの」という言葉に驚きを隠しきれないまま、ライブはラストスパートへ。「そろそろ覚えてくれたでしょう?歌ってね」というフリから、朝ドラ「スカーレット」のオープニングで朝を彩る、『フレア』である。ハンドマイクでステージを歩きながらファンと共に歌う。越智の笑顔は、小さな炎のような温かさがあった。
 
再びステージに戻ってきた越智は、ピアノの伴奏と歌のみのシンプルな編成で『Bloom』を披露。楽器の少なさはまるで感じさせない声量と、言葉が動き出すような抑揚。また、ぐっと音量を落とすところではピアノしかいないからこその繊細さ。1曲でこれらをどちらも表出させることができるのは、技術だけが為すことではない。
「自由に」「言葉に縛られずに」「自分の言語で伝えてみる」。トーク中、これらの言葉で語られた越智の音楽観は、名前のないグラデーションの感情や表情を、越智が歌にあらわすだけの豊満さを持ち合わせていることを示している。休止を経たSuperflyは自らの表情、感情を以て、明らかな進化を遂げていた。

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