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恋人の秘境に嫉妬している

私の見たことがないあなた、あなたの見たことがない私。過去には、本人にも分からない事実があったりする。過去は過去、今は今、そう言い聞かせて心を落ち着かせようとするけれど、事実としてしっかりと残っていることは確かだ。

幸せな時間を共有している段階で、居なくなって切なく虚しくもどかしい、なんていう感情が出てくることはない。

しかし私はそんな切なく虚しくもどかしいあなたの未知なる過去に、ほんのすこしだけ嫉妬した。


未来と過去。どちらが残酷かと聞かれたならば、いまの私は過去を選ぶ。

過去は道に過ぎない。過去は誰しもが持っている故郷に近い。その秘境には当事者しか帰れない。他人がどんなに足を踏み入れたくても踏み入れることができない幻の秘境。



自分に嘘を付かない限り、過去という秘境は永遠に追いかけてくる。逃げれているようで永遠に逃げることはできない。


出会いと別れの季節が、またやってきた。

そうやって人生が繰り返されていくのを、未来のわたしは目の当たりにしてしまうのだろうか。

窓の外でちらつく雪と駅前の映像を見て去年の今頃を思い出してはどうしようもない気持ちが胸でじんわり広がっていく。




自分に嘘をついたら終わりという人間に出会ったことがある

わたしは私に嘘をついて日々を生きてしまった

自分は醜い女だ



私の秘境には彼のように淡く切なくもどかしいなんていう恋愛はあったのだろうか。そもそも恋愛に陥ったのかさえ疑問を感じる日々が今も続く。




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