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アカデミック読書会(第25回) 開催レポート - 「ナショナリズムの多様性」-

読書会概要

本日(6/10木)の読書会は、「社会主義革命が起こった国々で、ナショナリズムはどのように採用されたか?」をテーマに、ベネディクト・アンダーソン『想像の共同体』の「IX 歴史の天使」を読みました。

社会主義の受け入れられ方は国によって異なり、独裁的・専制的な社会主義国・共産主義国もある一方で、民主的な社会主義国・共産主義国もあります。その違いはどこから生じたのでしょうか? 中国とベトナムの歴史を紐解くと、その答えがわかりそうです。

対話での指摘にもあったとおり、ナショナリズムも一様ではなく、時代や地域でさまざまな形になって現れています。ナショナリズムは自然発生的な同胞愛的起源も持ちますが、時代が下るにつれモデルができるようになると、一方で、支配者側が自然発生的なナショナリズムを取り込み、自分たちの支配の正当化に利用した「公定ナショナリズム」も生まれました。

社会主義革命を起こした指導者層が、自身の政治的立場の正当性を示すために公定ナショナリズムを取り入れたとすれば、ナショナリズムの悪しき側面が目立つのではないかと考えました。

今回の読書会では、ナショナリズムがなぜこのように多様なのかを考えることができた会でした。ご参加されたみなさまには深く感謝いたします。

読書会詳細

【目的】
・社会主義国(中国)のナショナリズムが分かれば嬉しい
・革命とナショナリズムの関係性の理解が深められたら嬉しい
・「進んでいる」「遅れている」の理解ができたら嬉しい
・中国は今後一党独裁が続くのか?、を考察したい
・歴史を「覚えている」「忘れている」って何か?、気づきを得られたら嬉しい
・新しい読書会、こういう世界があるのか知れたら嬉しい

【問いと答えと気づき】
Q
・質問がつくれなかった
A(キーワード)
・非人格的
・国民を想像する
・遅れている、進んでいる
気づき
・どのように思想を植え付けるか、そうすることで指導者の立場の人がコントロールできる

Q
・社会主義革命を起こした国の共通点と相違点は?
A
・中国はナムベトといっていた
・アジアの弱小国が中国に対抗するために社会主義を取り入れた
気づき
・時代の波で変わっていく
・国と国との関係で変わる(内よりも外からの影響が強い)
・社会主義体制と言っても方向性がそれぞれ違っている

Q
・問いが作れなかった
・周恩来がイギリスに追いつこうとした、ということが頭に残った
・なぜイギリスを目指した(のだろうか)?
A
・答えはみつからなかった
気づき
・東南アジアから見るとヨーロッパはあこがれの国
・ベトナムの名前の由来、もとは中国からつけられた侮辱的な名前、名前の由来すら忘れて国を守ろうとしている、それがナショナリズム

Q
・「新しい」「古い」を探してみた。
・1930年代のベトナム、1960年代のカンボジアのことを考察した
A
・革命→古い配電盤と宮殿を相続したのは指導部であり人民ではない
気づき
・革命は新しいと思っていたが、古かった
・結局、決めるのは指導部

Q
・社会主義革命はなぜナショナリズムに帰着してしまうのか?
・すべての革命はイギリスの市民革命から始まる
・どの3カ国も先祖返りした(昔の遺産を引き継いだ)
・なんのための革命運動だったのか?
A
・結局、歴史って悲惨な歴史ばかり
気づき
・それでも希望を見出したい
・理想を掲げてもナショナリズムに着地してしまう

Q
・ナショナリズムはこれからどのようになりますか?
A(キーワード)
・発明
・海賊版
・忘れられる
気づき
・ナショナリズムは同胞感覚から始まった、それしかなかった
・発明されたものをどうやって使うか、が主張したかったことか?
・ナショナリズムの誤解を解かないといけない

【対話内容】
・指導部の話が中心(公定ナショナリズム)
・同胞愛的なナショナリズムは書かれていない
・国境線があるから争いがあるわけでもないのではないか?
・徐々に読み書きで文字がわかり始めると、国家が国民意識が植え付けられたのではないか?
・海賊版とオリジナリティ→いくらコピーしてもオリジナルはオリジナルであり、海賊版が広まると却ってオリジナルの価値が高まるのではないか?
・多民族かどうかで違うのではないか?
・中国は漢民族が少数民族を支配している(攻め、領土拡大)、為政者が強い
・ベトナムは弱小国家であったからこそ、自分を守ろうとする(守り)、民主国家、集団で守る
・ベトナムの社会主義(みんなで決める)は中国のもの(一党が決める)と異なる
・中国は独裁体制(共産主義ではない)、民主化を逃している、民衆は満足している?
・チリはみんなで社会主義革命を起こした(血を流さなかった)
・ナショナリズムはどちら(中国、ベトナム)の立場にもある、懐が深い
・華僑のネットワークはナショナリズムと関係があるのか?
・ナショナリズムのモジュールを取り入れているのは進んでいるが、生活の技術は遅れている
・ナショナリズムのよろしくない作用→戦争、自己犠牲など
・戦争、自己犠牲などはどうやったら避けられるのか?
→複雑性があるため容易には解決できない
・文化とか歴史を理解しないと争いが起きる(相手を尊重する)
・長い歴史のなかで人は忘れてしまうから、逆にナショナリズムが根付く
・記憶があると、恨みつらみが残る
・全部忘れてしまうと同じ失敗をするのではないか?(大事なものも忘れてしまう)
・争うのは原初的な行為でもある
・絵を見ていると時代が戻っている感じがする
・生き物がたどるべき方向とも見える
・体はDNAでいろいろな経験が継承されている
・体(生き物としての反応)や頭(思考としての反応)などいろんなところで反応している
・ゴリラの研究→ゴリラはその場ことしかない(記憶を持たない)、(だけど)殺し合いをしないわけではない(人間の争いとは異なる)
・文字による記録がナショナリズムの起源?
・ナショナリズムはなくなりそうにないが、今後どう発展する?
・言葉は自分で発したのに、自分のものでなくなっている(こんなこと言った?、と思うことがある)
・言葉は曖昧、わかったような気になったりする
・言葉は相互理解のためのもの? どこまで自分のもので、どこまで相手のものか?

【気づきと小さな一歩】
・ナショナリズムと革命が型として優れていたから、世界に広まった
・国別に型の違いを考えてみる

・螺旋状で発展していく
・ナショナリズムはその国々にあるが、国の利益だけを考えるだけではいけない

・海賊版、模倣してナショナリズムは発展した
・螺旋的に発展するのは何事もそう、世の常
・真似てみる

・型、ことば、有益性と限界性を認識した(思考は進んできたが、まだ曖昧さもある)
・いい選択をしていきたい

・ナショナリズムを遠ざけることはできても完全に見えなくなることはない
・距離ととりつつ、どうつきあうか
・ことばに力があると思うとよくない、でも、ことばがなくなるといいわけではない
・ことばもナショナリズムも実体はないのに、人の意識に残る
・前向きに付き合っていく方法を探す

・考えを共有することが大事、そこで気づきが得られる
・螺旋的発展の先にあるものは複雑系(分解をしても全体はわからない、関係性を見ないといけない、感覚で捉える)
・本を読んで考えを深める

次回の読書会のご案内

■開催日時・場所
・2021年6月24日(木)20:00~21:30 @ZOOM

■テーマ
・人口調査・地図・博物館は植民地国家が支配領域を想像する仕方をどう形作ったか?

■課題本
・ベネディクト・アンダーソン著、白石隆・白石さや訳『定本 想像の共同体 ナショナリズムの起源と流行』(社会科学の冒険II 4) 書籍工房早山

■詳細・申込み



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