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アカデミック読書会(第26回) 開催レポート - 「科学技術と支配」-

読書会概要

本日(6/24木)の読書会は、「人口調査・地図・博物館は植民地国家が支配領域を想像する仕方をどう形作ったか?」をテーマに、ベネディクト・アンダーソン『想像の共同体』の「X 人口調査・地図・博物館」を読みました。

植民地があった時代には、当時の革新的な技術である地図が支配のために使われました。では、今の国家は何を以て領土や国民を支配しているのかが今回の読書会の対話の中心的な話題になりました。最近の中国の動向を見ていると、広大な領土を支配をするのに、以前の地図に相当するような革新的技術であるデータやテクノロジーを利用しているのではないか、という意見があり、やはり、領土や国民を支配するのに技術の力は不可欠であることに気づきました。

それと同時に、地図は国民に同じ時間・空間を共有している感覚にさせる装置にもなっていたのではないかと考えられます。国民が想像された時代に生まれた、それぞれ関係しない人物を同時に眺めるような小説の表現手法や新聞の普及と、同時性という点で類似性があるように考えられました。地図の普及は国民意識を形成するものであったのかもしれません。

今回は、技術という観点から支配者側からみた国民の想像について考えられる読書会でした。

読書会詳細

【目的】
・地図の役割と意味の理解を深める
・ナショナリズムについて、この本(『想像の共同体』)に書かれていないことも含めて理解したい
・人口調査 / 地図 / 博物館のつながりがよく分かるようになりたい

【問いと答えと気づき】
Q
・ロゴとしての地図はどういうふうに空っぽなのか?
A
・抽象化
・技術の発達
気づき
・抽象化=近代的技術が発達する以前、身体感覚を伴っていた→なくなってしまった
・技術の発達=測量、領土の中に何が配分されているか、に地図の主眼になった
・地図に対する見方が変わった

Q
・地図と人口調査と博物館の関係は?
A
・人口調査:人を人種で分類→納税や兵役等につかった
・革新的技術:植民地を支配していく道具となった
気づき
・技術の革新が植民地を支配してきた
→地図と人口調査と博物館はそういうつながり
・考えて植民地にする、どうしたら支配できるかをよく考えていた

Q
・植民地国家が支配領域を想像するやり方の3つの制度、この3つ(人口調査、地図、博物館)がどうして誕生したのか?
A
・経糸(分類する、境界、カテゴリーに分ける)と緯糸(シリーズ化、世界は複製可能な複数からなる)で想像する
→支配領域を新たに形作った
気づき
・支配領域を想像するために3つの制度(人口調査、地図、博物館)をつかった(経糸と緯糸)
→支配する者たちをこのように理解した
→支配する人たちが理解しやすいように分類した
→実際の住民はそのような意識はなかった

【対話内容】
・技術が地図を作り、植民地支配のきっかけとなった
・歴史が新しくつくられつつある
・アフリカが大国になるかもしれない
・中国が力をつけつつある
・中国の国境の意識は? 以前のものと近い、新しい国境とは違う意識をもっている
→経済、軍事の力のある国が支配する、違う形で植民地政策をしている
・支配を正当化するのが大事
・中国国民は共産党に異を唱えられない、データ・テクノロジーで支配している
・コントロールのための分類
・支配されることが悪いことでもない(例:香港)
・民族ナショナリズムは起こるのか?→新しい変化の兆しはある(アフリカの新しい起業家)
・何もないから変えられる
・スマートフォンに国民の意識をつくる技術が集約されているのかも(例:スマホ決済など)
・日本の土地を中国の資本家が買っている→地図が変わっていくのか? 国家の力関係が見え隠れしている
・国家から情報を隠されている国民は、同時代的な感覚をもつのか?
・中国は先進国家、どうやって渡り合っていくか?
・中国は統合と分裂の繰り返し
→社会主義によって中国は変わった、全土を支配する仕組みを作った
→企業も力をつけすぎると国に没収される
・最新の技術は支配に使われる
・アメリカは宇宙に出ようとしている

【気づきと小さな一歩】
■気づき
・中国は経済・技術革新が進んでいる
・人口調査、地図、博物館がつながっているは面白い
・色分けという単純なことをしている
・宗教的なところが耳に入ってきたので本は大事だということがわかった
・(前回からのテーマで)どうやったら戦争は起きないか?→やり返さないこと
■小さな一歩
・図書館行って1時間本を読む

■気づき
・新しいナショナリズムの形が生まれようとしているのかも知れない
・新しい技術→生活に大きな変化がうまれるから
■小さな一歩
・新しいテクノロジーを見つけて親しんでみる

■気づき
・『想像の共同体』を現在に当てはめる
共通点:支配者が支配される国に対して、技術を使う
相違点:
1. 昔は植民地に対して哲学・思想などを与えた、今はものとか金で支配する
2. イギリスは小さな国、中国は大国、支配にテクノロジーをつかった、世界にも支配力を伸ばす
■小さな一歩
・『想像の共同体』から現代のこれからを予測する、キーワードは「各国の自立」

次回の読書会のご案内

■開催日時・場所
・2021年7月8日(木)20:00~21:30 @ZOOM

■テーマ
・「国民」の歴史はどのように語られたか?

■課題本
・ベネディクト・アンダーソン著、白石隆・白石さや訳『定本 想像の共同体 ナショナリズムの起源と流行』(社会科学の冒険II 4) 書籍工房早山

■詳細・申込み


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