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秘密の宝箱のような映画 ~ ふたりのベロニカ

3人は同じ運命の星だったのか

高校時代、自分と生年月日が同じ生徒が他に2人いたことが卒業名簿を見てわかり(・・1970年代はまだそんな時代でした)、不思議な気分になりました。体型、顔が違うのは当然として、性格や気質そして学業成績もずいぶん違っていたと思います。

星占いなどからすれば、3人は同じ運命の星に生まれていることになりますが、実際には、同じ運命を歩んではいないでしょう。では何が異なるのか?
祖先から受け継いだ先天的遺伝子が違うのか、それとも、後天的な生活環境に違いがあったのでしょうか?

そういうことは、自由に空想する楽しみもあれば、答えなき人生のミステリーとして味わうこともできます。もちろん、忘れてしまって気にもしなくなるのが普通でしょう。

答えなき人生のミステリー

さて、本題です。今から紹介するのは、「答えなき人生のミステリー」として味わいたい映画で、ポーランドのクシシュトフ・キェシロフスキ監督作品
ふたりのベロニカ」( 1991年フランス・ポーランド 合作 )です。公開当時ではなく、2008年ごろにDVDで見たのが最初です。

ポーランドで声楽家志望の女性と、フランスで教師をしている女性との不思議なつながりを描いた作品で、主人公たち二人をイレーヌ・ジャコブという女優が二役で演じており、ごく普通の女性という感じなのに、清新な美しさと表情豊かな演技で印象に残ります。

物語は、理屈を超えた超常現象のような面もありますが、映像と音楽の一体化した一篇の詩のような見事な構成により、「在り得る」と信じさせる強さと感動があります。

この監督は、この作品のあと、「トリコロール三部作:赤の愛、白の愛、青の愛」で多くの映画賞を獲得しますが、1996年に心臓発作を起こし54歳で亡くなります。早すぎた死でした。


すべてが絶妙に融合された奇跡

光の反射を巧みに使ったガラス細工のような輝きの繊細な映像美、最後まで謎のベールで被われているような物語、不思議な魅力の漂う登場人物たちなど、映画自体がまるで巧妙な仕掛けと丹念な演出による魔術のような輝きを放っています。

そんな映画の醸し出す雰囲気を精緻な音のつづれ織りにしたようなズビグニエフ・プレイスネルの音楽も秀逸で印象深く、久しぶりにサントラ輸入盤CDを購入してしまいました( 映画音楽全盛の昭和時代と違って・・)。

キェシロフスキ監督の知性と感性によって、映像、音楽、俳優、脚本すべての要素が絶妙に融合されて奇跡的な化学変化を起こした、・・とでも言うべき、「秘密の宝箱」を私は所有することができたのです(・・blue-ray discでも)。

最後に

別の記事で、今まで知り得た映画作品の第1位は、アンドレイ・タルコフスキーの「鏡」と書いていますが、第2位は、迷うことなく、この「ふたりのベロニカ」です。

映画へのオマージュ
photomontage   created by  Rilusky E    2008  


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~The Universe I Imagine ; ワタシノ想フ宇宙 

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