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アカデミック読書会(第24回) 開催レポート - 「愛着」の源とは?-

読書会概要

本日(5/27木)の読書会は、「なぜ人々は国民(ネーション)に愛着を持つのか?」をテーマに、ベネディクト・アンダーソン『想像の共同体』の「VIII 愛国心と人種主義」を読みました。

ナショナリズムは、自分の生まれを変えることができない「宿命性」と、自分でその宿命性を受け入れたという「意思性」の間(はざま)に生じているとも考えられます。その相反する性質の融合が、ときに「自己犠牲」の物語として共有され、想像された「国民」を更に強化するのかもしれません。

ナショナリズムに見られる「愛着」の源とは何でしょうか? 「宿命性」を紐解くと、食や歴史など、日常において何気なく触れているものが起源になっているのかもしれません。日常の生活感覚、過ごしている空間そのものが知らず知らずのうちに愛着を形成し、その文脈(コンテクスト)から離れて生きることが人間にとって難しいからこそ、ナショナリズムは「宿命性」という「愛着」をもつのだとも考えられます。

今回の読書会では、「愛着」の起源についてさまざまな観点から考察することができました。ご参加されたみなさまには深く感謝いたします。

読書会詳細

【目的】
・(ナショナリズムと)民主主義との関係、日本国憲法から「日本国」がとれたらどうなるか?、を知りたい
・愛国心と人種主義の関係がわかりたい
・国民とは何か?、形式を深めたい
・国民の愛着について、テーマが少しでもみつかったらよい
・愛国心と民主主義の違いがわかるようになりたい

【問いと答えと気づき】
Q ナショナリズムのない世界って何?
A 
・みつからなかった
気づき
・すくなくとも、自分でみつけなければならない

Q ナショナリズムが他者への恐怖と憎悪に根ざしている、それが人種主義と相通ずるとはどういうこと? 教育によって洗脳された、教え込まれた→愛着なのか
A
・暗い、妬みとかが根付いている
気づき
・肌の色なのが同一視される? それが原点
・暗いイメージ、ねちっこい

Q ナショナリズム、人種主義の違いは?
A 
・ナショナリズム:自己犠牲を呼び起こす、創られたもの
・人種主義:永遠に変わらないもの
気づき
・自分の命を犠牲にしてまでナショナリズムを守ったのか
・ナショナリズムは「国対国」。人種主義はもっと広い意味、人種の違いの差別をなくす
・ナショナリズムと人種主義は異なる

Q 人種主義とナショナリズム、愛国心は歴史、経済などによって培ってくるもの? 愛国心はどこからくる? 日本という国という恩恵に由来?
A 
気づき
・東と西の価値観の違い
・相手を理解していかなくてはならない
・相対的な考えが持てる時代
・源氏物語は、恋愛物語のなかに政治の話がある
・歴史が愛国心をつくる

Q 死ぬのが怖いという本能を超えたナショナルへの愛着はどのようにしてでてくるのか?
A 想像力、表現の構造(両面がある=宿命的、自分の努力によって身につくものでもある=海外の人でも身につけられる)
気づき
・想像は習慣、訓練によってある程度身につけられる

【対話内容】
・どういう想像力が働けば愛着につながるのか?
→宿命的(自分で選んだものではない=閉ざされた)、宿命を引き受ける(最後の決断をしている=開かれた)
・ナショナリズム:所与のもの(中心と周辺の間にいる人達が強く感じざるを得ない)
・アンダーソンの帝国主義的な側面を書いた
・ナショナリズムの影響からは逃れがたい
・日本人が一番ナショナリズムを感じたのは「明治維新」、他の国の存在を感じて自分の国の価値を感じた(近代国家ができたから)、当事者意識が出てきた
・明治維新以前は「国」を意識していなかった(封建制の狭い範囲だったから)
・多様性の面からもナショナリズムは必要(ナショナリズムがないとグローバル化が発展しない)
・全部が一つになってしまったら発展はない
・想像がわくのは文化的なもの(=食べ物)
・相手を理解するのは、食べ物から
・日本の文化はもとを正すと古代エジプトから来ている
・相手を理解するには小さなことから

【気づきと小さな一歩】
・ナショナリズムについて深く考え直すきっかけができた
・歴史が価値観の共有をしていることで愛着を持つことができる
・本を読み直す

・自分の見方も相対化できた
・『想像の共同体』1ページから読む

・(ナショナリズムについてもやもやしており)それってどういうこと、と思った
・納得行かないことを思い起こされた
・明治維新にも負の側面はある→自分も恩恵には預かった
・いろんなものを引き受けないといけない

・ナショナリズムの特徴:「宿命的」「自分で選び取る」の2方向性を持つ
・(アンダーソンは)メタファーを駆使しながら同じことを語っている
・メタファーを崩すような文学などは出てきているのか?、文学論を読みたい

・ナショナリズムは暗いものではない
・多様性を生み出すにはナショナリズムは必要
・ナショナリズム=明治維新
・明治維新のあたりの本を読みたい

次回の読書会のご案内

■開催日時・場所
・2021年6月10日(木)20:00~21:30 @ZOOM

■テーマ
・社会主義革命が起こった国々(中国、ヴェトナム、カンボジアなど)で、ナショナリズムはどのように採用されたか?

■課題本
・ベネディクト・アンダーソン著、白石隆・白石さや訳『定本 想像の共同体 ナショナリズムの起源と流行』(社会科学の冒険II 4) 書籍工房早山

■詳細・申込み


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