父の砥石(といし)
うちの包丁は切れない
市販のシャープナーは持っているが、
それをやっても切れない…
古い包丁の処分を考えると、それも億劫で新しい包丁を積極的に買う気にもならず、そのままだ。
切れないな~
と思いながら料理をしている。
◈◈◈
亡き父は、料理はしないのだが、包丁はよく研いでいた。
切れない包丁は力が入ってしまい危ない
それが父の口癖だったのだが、ホントその通りだと今になって思う。私は切れない包丁で、力を入れて切っている。
父が研いでくれた包丁はすごくよく切れた。安い包丁だけど、いつも刃はピカピカだった。
そして切れ味は抜群だった
荒目の砥石で先に研いで、
仕上げになめらかな砥石を使う。
◈◈◈
その砥石を引っ越しのときに捨てたことを
今でも後悔している
砥石だけではなく、父の手作りの木の置き台もあったのだ。砥石サイズにピタリと合うように木を削ったものだ。
その置き台ももちろん捨てましたハイ
その木の置き台に、砥石を乗せて、水をかけながら包丁を研ぐ父の姿は忘れられない。
引っ越しのときは、とにかくモノを捨てなくてはならなくて、思い出に浸る時間もなくて、
どうせ使わない
と自分に言い聞かせて捨てたのだ。
◈◈◈
新しい砥石を買う気になれないのは、その父の砥石を捨ててしまった後悔と、父を思い出すのが辛いからだ。
それに父のように上手に研げないきっと
だけど父もきっと最初から上手に研げたわけではないだろう。子どものころから、ずっとやっていたから、上手だったのだろう。
私も研げるかな…
もう10年にもなる捨てた砥石に後悔してるんじゃ、当分の間は買えそうにないけれど、
父のように包丁を研ぎたいな…
そんな気持ちはずっと持っている。
◈◈◈
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